[過去4〜19 回までの今月のキーワード]
熱中症予防と「2027年問題」
2026/06/04(Thu) 文:(宗)
温暖化の進展を肌身で感じるようになって久しい。気象庁の長期予報によると、6〜8月の平均気温は60〜70%の確率で平年より高い見通しという。
昭和40年代後半、まだ小学生の頃。真夏でも一日中家の外で遊んでいた記憶がある。当時はクーラーもなく、窓を全開して蚊取り線香を焚き、扇風機だけで過ごせた。夕食時には蛍光灯めがけてカブトムシが飛び込んで来たこともある。しかし今ではこんな暮らしはもはや出来ない。夏の暑さへの警戒を促すように「夏日」「真夏日」「猛暑日」「酷暑日」と気象庁の新用語もどんどん追加されてきた。
この厳しい暑さを乗り越えるには、出来るだけ冷房の中で過ごすことだ。特にマンションのようなコンクリート壁に覆われている構造では、コンクリートの蓄熱効果にって一日中熱にさらされるケースが多い。夏場に冷房を付けないのは、もはや自殺行為とも言えよう。エアコンは現在、生活にとっての必需品であり、命を守る“生命維持装置”ともなっている。
だがその生命維持装置が容易に入手できない事態が迫っている。一つは、ナフサショックにより設置工事に必要な樹脂が入手しにくい事態となっていること。もう一つは、来年導入される省エネ法の新トップランナー基準による「2027年問題」だ。従来よりも大幅に省エネ基準が引き上げられることで、これまで広く普及していたリーズナブルなエアコンは販売できなくなる。このため、エアコン価格が来年大きく引き上げられると見られている。そうなると、低所得層は容易にエアコンの買い換えが難しくなる可能性がある。
省エネを進めることは重要な政策ではある。しかし、生命維持装置でもあるエアコンをリーズナブルに入手できなくなるまで規制を強化する必要があるのだろうか。エアコンは電力で動くため使用時は直接CO2を発生しない。とすれば、CO2対策としては再エネの最大限活用など電源の脱炭素化を進めていくことの方がはるかに重要ではなかろうか。
日本の負の遺産・水俣病解決に向けて
2026/05/13(Wed) 文:(水)
@ 1956 年から70 年 A約3.6 万人(3001 人) B 202 人・82 歳 C約47 万人、約1000人 D 1.44 万〜 1.92 万円 E 153 ヵ国(25 年11 月時点)
この5 月1 日前後、マスメディアに例年と同様の「公害の原点・水俣病」に関する報道がこぞって出ていたが、上はその記事での主な数字だ。@は、水俣病が国による公式確認から70 年の歳月が流れたこと。Aは、水俣病対策特別措置法に基づく被害認定申請者と認定された人、Bは、認定の存命者と平均年齢、Cは、熊本県の当時の潮谷義子知事(2004 年) が環境省に提案した住民健康調査の対象数(未実施)と06 年に環境省が実施した調査数、Dは、法律に基づく認定患者に支給される療養手当額(26 年4 月現在)。そして、Eは17 年に発効した「水銀に関する水俣条約」でこれまで153 ヵ国が批准、関連対策の大きな拠り所となっている。
一口に“70 年” とはいうものの、被害者( 潜在者も含め) にとってはまさに艱難辛苦そのものの人生であり、塗炭の苦しみであったことは容易に想像できる。今なおそれが続いていることに我が国の政治・行政の無能さを感じざるを得ない。もちろんこの間の関係者の尽力を否定するものではないが、ともかく抜本的な“ 解決” に向かっていないという現実は否定しようがない。しかも、環境省はこの水俣病被害を公害・環境対策の反面教師として多用してきた。
それでは水俣病問題の「解決」とは何か。第一に、水俣病に関連する被害等の全容と現在の実態を客観的に集約することであり、福祉政策的な面も含めた総合的なプログラムと行程表を策定することであろう。第二に、そのための財政措置を特別法として立法化、被害発生当時に産業政策の当局者として瑕疵を犯した通商産業省も含めて、環境省とともに財源の手当てをすべきではないか。現在、経産省が推進中の約3 兆円のGI 基金に比べれば大した額ではないだろう。ただ、こうした対応が具体化したとしても、抜本的解決とはならず、あるべき姿の“ 方向性” を示すことでしかない。
高市首相は先月29 日開かれた昭和100 年記念式典の挨拶で、「若者たちが日本に生まれたことに誇りを感じて“ 未来は明るい” と自信を持って言える国を創り上げていく」と語ったようだが、その手始めをこの公害の原点への新たな対策で実践して欲しいものである。
新たな省エネ・資源循環こそ強靭な経済安全保障
