創省蓄エネルギー時報

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CLOU社、「AC+DC一体型・水冷式蓄電システム」で日本市場へ本格参入

愛知県で運転を開始した2MW/8MWhの蓄電所。このプロジェクトを契機に、CLOU Electronicsが日本での存在感を高めている。独自の「AC+DC一体型・水冷式蓄電システム」を軸に、高効率・高安全性・施工性を兼ね備えたソリューションで新たな選択肢を提示する。

「PV EXPO」会場に展示された、AC+DC一体型・水冷式蓄電システム「Aqua-C2.5S mini(基本 2MWh、フル構成時 2.5MWh まで拡張可能。)」

 

CLOU Electronics、2MW/8MWhの蓄電所で布石

 東京ビッグサイトで開催された「スマートエネルギーWEEK春2026(PV EXPO)」に、CLOU Electronics/科陸電子(以下、CLOU)が初出展した。同社は、2025年に日本法人「科陸エネルギー日本株式会社」を設立し、供給・サポート体制の強化を進めている。AC+DC一体型・水冷式蓄電システム「Aquaシリーズ」を軸に、日本市場での活動を本格化していく考えだ。

愛知の蓄電所に設置された「Aqua-C2.5S mini(2MWh)」

 中国・深圳を拠点とするCLOUは、1996年の創業以来、スマートメーターやグリッドオートメーション、蓄電システム(BESS)などを手がけ、同国の電力インフラ構築に携わってきた。フォーチュン・グローバル500企業であるMideaグループに属し、安定した財務基盤と開発力を背景に、BESSとPCSの双方でBNEF Tier1を取得している。

 2025年には、愛知県において、日本で初めて同社製品を採用した2MW/8MWhの蓄電所が商用運転を開始した。同社は、これを「日本市場での優位性を確認するためのプロジェクト」と位置づけており、「運用実績によって真価が示される」と自信をみせる。

水冷式「Aquaシリーズ」に見るCLOU製蓄電池の優位性

 CLOUの蓄電システム「Aquaシリーズ」には、Aqua-C3(6.25MWh)、Aqua-C2.5(5MWh)、Aqua-C2.5S mini(2MWh/2.5MWh)、Aqua-E233(233kWh)など、用途や設置条件に応じたラインアップがそろう。いずれも水冷式を採用し、高精度な温度制御により出力電力の安定化と長寿命化を実現している。

AC+DC一体型・水冷式蓄電システム「Aquaシリーズ」のラインナップ

 同シリーズの中でも、特に今回アピールされた製品が、愛知県の蓄電所でも導入された「Aqua-C2.5S mini(2MWh)」だ。同製品は、蓄電池・PCS・BMSなどの主要機器を10フィートコンテナに格納した「AC+DC一体型」のコンパクト設計となっており、重量は日本の道路規制を考慮して20トン以内に抑えられている。また、複数台を背中合わせや横並びに設置することが可能であり、限られた敷地でも柔軟にレイアウトすることができる。CLOUはこれを日本市場向けの主力製品と位置づける。

セルレベルのアクティブバランスで蓄電性能アップ

 CLOUの蓄電性能を象徴する技術に、セルレベルのアクティブバランシング(CLOU Cell-Level DC-DC Energy Transfer Technology)がある。これは、電圧の高いセルから低いセルへエネルギーを直接移動させることで、電力を無駄にすることなく、セル間の電圧差を解消する仕組みだ。

 パッシブバランシングのように電圧均等化のために一部セルの容量を捨てる必要がなく、電力損失の極めて少ない高効率な運用が可能となる。ストリングレベルのアクティブバランシングと組み合わせることで、全ライフサイクルにおける利用可能容量を4%程度向上させることができるという。

Aquaシリーズにおけるアクティプバランシングのイメージ

 さらに、知能的生体模倣水冷設計という独自の冷却技術により、電池パック内のセル温度差を1.5℃以内に抑えている。従来型の液冷プレートでは温度差が3℃程度生じてしまうが、CLOUの液冷プレート(ネットワーク型液冷プレート)は冷媒の流路を最適化することで、セル全体を均一に冷却する。温度差の抑制はセル性能のばらつきを抑えることに直結し、利用可能容量の向上とシステム寿命の長期化に貢献する。

異常検知から消火・耐火まで、安全性を支える4層防御

 CLOUの蓄電システムには、安全性を確保するための仕組みが多層的に組み込まれている。まず、BMSにはAIによる早期問題発見機能が備わっており、セルの異常兆候を検知すると即座にアラートを発する。微細な温度上昇や電圧の不均衡が生じた段階で異常を捉えることで、重大なトラブルに発展する前に対処できる。

 異常が進行し、可燃性ガスが発生する恐れがある場合には、「アクティブベント防爆システム」が作動する。これは、コンテナ内部に滞留しやすいガスを強制的に排出する仕組みで、受動的な排気装置に比べて爆発・燃焼リスクを大幅に低減する。

