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省エネ・新エネ普及ネット会報 第4号 1999年9月


北海道・苫前町で自然エネルギー促進法制定打ち上げ

自民党や民主党のトップを選ぶ選挙戦が終わり、自自公連立政権という組み合わせによる新しい内閣もまもなく発足するが、こうした動きを受けこの秋は新エネルギーの本格的普及をめぐる論議が国会などを中心に賑やかに展開されそうだ。

地域資源活用して風力発電規模日本一建設中
 その引き金になったのが9月3日に北海道北西部の日本海側に位置する苫前町で開催された、超党派の国会議員による「自然エネルギー促進議員連盟」の設立準備会発足の動き。人口約5000人の過疎化が著しかった苫前町は、5年くらい前から日本海の荒波とともにやってくる平均風速7mの風を利用、いまや日本最大規模の風力発電基地として全国から脚光を浴びている町だ。

 もともと苫前町は、天然の良港を利用して古くからアイヌの人々と和人の交易場として栄えた町といわれ、明治に入ってニシン漁などで潤い、青森・津軽方面からの入植者や移住者がたくましく生活の根を張っていったという。そうした入植者が、絶え間なく吹く風に望郷の念を込めて津軽凧を乱舞させた慣習はいつのまにか町民凧上げ大会→北海道凧上げ大会となり、今や風力発電日本一になりつつある情景に歴史の因果が感じられる。

 その苫前町で現在進められている風力発電規模は、海側のなだらかな丘陵地帯にある町営牧場を活用した広さ約300 ヘクタール計5.2 万kwが運転・計画中だ(下記)。

  • 夕陽ケ丘ウインドファーム〜風来望…600kW ×2基(運転および建設中、デンマーク・ノルディック社製)・1000kW×1基(2000年に運転予定)、事業主体は苫前町(町営)、総事業費=約6.8 億円

  • トーメンパワー苫前…1000kW×20基(1998年11月〜99年12月に建設し、一部99年10月頃運転開始、デンマークボーナス社製)、事業主体はトーメンなど、総事業費=約40億円

  • 苫前ウインビラ発電所…1650kW×14基・1500kW×5基(99年10月〜2000年9月に建設し、2000年12月に運転開始)、事業主体は苫前町・オリックス・カナモト・電源開発(株)の共同出資、総事業費=約60億円
国会議員連盟発足へ・エネルギーの分散自立化運動

 3日の会議への参加者はこの風力発電基地を視察するとともに、国会に「自然エネルギー促進議員連盟」を旗揚げするための準備会発足、さらに関係するNGO側が強く要求している自然エネルギーの電力買取り制度(自然エネルギー導入促進法の制定)などに関して、率直な意見交換が行われた。北海道地域はこの1〜2年、自然エネルギーの普及・導入や環境問題に関してホットな議論が展開されており、そうした雰囲気もあってか札幌からバスで往復6時間もかかるというのに、国会議員はほぼ各党から9人(下記)も出席、通産省や電力会社に上記立地企業、それに議会関係者やNGOなどが一堂に会し、新たな制度創設の是非論をぶつけあっていた。

 北海道でのホットな議論とは、

  1. 北海道電力が手続中の泊原子力発電所の3号機増設問題(NGO側は風力発電などにより十分代替可能で増設は不要との主張)、
  2. 道内の風力発電建設構想が合計約55万kWあるのに対して、北海道電力は技術的、コスト負担の限界から当面の買電枠を6万kWと設定し入札制を実施する、
  3. 生活クラブ生協北海道が音頭を取って実現した自然エネルギー発電所を自ら建設するためのグリーンファンド運動(電気料金に一定額を上乗せして会員から徴収しそれを原資にする)
などだ。これらの議論は、北海道地域のみにとどまらず、電力の買取り義務化を含め今後の自然エネルギー導入促進のための抜本的な制度創設の検討に直結するテーマであり、その意味では極めて先駆的な動きでもある。

○自然エネ促進議員連盟設立準備会に参集した議員…
愛知和男、河野太郎、山本幸三、金田英行(以上自民)、笹山登生(自由)、加藤修一、高野博師(以上公明)、佐藤謙一郎(民主)、福島瑞穂(社民)

○設立準備会で採択された宣言の骨子…
COP3の国連気候変動枠組み条約の京都議定書で決まった国際的公約のCO2 =6%削減に向け、風力、太陽光・熱、木質バイオマスなど環境負荷の極力小さい自然エネルギーを積極的に導入することが喫緊の課題。国会議員有志は、自然エネルギーの積極的な地域展開とその有効性を確認するとともに、「自然エネルギー促進法」の法制化などのために近々議員連盟を設立し、具体的なアクションプランを推進する。

 北海道で展開されているグリーンファンドは使用した電気料金の5%を市民自ら基金として拠出する方式だが、その背景には待機電力などを節減することで毎月5%くらい電気を節約できるという考え方がある。埼玉県川越市の舟橋市長が1%節電運動を始めてから5年経ち、その広がりがこうした形で全国的になってきた。高度経済成長時代以降、いつのまにか「与えられる」ことに慣らされたエネルギーに対して、なにも「資源循環型社会の構築」などと大袈裟に構えなくとも、「足るを知る」という発想から地域は分散・自立型のエネルギー利用社会に向けて確実に歩き始めている気がする。

(F.S)
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