2026/04/15(Wed) 文:(水)
3月下旬、かつて我が国のエネルギー行政に関わったことのある某氏へ、旧知の紙製品(トイレットペーパーなど)製造会社の社長から突然電話がかかってきた。電話の主旨は「高市首相は石油備蓄を放出する方針のようだが、本当にそれで大丈夫なのか。石油価格も大きく上がるし、備蓄分がなくなったらどうするつもりなのか」という内容だった。紙製品製造工程では、加工段階で付着している不純物を飛ばすために大量の石油を使うので、石油類の確保に支障が出れば即生産が止まってしまい最悪ケースでは廃業に追い込まれる。そうした事態を危惧した社長が懸命に情報収集をしていたと見られ、中小企業の一紙屋さんまでも今回のホルムズ海峡封鎖による影響を強く懸念していたわけだ。
これに先立つ20日(日本時間)、訪米した高市首相はトランプ大統領と対面での初の首脳会談に臨んだ。冒頭で派手なハグを見せながら、イランが封鎖しているホルムズ海峡における船舶航行の自由確保やエネルギー分野への対米投資約11.6兆円などに合意した。しかし、トランプ氏によるイラン攻撃の正当性を持ち上げる言動が目立ち、「世界中に平和と繁栄をもたらすことができるのはあなただけだ」というお世辞(ゴマすり?)まで発したという。
この時の両氏の親しげなハグも巷で話題を呼んだ。いわく1億の日本人を背負って対面するのだから軽率ではないか、いやあれは欧米での儀礼だから仕方がない、などなどであった。そのハグについて外交官の経験を持つ人に聞いてみた。答えは、欧米での対面首脳外交では一般的だが、日本人としての文化・慣習から見ると配慮が足りなかったのではないかとの指摘だった。
ところで、肝心の我が国における原油や発電所用燃料が大半のLNGの備蓄および供給確保の見通しである。かつて1973年(昭和48年)に勃発した中東戦争では日本のあちこちのスーパーでトイレットペーパーがなくなり長蛇の列をなした。今回のホルムズ海峡封鎖について、高市首相は十分な原油備蓄体制があることを強調しているが、長期的かつ構造的な省エネ・省電力、資源の再利用など強靭な経済安全保障への抜本的な政策転換は示されていない。遅きに失した事態にならないか、強い懸念を覚える。
省エネと、「もったいない」精神はどこへ行った!
2026/04/08(Wed) 文:(M)
都内のあるビルでエレベーターに乗り込むと、閉じた扉に動画が映し出された。振り向く天井にプロジェクターが設置されていた。動画の内容はCM。目的階に着くまで10秒未満なので、途中で終わった。何の宣伝だったのか分からなかった。
通勤で使う駅構内には柱にディスプレーが取り付けられ、CMが延々と流れている。ほとんど、立ち止まって見る乗降客はいない。宣伝効果はあるのだろうか。紙媒体を生業にする者の身びいきだが、新聞や雑誌の広告の方が見てもらえるのではないかと思う。
それに環境面からも疑問だ。他の機器と比較すると、少量とはいえプロジェクターやディスプレーも電力を消費している。イラン情勢が緊迫化して原油価格が急騰している。かつての日本なら節電によってエネルギー消費を減らそうと努力した。今、人々の省エネ意識は薄れ、政府は補助金で負担を和らげる。補助金と言うと聞こえは良いが、元は税金だ。エネルギーの海外依存を下げるために、再生可能エネルギーの普及を急ぐという意見も聞こえてこない。省エネや再エネなら気候変動対策にもなるのに。
他にも日本社会がどっちを向いているのか、分からないことがある。東京都内や大阪市内ではタワーマンション(タワマン)が建設ラッシュだ。なかには入居せずに投資目的で購入されている物件があり、住宅価格を押し上げている。
一方で空き家が増え続けている。国土交通省によれば、全国に900万戸の空き家があると推定される。空き家問題が解決されないまま、タワマンによって住宅の供給量が増えている。住宅にも多くの資源が使われている。「もったいない」精神も希薄となり、サーキュラーエコノミーと言いながら住宅の大量生産・大量放置が続く。
旧約聖書『創世記』に、人類が天に届く塔を建設する「バベルの塔」の物語がある。人類は神の怒りに触れ、それぞれが違う言語を与えられる。人間の傲慢を戒める故事だ。
日本もエネルギーや資源を野放図に使っていると神の怒りを買うのではないか。きっと将来のツケが大きくなる。そういえば、ニューヨークには大統領の名を冠した高層ビルがある。神は、このタワーの主にどんな罰を与えるのだろうか。
もう一つの「地球存立危機事態」
2026/03/18(Wed) 文:(水)