 さらに、火災が発生した場合には、内部を複数の区画に分けた「分倉消火システム」が自動的に作動。区画ごとに独立した消火機構を持つため、火災が一部で発生しても他の区画へ延焼しにくい構造となっている。

 筐体そのものが3時間以上の耐火性能を備えている点も特徴的だ。高温環境下でも構造体が崩壊しにくく、内部のセルやモジュールを保護することができる。こうした多層的な防御体系により、蓄電システム全体の安全性を、連続的かつ能動的に確保しているのだ。

M8.8のチリ巨大地震を教訓にした、国際基準の耐震性能

 CLOUが日本市場向けシステムの開発で重視している要素のひとつが、地震への備えである。Aquaシリーズには、国際的な耐震基準であるIEEE 693の高耐震要求を満たす設計が採用されており、強い揺れに対しても安定性を維持し、蓄電システムとしての機能を損なわないことが確認されている。

 内部のラック配置や固定方法にも耐震性が考慮されており、揺れが生じた際にもセルやモジュールが偏荷重を受けにくい構造となっている。これにより、地震発生時でも蓄電システム全体の安定性が保たれ、充放電の中断リスクを最小限に抑えることができる。

 この耐震設計の背景には、2010年にチリで発生したマグニチュード8.8の大地震がある。当時、多くの蓄電設備が損傷し、蓄電システムの耐震性が国際的な課題として浮き彫りになった。CLOUは「2010年のチリ地震を教訓に、耐震性能を重視して設計している」として、蓄電設備が災害時の電力供給を支える“生命線”であるとの認識を示している。

愛知案件で分かった、一体型ならではの優れた施工性

 日本における導入事例としては、冒頭紹介した2MW/8MWhの蓄電所(愛知県)がある。この蓄電所には、2MWhの「Aqua C2.5S mini」が4台設置され、需給調整市場での調整力取引、卸電力市場でのアービトラージなどに運用されている。

愛知県で稼働する2MW/8MWh蓄電所のシステム構成

 この案件では、CLOU製品の特徴である一体型設計が大きな役割を果たした。「Aqua C2.5S mini」は、工場内で通信テスト、充放電テスト、全システムテストを完了した状態で出荷されるため、現場での作業は最小限に抑えられる。設備搬入からわずか4日間で系統連系を完了。「現場での作業はほぼ接続のみで済み、直流配線がコンテナ外に出ないため、作業も安全に行えた」という。

 同製品の採用に際しては、アクティブバランシングによる利用可能容量の増大と、それに付随して運用・保守コストが低減することへの期待も大きかった。加えて、独自の水冷技術による優れた運用効率と、実績に裏打ちされた高い安全性が総合的に評価された。

グローバル実績を背景に、日本市場への最適化を図る

 CLOUは、北米、南米、中国など世界各地で大規模な蓄電プロジェクトを展開している。チリのアタカマ砂漠では、苛酷な自然環境のもと「故障なしで900日以上連続稼働」という記録を打ち立て、同国エネルギー大臣より高い評価を受けた。米国でもミシシッピ州の744MWh案件など多数の大規模蓄電所を手掛けており、2023年にはテキサス州のTX10プロジェクト(9サイト)がERCOT市場収入ランキング上位30位に入っている。

CLOU Electronicsの海外導入事例

 CLOU Electronics蓄電海外事業部アジアパシフィック地域ゼネラルマネージャーの高岩輝氏は、日本での取り組みについて次のように述べている。

CLOU Electronics蓄電海外事業部アジアパシフィック地域ゼネラルマネージャーの高岩輝氏

 「日本市場には、道路事情や設置環境、安全基準など、非常に高い要求があることを理解しています。私たちは、世界各地の複雑な系統に対応してきた30年の知見と、日本に最適化したカスタマイズにより、お客様のニーズに応えてまいります。サポート体制もいっそう強化し、日本のお客様に長期的な安心をお届けいたします。昨年、日本で初めて蓄電所を稼働させましたが、これは私たちにとって大きな一歩でした。現在も30~50件のプロジェクトが進行しており、日本のエネルギーインフラに貢献できる機会は着実に広がっています。安全性と信頼性を最優先に、日本の皆さまとともに歩んでいきたいと考えています」

 蓄電池が単なる設備から長期的な電力資産へと位置づけを変えつつあるなか、CLOUのソリューションは、日本の事業者に新たな評価軸を提示している。高効率化や安全性に加え、施工性や運用価値までを包含した同社のアプローチは、蓄電池市場における競争の質を確実に引き上げることになるだろう。

■問い合わせ

科陸エネルギー日本株式会社

東京都新宿区馬場下町5-1 早稲田駅前ビル602
Tel:080-2783-5038
Mail:zhangyy77@midea.com

取材・文/廣町公則