今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

UNEPの温暖化オーバーシュートと高市首相
2026/10/01(Thu) 文:(水)

9月上旬、国連環境計画(UNEP)は今後の地球温暖化による気候変動の見通しを「Limiting Overshoot」と題した報告書にまとめた。ポイントを要約すると、▽今後数年以内に世界の平均気温上昇が産業革命前と比べ1.5℃を超える「オーバーシュート」の時代に入った、▽各国が現在のCO2国別削減目標(NDC)を履行しても気温ピークは約1.8℃上昇、▽1.5℃を超過すると海面上昇・熱波・干ばつ・洪水などの劇的増加に直面する「テッピング・ポイント」(転換点)に達する、▽超過した気温を下げるためにはCO2を人工的に除去して長期貯蔵・固定化する技術(CDR)の大規模な導入が必要――などとなる(和訳は「気候ネットワーク」の公表資料をほぼ引用)。
今回のUNEPの指摘をやや乱暴に解釈すれば、この地球はすでに後戻りのできない温暖化加速化時代への転換点を超え、ついに人類生存の危機に入ったということであろう。また一部の有識者が指摘している対策のCDRにしても、気温をわずか0.1℃下げるのに約2200億tのCO2除去(世界のCO2排出量は358億t)が必要で巨額な投資が必要となる。
つまりこれらの指摘を踏まえれば、現行のパリ協定が目標とする2050年CO2ネットゼロ、2035年のCO2削減60%(2013年度比)の対策では、気温上昇を抑止できないということになる。我が国が目標としている2050年までに実質ゼロカーボンも見直しの必要性に迫られる。しかし、政府はこうした誰にとっても重大なUNEPの報告書を国民向けに翻訳して発信していない。環境省に問い合わせても、和訳して公表する予定はないという。
ちょうどこの直後に、世界のCO2排出大国の中国と米国(両国合わせて世界の排出量の約44〜45%を占める)に大きな動きがあった。トランプ米大統領はパリ協定からの脱退に続き、現行の大気汚染防止法に規定するCO2排出規制の撤廃を決定、中国は習近平主席が訪米して今後の二国間連携の枠組み構築に合意した。
一方、高市早苗首相は国連総会の初の一般討論演説で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を指摘するとともに、「全ての国が地球温暖化対策に真剣に取り組む必要がある」として、気候変動対策と経済成長の両立を指摘した。ただ、国連重視を掲げる高市首相が米国の温暖化対策徹底無視方針に“再考”を直言しなかったのは、日和見主義そのものと言えよう。




ネパール発生の土石流は他山の石か
2026/09/16(Wed) 文:(水)

高市早苗首相が2027年度概算要求の基本方針として主導する「強く豊かな日本投資枠」の実現は、その基盤を支える国際政治情勢の安定化や生産活動等の継続、国土の安定、そして国民にとっては安寧な日常生活の持続化が最低条件となる。ところが、ネパールと中国の国境付近で発生した土石流と大洪水はそうした基盤をことごとく破綻させた。発生から2週間たった9日現在、ネパール側の死者1369人・行方不明者5132人、中国人の死者43人、行方不明者519人、そのほか旅行中の日本人家族5人を含めた外国人など、まさに歴史的な大惨事となった(被害者等の数字は日本経済新聞9月10日付けによる)。今後も被害の拡大は続き、原状回復にはおそらく5〜10年という長い年月が必要となろう。
大惨事をもたらした直接の原因はヒマラヤ山脈の高所にある大きな氷河の一角が崩壊し、沢を伝わって土石流が周辺を飲み込み、橋などのインフラを破壊、集落を押しつぶしていったとされる。その間接的な原因は地球温暖化による気温の上昇が氷河溶解を少しずつ促進させ、ある日突然地滑りの発生に至ったのではないかと言われている。実は日本にもそうした氷河が小規模ながら存在する。気候変動の分野でノーベル賞を受賞した真鍋淑郎博士らとともに、今日の異常気象などを解明した元スイス連邦工科大学の大村纂氏は、「週刊エネルギーと環境」のインタビュー記事(22年1月13日付け)で、日本アルプスにある氷河に言及、気温上昇によって溶解する可能性を指摘していた。
いわば、今回のチベット・中国国境における大惨事は“他山の石”ともいうべきものであり、他人事として片づけられるものではない。加えて、最近は南極氷床の縮小や北極ツンドラ地帯の後退、国内では激しい集中豪雨や多くの山林火災の発生など、気候変動によると見られる地球異変の被害が数多く発生している。
そこで高市首相には立ち止まって熟慮して欲しい。飽くなき経済成長第一政策を推進する前に、我が国土のインフラ基盤は新たなステージに入った気候変動や地球温暖化にどこまで耐えられるのか、どのような対応策を早急に打つべきなのか、その必要はないのか、それこそ日本国民の命と財産に責任持つ為政者として明確にすべきではないだろうか。




COP 33、中国の開催地立候補に期待
2026/09/02(Wed) 文:(M)

7月28日、熊本県で最大震度7の地震が起きた。被災された方々が早く日常を取り戻せるように祈るばかりだ。
その震災前、熊本市で生物多様性の国際会議「グローバル・ネイチャーポジティブサミット2026」が開かれた。14 − 15 日の2日間の会期中、会場に2700」人が訪れた。定員が2000 人だったので、想定以上の来場だ。併設の展示会場にも1 万4000 人が詰めかけた。
お金の話になって興ざめするかもしれないが、サミットを聴講する参加費は1人3万円だった。東京からだと交通費と宿泊費がかかる。実際、会場には東京からの参加者が目立った。それなりの費用なのにこの盛況ぶりには驚いた。
サミットのスポンサーにも約40 社が社名を連ねた。協賛金を支払った企業はサミット会議に登壇し、自社の活動をPRできる。さらに成果文書である「熊本宣言」に署名できる。サミットは海外の民間組織「ネイチャーポジティブ・イニシアティブ」が主催しており、宣言に法的拘束力はない。それでも約40 社が価値を認め、少額ではない協賛金を投じた。今回のサミットで、日本における生物多様性への関心の高さをうかがい知ることができた。商業的にも成功だっただろう。
世界最大級の環境イベントといえば、国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)がある。2023 年、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開いたCOP28には過去最多の10万人が集まった。途上国が経済効果を狙ってCOPを誘致していると聞く。商業主義だと批判するつもりはない。産油国も議長になれば責任を果たすこととなり、COP28では化石燃料からの脱却や30年までに再生可能エネルギーを3倍にする目標が合意された。
開催地未定となっている28年のCOP33は、中国が誘致に意欲をみせていると報道されている。中国はこれまでのCOP交渉では前面に出ていないが、議長となれば国家の威信にかけて気候変動対策を前進させる成果を目指すはずだ。国民の環境意識を高める機会にもなる。ぜひ、中国に立候補してほしい。
ところで、日本政府は名乗りを上げないのだろうか。高市政権の気候変動問題への本気度が試されているというと大げさだが、招致レースに加わってはいかがか。



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