ロシアによるウクライナ侵略戦争に加えて米国・イスラエルはイランへの攻撃を拡大、世界のエネルギー大拠点である中東地域が戦争状態となって、先の見通しがつかない状況にある。トランプ米政権が一方的に踏み切ったイラン攻撃は国際法違反との指摘がある中、高市首相は国会の答弁で「暫く時間をいただかないと法的な評価ができるものではない」と述べ、中東のホルムズ海峡が封鎖された対応について、我が国の「存立危機事態」にあたるかどうかの判断を留保した。高市首相は19日に訪米してトランプ大統領との会談が予定されており、どんな宿題を抱えることになるのかが注目される。
国際社会が戦時状態にある現在、もう一つの「存立危機事態」への対応がすっかり棚上げとなりそうな雲行きだ。周知のように、国連が主導する気候変動対策では195ヵ国が締結したパリ協定によって地球の気温上昇を1.5〜2℃に抑えるべく、その原因となるCO2等の削減を規定。この10年の各国による削減努力如何がその成否を左右し、場合によっては“地球沸騰”という時代に突入する可能性を指摘している。
各種の報道等によると、ロシアによるウクライナ侵攻戦争で排出が推定されるCO2換算排出量は最近2年間で1億5000万t、自動車が排出するCO2の9000万台にも匹敵する量になるという。これに今回の米・イスラエルによるイラン攻撃と中東紛争が排出するCO2を加えると、各国が合意したパリ協定の要削減量を帳消しにするかもしれない。また、この2〜3年にわたって頻発している山林火災などを加えれば、CO2排出増大は不可逆的な地球温暖化に近づいている可能性大と言えそうだ。
こうした戦争とCO2排出の因果関係は未だに公的な分析がなく、可視化もされていないどころか事態を引き起こした責任のあり方も全く定められていない。それどころか世界第二のCO2排出国の米国はパリ協定からの脱退を決めている。つまり端的に言うならば、国を挙げて脱炭素社会に向けた懸命の努力を重ねている行動が水泡に帰していることになる。これらの主導者はいつの日か地球社会を滅亡させた張本人として墓銘を刻まれることになるのだろうか。
北京紀行点描
2025/07/18(Fri) 文:(水)
4月中旬、トランプ米大統領の相互関税問題で張り合う中国経済社会の実情とCO 2排出大国としての再生可能エネルギーに対する取組状況などを見たいと考え、1週間ほど北京に滞在した。
実は中国訪問は三度目で、前回は15年以上も前になるが北京の街中には中高層ビルがあまりなく、ちょっとした通りに入ると沿道には屋台の店や古ぼけた椅子に座っての散髪、縁台将棋などの風景が広がり、生活の匂いがそこはかとなく伝わってきて、それほど異国という雰囲気はしなかった。
ところが、今や北京の街は一変していた。ここ10数年の急速な経済成長を物語るように、官庁街を筆頭に巨大ビル群の連続であり、幹線道路や高速道路も整然と整備され、かつては目立った道路脇の砂埃が立っていた空き地も、その大半がみどり豊かな商店街や業務・住宅地などに整
備されていた。何よりも驚いたのは、北京から高速道路で50分ほどかかる天津市までの間、高さ50mから60mはある中高層の鉛筆ビルが30ヵ所以上あって、その大半が住居用マンションといわれ、中国南部の農村地域からの出稼ぎ者向けのようだ。そうした建坪空間の少ないノッポビルは大地震が来ればひとたまりもないが、この200〜300年間地震発生がなかったためか、北京市民はほとんど気にしていないという。
これだけの中高層マンションの乱立やスマホ社会( 生活の大半の手段にスマホを活用) の常態化となれば、電力の消費量はうなぎのぼりとなるはずで、その電源確保も容易ではないはずだ。
しかし、北京の街中をはじめ天津までの移動中においても、太陽光発電パネルの存在は全く見かけなかったし、他の再エネが立地している光景も見当たらなかった。ようやく天津市の港に近くなって、風力発電の風車が5〜 6基程度見えてきた程度だ。
その理由を大手新聞社北京支局の関係者に尋ねたが、北京周辺は緯度が高く太陽光発電の効率が悪いからではないかとの答えだった。それにしても、中国は今や太陽光と風力発電機器市場のシェア7割以上を占める再エネ輸出大国であり、しかも低廉な価格での世界市場席巻はトランプ相互関税の標的にもなっている。世界第一のCO2排出大国ならば、あらゆる手段を尽くすという意味で電力の急増地域にこそ再エネ開発を急ぐべきだろう。
熟練工が手を止める時、日本も止まる
2025/06/20(Fri) 文:(宗)
最近、テレビでヤマサキという会社のCMを見かけるようになった。高炉の耐火レンガを積み上げる築炉工が「炉が無いと鉄は生まれない。だから僕はその手を止めない」と言う内容で、鉄鋼業を支える職人を描いている。
