今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

新たな省エネ・資源循環こそ強靭な経済安全保障
2026/04/15(Wed) 文:(水)

3月下旬、かつて我が国のエネルギー行政に関わったことのある某氏へ、旧知の紙製品(トイレットペーパーなど)製造会社の社長から突然電話がかかってきた。電話の主旨は「高市首相は石油備蓄を放出する方針のようだが、本当にそれで大丈夫なのか。石油価格も大きく上がるし、備蓄分がなくなったらどうするつもりなのか」という内容だった。紙製品製造工程では、加工段階で付着している不純物を飛ばすために大量の石油を使うので、石油類の確保に支障が出れば即生産が止まってしまい最悪ケースでは廃業に追い込まれる。そうした事態を危惧した社長が懸命に情報収集をしていたと見られ、中小企業の一紙屋さんまでも今回のホルムズ海峡封鎖による影響を強く懸念していたわけだ。
これに先立つ20日(日本時間)、訪米した高市首相はトランプ大統領と対面での初の首脳会談に臨んだ。冒頭で派手なハグを見せながら、イランが封鎖しているホルムズ海峡における船舶航行の自由確保やエネルギー分野への対米投資約11.6兆円などに合意した。しかし、トランプ氏によるイラン攻撃の正当性を持ち上げる言動が目立ち、「世界中に平和と繁栄をもたらすことができるのはあなただけだ」というお世辞(ゴマすり?)まで発したという。
この時の両氏の親しげなハグも巷で話題を呼んだ。いわく1億の日本人を背負って対面するのだから軽率ではないか、いやあれは欧米での儀礼だから仕方がない、などなどであった。そのハグについて外交官の経験を持つ人に聞いてみた。答えは、欧米での対面首脳外交では一般的だが、日本人としての文化・慣習から見ると配慮が足りなかったのではないかとの指摘だった。
ところで、肝心の我が国における原油や発電所用燃料が大半のLNGの備蓄および供給確保の見通しである。かつて1973年(昭和48年)に勃発した中東戦争では日本のあちこちのスーパーでトイレットペーパーがなくなり長蛇の列をなした。今回のホルムズ海峡封鎖について、高市首相は十分な原油備蓄体制があることを強調しているが、長期的かつ構造的な省エネ・省電力、資源の再利用など強靭な経済安全保障への抜本的な政策転換は示されていない。遅きに失した事態にならないか、強い懸念を覚える。 




省エネと、「もったいない」精神はどこへ行った!
2026/04/08(Wed) 文:(M)

都内のあるビルでエレベーターに乗り込むと、閉じた扉に動画が映し出された。振り向く天井にプロジェクターが設置されていた。動画の内容はCM。目的階に着くまで10秒未満なので、途中で終わった。何の宣伝だったのか分からなかった。
通勤で使う駅構内には柱にディスプレーが取り付けられ、CMが延々と流れている。ほとんど、立ち止まって見る乗降客はいない。宣伝効果はあるのだろうか。紙媒体を生業にする者の身びいきだが、新聞や雑誌の広告の方が見てもらえるのではないかと思う。
それに環境面からも疑問だ。他の機器と比較すると、少量とはいえプロジェクターやディスプレーも電力を消費している。イラン情勢が緊迫化して原油価格が急騰している。かつての日本なら節電によってエネルギー消費を減らそうと努力した。今、人々の省エネ意識は薄れ、政府は補助金で負担を和らげる。補助金と言うと聞こえは良いが、元は税金だ。エネルギーの海外依存を下げるために、再生可能エネルギーの普及を急ぐという意見も聞こえてこない。省エネや再エネなら気候変動対策にもなるのに。
他にも日本社会がどっちを向いているのか、分からないことがある。東京都内や大阪市内ではタワーマンション(タワマン)が建設ラッシュだ。なかには入居せずに投資目的で購入されている物件があり、住宅価格を押し上げている。
一方で空き家が増え続けている。国土交通省によれば、全国に900万戸の空き家があると推定される。空き家問題が解決されないまま、タワマンによって住宅の供給量が増えている。住宅にも多くの資源が使われている。「もったいない」精神も希薄となり、サーキュラーエコノミーと言いながら住宅の大量生産・大量放置が続く。
旧約聖書『創世記』に、人類が天に届く塔を建設する「バベルの塔」の物語がある。人類は神の怒りに触れ、それぞれが違う言語を与えられる。人間の傲慢を戒める故事だ。
日本もエネルギーや資源を野放図に使っていると神の怒りを買うのではないか。きっと将来のツケが大きくなる。そういえば、ニューヨークには大統領の名を冠した高層ビルがある。神は、このタワーの主にどんな罰を与えるのだろうか。




もう一つの「地球存立危機事態」
2026/03/18(Wed) 文:(水)

ロシアによるウクライナ侵略戦争に加えて米国・イスラエルはイランへの攻撃を拡大、世界のエネルギー大拠点である中東地域が戦争状態となって、先の見通しがつかない状況にある。トランプ米政権が一方的に踏み切ったイラン攻撃は国際法違反との指摘がある中、高市首相は国会の答弁で「暫く時間をいただかないと法的な評価ができるものではない」と述べ、中東のホルムズ海峡が封鎖された対応について、我が国の「存立危機事態」にあたるかどうかの判断を留保した。高市首相は19日に訪米してトランプ大統領との会談が予定されており、どんな宿題を抱えることになるのかが注目される。
国際社会が戦時状態にある現在、もう一つの「存立危機事態」への対応がすっかり棚上げとなりそうな雲行きだ。周知のように、国連が主導する気候変動対策では195ヵ国が締結したパリ協定によって地球の気温上昇を1.5〜2℃に抑えるべく、その原因となるCO2等の削減を規定。この10年の各国による削減努力如何がその成否を左右し、場合によっては“地球沸騰”という時代に突入する可能性を指摘している。
各種の報道等によると、ロシアによるウクライナ侵攻戦争で排出が推定されるCO2換算排出量は最近2年間で1億5000万t、自動車が排出するCO2の9000万台にも匹敵する量になるという。これに今回の米・イスラエルによるイラン攻撃と中東紛争が排出するCO2を加えると、各国が合意したパリ協定の要削減量を帳消しにするかもしれない。また、この2〜3年にわたって頻発している山林火災などを加えれば、CO2排出増大は不可逆的な地球温暖化に近づいている可能性大と言えそうだ。
こうした戦争とCO2排出の因果関係は未だに公的な分析がなく、可視化もされていないどころか事態を引き起こした責任のあり方も全く定められていない。それどころか世界第二のCO2排出国の米国はパリ協定からの脱退を決めている。つまり端的に言うならば、国を挙げて脱炭素社会に向けた懸命の努力を重ねている行動が水泡に帰していることになる。これらの主導者はいつの日か地球社会を滅亡させた張本人として墓銘を刻まれることになるのだろうか。



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