今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

日本の負の遺産・水俣病解決に向けて
2026/05/13(Wed) 文:(水)

@ 1956 年から70 年 A約3.6 万人(3001 人) B 202 人・82 歳 C約47 万人、約1000人 D 1.44 万〜 1.92 万円 E 153 ヵ国(25 年11 月時点)
この5 月1 日前後、マスメディアに例年と同様の「公害の原点・水俣病」に関する報道がこぞって出ていたが、上はその記事での主な数字だ。@は、水俣病が国による公式確認から70 年の歳月が流れたこと。Aは、水俣病対策特別措置法に基づく被害認定申請者と認定された人、Bは、認定の存命者と平均年齢、Cは、熊本県の当時の潮谷義子知事(2004 年) が環境省に提案した住民健康調査の対象数(未実施)と06 年に環境省が実施した調査数、Dは、法律に基づく認定患者に支給される療養手当額(26 年4 月現在)。そして、Eは17 年に発効した「水銀に関する水俣条約」でこれまで153 ヵ国が批准、関連対策の大きな拠り所となっている。
一口に“70 年” とはいうものの、被害者( 潜在者も含め) にとってはまさに艱難辛苦そのものの人生であり、塗炭の苦しみであったことは容易に想像できる。今なおそれが続いていることに我が国の政治・行政の無能さを感じざるを得ない。もちろんこの間の関係者の尽力を否定するものではないが、ともかく抜本的な“ 解決” に向かっていないという現実は否定しようがない。しかも、環境省はこの水俣病被害を公害・環境対策の反面教師として多用してきた。
それでは水俣病問題の「解決」とは何か。第一に、水俣病に関連する被害等の全容と現在の実態を客観的に集約することであり、福祉政策的な面も含めた総合的なプログラムと行程表を策定することであろう。第二に、そのための財政措置を特別法として立法化、被害発生当時に産業政策の当局者として瑕疵を犯した通商産業省も含めて、環境省とともに財源の手当てをすべきではないか。現在、経産省が推進中の約3 兆円のGI 基金に比べれば大した額ではないだろう。ただ、こうした対応が具体化したとしても、抜本的解決とはならず、あるべき姿の“ 方向性” を示すことでしかない。
高市首相は先月29 日開かれた昭和100 年記念式典の挨拶で、「若者たちが日本に生まれたことに誇りを感じて“ 未来は明るい” と自信を持って言える国を創り上げていく」と語ったようだが、その手始めをこの公害の原点への新たな対策で実践して欲しいものである。




新たな省エネ・資源循環こそ強靭な経済安全保障
2026/04/15(Wed) 文:(水)

3月下旬、かつて我が国のエネルギー行政に関わったことのある某氏へ、旧知の紙製品(トイレットペーパーなど)製造会社の社長から突然電話がかかってきた。電話の主旨は「高市首相は石油備蓄を放出する方針のようだが、本当にそれで大丈夫なのか。石油価格も大きく上がるし、備蓄分がなくなったらどうするつもりなのか」という内容だった。紙製品製造工程では、加工段階で付着している不純物を飛ばすために大量の石油を使うので、石油類の確保に支障が出れば即生産が止まってしまい最悪ケースでは廃業に追い込まれる。そうした事態を危惧した社長が懸命に情報収集をしていたと見られ、中小企業の一紙屋さんまでも今回のホルムズ海峡封鎖による影響を強く懸念していたわけだ。
これに先立つ20日(日本時間)、訪米した高市首相はトランプ大統領と対面での初の首脳会談に臨んだ。冒頭で派手なハグを見せながら、イランが封鎖しているホルムズ海峡における船舶航行の自由確保やエネルギー分野への対米投資約11.6兆円などに合意した。しかし、トランプ氏によるイラン攻撃の正当性を持ち上げる言動が目立ち、「世界中に平和と繁栄をもたらすことができるのはあなただけだ」というお世辞(ゴマすり?)まで発したという。
この時の両氏の親しげなハグも巷で話題を呼んだ。いわく1億の日本人を背負って対面するのだから軽率ではないか、いやあれは欧米での儀礼だから仕方がない、などなどであった。そのハグについて外交官の経験を持つ人に聞いてみた。答えは、欧米での対面首脳外交では一般的だが、日本人としての文化・慣習から見ると配慮が足りなかったのではないかとの指摘だった。
ところで、肝心の我が国における原油や発電所用燃料が大半のLNGの備蓄および供給確保の見通しである。かつて1973年(昭和48年)に勃発した中東戦争では日本のあちこちのスーパーでトイレットペーパーがなくなり長蛇の列をなした。今回のホルムズ海峡封鎖について、高市首相は十分な原油備蓄体制があることを強調しているが、長期的かつ構造的な省エネ・省電力、資源の再利用など強靭な経済安全保障への抜本的な政策転換は示されていない。遅きに失した事態にならないか、強い懸念を覚える。 




省エネと、「もったいない」精神はどこへ行った!
2026/04/08(Wed) 文:(M)

都内のあるビルでエレベーターに乗り込むと、閉じた扉に動画が映し出された。振り向く天井にプロジェクターが設置されていた。動画の内容はCM。目的階に着くまで10秒未満なので、途中で終わった。何の宣伝だったのか分からなかった。
通勤で使う駅構内には柱にディスプレーが取り付けられ、CMが延々と流れている。ほとんど、立ち止まって見る乗降客はいない。宣伝効果はあるのだろうか。紙媒体を生業にする者の身びいきだが、新聞や雑誌の広告の方が見てもらえるのではないかと思う。
それに環境面からも疑問だ。他の機器と比較すると、少量とはいえプロジェクターやディスプレーも電力を消費している。イラン情勢が緊迫化して原油価格が急騰している。かつての日本なら節電によってエネルギー消費を減らそうと努力した。今、人々の省エネ意識は薄れ、政府は補助金で負担を和らげる。補助金と言うと聞こえは良いが、元は税金だ。エネルギーの海外依存を下げるために、再生可能エネルギーの普及を急ぐという意見も聞こえてこない。省エネや再エネなら気候変動対策にもなるのに。
他にも日本社会がどっちを向いているのか、分からないことがある。東京都内や大阪市内ではタワーマンション(タワマン)が建設ラッシュだ。なかには入居せずに投資目的で購入されている物件があり、住宅価格を押し上げている。
一方で空き家が増え続けている。国土交通省によれば、全国に900万戸の空き家があると推定される。空き家問題が解決されないまま、タワマンによって住宅の供給量が増えている。住宅にも多くの資源が使われている。「もったいない」精神も希薄となり、サーキュラーエコノミーと言いながら住宅の大量生産・大量放置が続く。
旧約聖書『創世記』に、人類が天に届く塔を建設する「バベルの塔」の物語がある。人類は神の怒りに触れ、それぞれが違う言語を与えられる。人間の傲慢を戒める故事だ。
日本もエネルギーや資源を野放図に使っていると神の怒りを買うのではないか。きっと将来のツケが大きくなる。そういえば、ニューヨークには大統領の名を冠した高層ビルがある。神は、このタワーの主にどんな罰を与えるのだろうか。



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