製鉄の中心的存在でもある高炉は、20年程度で「巻替え」という大規模改修をしなければならない。高炉を輪切りにして分解し、内部の劣化した耐火レンガを剥がし、新しいレンガを一つ一つ積み上げていくという、地道な作業だ。多くの築炉工を動員して作業を進めていくのだが、レンガを緻密に積み上げる技能は一朝一夕で得られるものではない。それにも拘わらず一度巻替えが終わると、同じ高炉での次の仕事は20年も先。そのため各製鉄所で築炉工を抱えておくことは出来ない。従って築炉工は各製鉄所を回って順次仕事をこなすことになるが、それでも仕事の山谷が多く、熟練した築炉工の維持や育成は鉄鋼業にとって重要な課題だ。
その築炉工を将来的に維持できるかどうかは20年前から大きな問題だった。技術の習得には10年という時間と多くの工事経験を必要とするが、国内の高炉の数が減っていくなかで、複数の会社が巻替えで競合を続けると築炉工の維持・育成が出来なくなる。そのため以前は3社程度
が行っていた巻替え作業は、最終的に日鉄系に集約された経緯がある。しかし、築炉工の高齢化と典型的な「3K」の仕事で若い人が入ってこないことは長年の宿題となっていた。築炉工を確保することが出来なければ、高炉を動かし続けることはできない。「いつまで高炉操業を続けられるだろうか」という悲痛な声も聞こえてくる。
そういうこともあって、ヤマサキのCMを見てまずは築炉工をまだ維持できていることを確認できて安心した。このヤマサキという会社は、築炉工を維持していくため、高等学校卒業者を対象とした1年間の職業能力開発校を自社で運営している。これまで同社が築炉工を維持できたのは、こうした企業努力の賜物といえるだろう。
熟練工は製鉄だけではない。最新のガスタービンや原子力機器の製造や施工など、発電設備建設にも欠かせない。彼らが「その手を止めない」と言ってくれる間は良いが、担い手がいなくなった瞬間、日本の産業全体も止まるのだろうか。
トランプ外交と環境政策は「脱・マニュアル」で
2025/05/16(Fri) 文:(M)
「芽吹き始めた草木に、春の暖かい日が差し込む…」。出席した卒業式で聞いたあいさつの冒頭だ。
この日、東京は真冬に逆戻りした寒さで、雪が降っていた。祝辞で語られた情景と、積雪のある校庭の光景にギャップがありすぎて、心の中で失笑した。同時にあきれた。どうしても原稿をそのまま読まないといけないのか。大人なら雪の日の門出に触れる臨機応変さがあってほしかった。
融通のきかない様子を見て、作家の東野圭吾さんの「マニュアル警察」という作品を思い出した。推理小説家の著者にしては珍しい短編コメディーで、妻を殺した男が自首しようと警察署に出頭する場面から始まる。女性警察官に署で取り扱い中の事件かと聞かれ、男が「殺してきたばかり」と告げると、「事件の通報手続きをとって下さい」と窓口を案内される。
行った先の担当者から男は「第一発見者」扱いにされ、捜査員からは「奥さんが亡くなられました」「犯人への心当たりはないですか」と手順通りに声をかけられ、なかなか自首できない。
事件発覚前の自首がマニュアルにないためだ。
トランプ米大統領には、通常の外交マニュアルは通用しないだろう。常識外の高率の関税を課すと言い出し、発動した途端に停止する。赤沢亮正経済再生担当相が渡米すると、トランプ氏自らが交渉相手に名乗り出るなど展開が読めない。石破茂首相は「外交上のやりとりであり、言及を差し控える」とマニュアル通りに答弁したが、日本のリーダーとして国益を守る判断を下せるのだろうか。手腕が試される。
環境政策も既存のマニュアルは通用しない。気候変動が進行し、自然災害が多発しているからだ。海外では規制が強化されている。日本が例年通りに対策予算を執行して「現状維持」にできたと思っても、実際には「後退」している可能性もある。マニュアルがあると便利な面もあるが、頼りすぎると思考停止に陥り、必要な決断を遅らせることがある。卒業式のあいさつや小説のように笑い話で終わるなら良いが、外交も環境政策も手遅れになるとダメージが大きい。マニュアルに依存しすぎない臨機応変な判断を政治家や政府に期待したい。
東京ビッグサイト風景と我が国再エネ技術力
2025/02/28(Fri) 文:(水)
2月19 〜2 日に東京ビッグサイトで開催された「スマートエネルギーWeek( 春)2025」はさながら中国のどこかの会場ではないか、と錯覚するほど中国カラーに溢れた展示と取引商談が目についた。出展社数が約1600 社の会場は太陽光発電展(PVEXPO)、ゼロエミ火力発電展、
風力発電展、水素・燃料電池展などのゾーンに分かれていたが、圧倒的に中国系企業等のコマが多く、入場者もその団体・グループが多く見られ、中国語が盛んに飛び交っていた。それだけではなく、会場のスタッフにも若い中国女性が目立ち、戸惑いながら業務をこなしていた。
我が国はこの18日、脱炭素化社会づくりと再生可能エネルギーを主力電源とする「GX2040ビジョン」など3 国家戦略を閣議決定した。産業構造の改革とエネルギー自給率向上に直結する再エネ産業の自立化は待ったなしの課題としたものだが、主力の太陽光発電ビジネスでは機器導入の7 〜 8 割が中国製と言われており、国内関連企業は霞んでいる。
この展示会で目当てにしていた風力ゾーンの五洋建設コマに行ってみた。先月、同社は政府が導入拡大に最も力を入れている洋上風力の建設に不可欠な「大型基礎施工船」(HLV) の建造契約をシンガポールのSeatriumGroup等と契約したと発表。28年5月に完成させ、同年秋から
の稼働を予定する。芙蓉総合リースとの共同保有で、建造費は約1200 億円、電力ケーブルの敷設に必要な「大型作業船」(CLV) 建造費約310 億円を加えると、約1500 億円超の先行投資となる。
同社はZEB建設でも知られるが、洋上風力分野にも積極的でSEP船(風車据え付け船)を複数所有する。今回のHLV等建造は28 年以降本格化すると見られる浮体式の導入を見込み、15MW〜20MW級風車据え付けに必要なモノパイルが施工できる5000t 吊り全旋回クレーンを搭載するなど、自航式では世界最大級になるという。ただ、残念だったのはこの商談過程において、日本の造船メーカーは受注できない理由をさんざん示したが、契約したこのシンガポールの造船会社からは一発で「我々は十分にできます」との答えが返ってきたことだと、関係者は自嘲気味
に語っていた。
米国トランプ政権の4年、試される気候危機への対応
2025/02/21(Fri) 文:(水)
国立環境研究所と宇宙航空研究開発機構( JAXA ) が打ち上げている人工衛星「いぶき」( GOSAT ) の観測によると、地上から上空までの地球大気全体のCO2 平均濃度は2024 年に421ppm となり、この10 年超の観測値としては最高を記録した。2010 年は388ppm だったが、最近1 年間の増加量が平均3.5ppm になっているという。
また、欧州連合( EU ) の「コペルニクス気候変動サービス」は今年1 月の世界平均気温が13.23℃となり、1 月としては最高を記録したと発表。産業革命前(1850 〜 1900 年) の1 月の平均よりも1.75℃高かったとしており(2.1 付毎日新聞)、日本の「いぶき」の観測結果を裏付けた。
地球危機の兆候はまだある。米ロサンゼルスであった最近の大規模山火事(1 万6000 棟以上の建物消失) は、地球温暖化による高温・乾燥化・少雨などの気象条件が重なって約35% 増の発生頻度になっていたという調査結果を国際研究チームのWWAが発表している(前出)。
再度の登板となったトランプ米大統領は選挙戦での公約通り、国連気候変動枠組み条約を推進する「パリ協定」からの脱退を国連事務局に通告、1年後には世界第2 のCO2 等排出国が削減対策を放棄することになる。またシェールガスの増産、アラスカのノーススロープ石油・天然ガス開発など化石燃料使用への回帰を鮮明にしており、国際的な温暖化対策の推進に急ブレーキがかかるのは間違いない。日本政府関係者には、米国はすでに州レベルや市場取引で脱炭素化ビジネスが浸透しており時計の針を元には戻せないとの楽観論もあるが、果たしてどうだろうか。
第一に危惧されるのは昨年12 月のCOP 29 で合意された2030 年までに気候変動対策資金年間3000 億ドルという合意の行方だ。すでに、トランプ政権は国連活動のための運営費用やWHOなどへの拠出金を減額・停止する方針を示しており、一連の活動縮小につながりかねない。気候変動対策の影響では最大の排出国・中国も米国に追随する可能性( 逆の見方もあり) とともに、国際的な対策効果の無力感( 野心の減退) に陥る可能性が大きい。「地球沸騰時代」と指摘されるいま、反温暖化対策に掉さすトランプ政権はこれから4年続く。されど4年しかし4年という時間に国際社会はどう立ち向かうのか、かつて環境立国を標榜した我が国の主体性も問われている。
「令和の日本列島改造」への期待と危惧
2025/01/24(Fri) 文:(水)
昨年10月の政権担当以来、「地方創生」を看板政策としていた石破茂首相が年頭の記者会見で、「令和の日本列島改造」を打ち出した。いわく、「地方創生を通じて東京の一極集中を打破する」「政府機関の地方移転によって職員による都市と地方での2拠点生活する制度の創設」など具体的な政策展開の中身にも言及、これを成就させないと日本の将来はないという危機感まで滲ませた。
かつて昭和40〜50年代にかけて、日本は全国に新幹線網の背骨をつくり地方の隅々まで高速道路を走らせて地域の過疎を新たな交通網で結び、石油コンビナート立地のための沿岸埋め立てなど、当時の田中角栄首相による日本列島改造論に沸いた。そうした列島改造は多くの便利さと所得拡大をもたらしたが、三次にわたる石油ショックよって日本経済は挫折した。
その後は大平正芳内閣による「田園都市国家構想」や竹下昇内閣による「ふるさと創生」、そして岸田文雄政権による「デジタル田園都市国家構想」と続いたが、過疎化解消の成果は上がっていない。石破内閣では2025年度予算案で地方創生交付金を200億円計上して改めて対策の重要性を示しているが、地方創生への繋がりは今のところ不透明だ。
「地方創生」という政策課題は人口の減少・高齢化が急速に進む中、つまるところ数十年続いた東京圏への一極集中を排し、地方の人材も含めて地域に眠っている資源の再発掘と活用を図る対策を実施することだろう。そのための方策として、例えば前述の公的機関や大学・高等専門学校等の地方移転、民間企業の東京本社拠点化の制限措置など、政治がすぐにでもやれることは多い。また、地方の過疎化進行と一次産業の衰退を食い止める方策として、大学生等を対象とした1年間の体験実習半義務化や定住生活の2拠点化支援措置などが浮かぶ。
ただ、かつての列島改造時代と大きく異なるのは、今や気候変動対策の実施が不可欠な要件となっていることである。来るべき首都直下型地震にも備える必要がある。どんな政策が正解か、石破政権は「地方創生」に向けた戦略的計画アセスメントを実施して欲しいものだ。
もう一つの2050 年、ゼロ目標の痛み
2024/12/18(Wed) 文:(水)
日々の暮らしで利用する食品トレーや身の回りにある合成樹脂商品から高度な半導体製造、太陽光発電パネルなどの再生可能エネルギー機器まで使われているプラスチック。今や現代の社会経済活動に不可欠な存在だが、一方で廃プラ処理・処分のルーズさによる海洋流出、微細状態になったマイクロプラによる海洋汚染などが深刻化、こうした廃プラ類が2050年頃には海にいる魚の量を上回るほどに増大する可能性が国連機関などから報告されている。
そうした世界の環境汚染を食い止めるための「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある条約交渉会議」の5回目(INC5)会合が韓国・釜山で開催(11月25〜12月1日)されたが、会期を延長したにも拘わらず予定した先の国際条約案を時間切れで採択できずに散会、再度INC6会合を招集して協議することとなった。国連の事務局は当初2024年中の条約採択を予定して22年以来交渉を重ねてきたが、プラ製品(設計)規制や供給プロセスのあり方、対策のための途上国支援などを巡ってまとめ案に合意できず、次回への持ち越しとなった。
今回会合には177ヵ国の国連加盟国・国際機関・NGOなどが参加(予定含む)、日本からは関係省庁の幹部が出席したが、閉会数時間前に韓国大統領府が「非常戒厳令」を宣布、厳戒態勢がとられつつあったことから帰国できるか心配された。間一髪、会議場がソウルではなく釜山であったため辛うじて難を免れたという。
今回の条約交渉で難航したのは、特にEUが強く主張した生産・製品・供給・使用プロセスに関する直接的な規制導入措置とこれに反対する産油国や多くの途上国が求めた漸進的な対策の実施要求だったという。日本もプラ製品等への直接的な規制は各国にある石油化学エチレンセンターなどの縮小・撤退を招き、失業者増や地域経済の崩壊に連動するのでまずこうした事態への対応を優先すべきとして、EU方針には同意しなかったようだ。これだけ便利かつ豊かになった消費文化の先の2050年までに、ゼロカーボンの実現と海洋プラごみの追加的汚染ゼロという二つの目標は我々に大きな痛みを課すものだが、果たして克服できるだろうか。
目標が「上に凸」って何のこと?もっと分かりやすい言葉で
2024/12/11(Wed) 文:(M)
「上に凸(トツ)」「下に凸」。これは何のことか。25 日、環境省と経済産業省が開いた有識者による合同会議でのキーワードだ。
この会議で事務局が2035 年度の温室効果ガス削減目標として、13 年度比60%削減を軸とする案を示した。恥ずかしながら「上に凸」「下に凸」を知らなかったので調べると、数学の関数の授業で使う用語のようだ。
現在の排出量削減ペースと50 年の排出ゼロを直線で結ぶと、35 年度は60%減となるという。
線がカーブして60%よりも上に膨らむと「上に凸」、下だと「下に凸」となる。つまり「上に凸」は60%減に届かないと理解した。事務局は「上に凸」のケースとして「イノベーション技術の社会実装の効果が現れるスピードを考えると、上に凸の経路の追求が現実的」と話していた。イノベーション技術の効果は、35 年よりも遅れて現れるという意味なのか。
会議で「上に凸」「下に凸」を何度も使っていたが、なじめない。「60%以上」「以下」と言い換えて良いのではないか。もちろん以下は「60%減よりも高い目標」でも良い。
「凸」に言及したわけではないが、ある委員は「国民にどういうメッセージを出すのかが重要。
数字の意味を伝えることが大事。雑な議論をしている」と苦言を呈した。
他にも会議への不満の声が出た。別の委員は前回の会議で「野心的な目標にすべき」と意見書を提出しようとしたが、事務方から止められたと告白。「『忌憚(きたん)のない意見』はパフォーマンスじゃないかと思った。この会議は議論の場でなく、コメントを3分で述べるだけ。これで正しい政策を作れるのか」と痛烈に批判した。確かに、これだけの専門家が集まっていながら短時間に意見表明するだけではもったいない。
事務方によると、「経路(目標)の議論は次回にしてほしい」と意見書の提出を控えてもらったという。また、進め方についても「政府が案を見せて、皆さまからの意見をうかがって仕上げる」と説明した。つまり会議は、採決をとる場ではないということだ。
会議を傍聴しながら用語や会議の運営に関する課題を感じた。次回の会議では正式な目標案が示されそうだ。進め方の検討は難しいとしても、せめて言葉は分かりやすくしてほしい。
CO2最大排出国・中国の責任と二面性
2024/06/07(Fri) 文:(水)
中東の産油国アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで国連気候変動枠組み条約第28 回締約国会合(COP 28)のプレCOPが10 月30 〜 31 日に開かれ、11 月30 日からの本番の会議に向けたテーマや日程などの事前調整が行われた。COP 28 の最大テーマは、パリ協定に定める地球の気温上昇抑制の長期目標(2℃または1.5℃以下への努力)に対する締約国の対応を集約・評価、それらを踏まえた今後の対策の方向性に合意する予定だ。直近の国際情勢はイスラエルによるハマス攻撃など先行き不透明な情況もあるが、世界中で頻発した今夏の歴史的な異常気象に伴う自然災害などへの対応が改めて問われることとなる。
COP 28 会合に向けては、10 月初めに各国が提出した自主的なCO2等の削減対策を集約して進捗状況を評価する初のグローバル・ストックテイク(GST、5 年に1 回)を開催しているが、各国提出の報告書は勝手な解釈の自己主張が多く、内容も千差万別だったようだ。COPでは統合報告書として、▽ 2025 年までに世界のCO2等排出量のピークアウト、▽ 30 年までに43%削減(19 年比)、▽ 35 年までに60%削減、▽ 50 年までにCO2排出実質ゼロ――などの目標を提示しているが、全項目に言及したのは日本を含めて少なかったという。
地球環境最大危機の原因とされる世界全体のCO2総排出量は約314 億t(20 年の国連調査)。
この中で最大の排出国が断トツの中国で実に32.1%を占め、次が米国の13.6%、インド6.6%、ロシア4.9%、日本3.2%と続く。その中国は今回のGSTにおいても、「30 年にCO2排出量のピークアウト、60 年に実質ゼロ」という目標の見直しはなかったという。それどころか、相変わらず京都議定書時代に途上国代表として主張していた“先進国責任論”に固執して、とにもかくにも先進国による大幅削減が先決という論理だったようだ。
しかし、中国は現実の経済活動では一帯一路の輸出において再生可能エネルギー関連が今や半分以上、欧米や日本の再生エネ市場でも関連機器の供給で過半をシェアするなど、脱炭素化ビジネスで最も利益を受けている大国である。一方で先進国の企業には、いま以上の対策強化に対し
て「中国のためにCO2を削減しているようなものだ」という不満も出ている。不思議なのは主要国がこうした二面性に正面から議論していないことだ。
「デコ活」の推進と経済的措置の有効性
2024/03/08(Fri) 文:(水)
脱炭素につながる新たな国民運動として環境省は「デコ活」の浸透を重点的に進めている。省内には「デコ活応援隊」を設置、隊長には課長クラスを充て、副長以下4 人の隊員が自治体や個別企業・企業団体などに様々な活動を要請したり折衝役をこなす。
「デコ活」というロゴマークはCO 2 を減らす( DE ) 脱炭素(Decarbonization) と、環境に良いエコ( ECO ) の意味を含めた“ デコ” を組み合わせた造語だ。「デコ活」の政策的な狙いは2050年のカーボンニュートラルの達成と30 年のCO 2 削減目標実現を果たすための消費者の行動変容、ライフスタイル変革を強力に後押しするというものだ。
環境省はそうした多くの企業・自治体・団体・個人に企業活動や製品・サービスに自覚的な環境配慮を促し、取り組む内容を登録・公表してもらう「デコ活宣言」も展開。デコ活応援団として経済界の主要な団体等が参画する「新国民運動官民連携協議会」も発足させ、活動方針や相互
交流などを定期的に行う。すでに9 月18 日時点で818 の企業・自治体・団体等が加盟、先導的な活動を実施しているという。
しかし、歴史的に見ると、この種の国民運動はこれまでも数多く展開された経緯があるが、ほとんどが一過性で終わり、目立った成果を上げたという事例はあまり聞かない。かつての民主党野田政権時代にエネルギーと環境問題を首相官邸詰めで担当した柿沼正明氏も、「国民運動を盛り上げるアイディアとしてはいいが、個人の努力を前提としたもので政策効果は短期限定なものになる。それよりも経済的な措置として、中小企業等が実施しようとする環境事業へのインパクトファイナンスの本格的導入など、長期的かつ構造的な対策こそ本命であるべき」と語っていた。
加えて経済的措置では買い物用プラスチックレジ袋の有料化措置が劇的に人々の行動様式を変え、今では自らバッグを用意したり、レジ袋を辞退する人が買い物客の1/3 以上はいるという。
プラ袋はたった3 〜 5 円の課金だが、見事にプラスチック全般見直しの機運を醸成した。環境省の国民運動を否定するものではないが、それと同時により困難な制度的・構造的な対策こそ急ぐべきではないだろうか。
ドラマにも太陽光発電トラブル、次世代シナリオは?
2024/03/06(Wed) 文:(M)
7月にスタートした民放ドラマのほとんどが今月、最終回を迎える。筆者は2作のドラマを毎週、見ている。これだけのめり込んだのは久しぶりだ。偶然だが、その2作とも太陽光発電をめぐるトラブルが登場する。木曜放送の「ハヤブサ消防団」(テレビ朝日系)は、主人公が都会から移住した山村が舞台。のどかな集落だが住宅火災が相次ぐ。不審火を疑うと、太陽光発電所の建設用地買収が放火犯の動機として浮かび上がる。
日曜放送の「VIVANT」(TBS系)は、総合商社が中央アジアでの太陽光発電事業に用意した資金が海外のテロリストに渡る展開だ。メガソーラーとなると巨額が動くため、反社会勢力の資金源として描かれた。
老若男女が幅広く視聴する地上波のドラマで題材になるということは、再生可能エネルギーをめぐる事件が一般化したということか。現実の世界でも景観問題や森林破壊、土砂災害との関連性が指摘され、事業者と住民が係争になっている地域が少なくない。資金をめぐる事件や疑惑も
後を絶たない。将来の太陽光パネルの大量廃棄を心配する声もあり、太陽光発電の周辺は悲観的な情報があふれている。
逆風下ではあるが、パナソニックホールディングス(HD)は8月末、次世代太陽電池として本命視される「ペロブスカイト太陽電池」の開発を発表した。ガラス上に発電部分を作る技術を確立しており、「発電するガラス」を製造できるという。
ペロブスカイト太陽電池は材料を塗って作る構造なので、主流のシリコン系よりも製造コストを抑えられる。また薄くて軽く、シリコン系に迫る発電性能もある。発明者の桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授は毎年、ノーベル賞候補に名前が挙がっている。政府も開発を支援しており、パナ
ソニックHDのほか、積水化学工業や東芝、リコーなども試作や実証でしのぎを削る。
しかし実用化では中国メーカーが先行し、量産に乗り出した。日本の太陽電池メーカーは世界の首位に立ちながら、あっという間に凋落した「苦い経験」がある。
「次世代太陽電池でも敗戦」。こんなドラマが放映されないためにも政府には普及を急いでほしい。ハッピーエンドを迎えるために、メーカーも商品化を早く決断してほしい。
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