週刊「エネルギーと環境」 毎週木曜日発行

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No.2821.05.01




第1レポート次の記事

…トランプ大統領の相互関税でディール。メジャー依存脱する取引確立の好機

アラスカLNG開発に日本参画か、受身でない対応カギ



 トランプ米大統領(表紙に写真)が貿易赤字の解消策として打ち出した各国との相互関税等に対して、我が国への適用とそれに関連する米国との経済取引のあり方を協議するため、石破茂首相側近の赤沢亮正経済再生相が4月30日、米国に向かった。赤沢氏の訪米による協議は2回目となるが、米国側は自動車等への関税措置緩和の交換条件として、アラスカ州における天然ガス(LNG)開発への巨額投資を打診しており、その帰趨が注目されている。
 一方で、トランプ大統領がこだわるこの巨大なLNG開発には日本製鉄によるUSスチール買収問題も微妙に絡んでいる。トランプ氏が指示した買収の適切性に関する再審査の報告が6月下旬にも出される見通しで、それまでに日本製鉄側がどんな内容で投資するかがカギとなりそうだ。

アラスカLNG開発協力と相互関税が絡む
最初に、アラスカLNG開発の全貌と1月20日に就任したトランプ大統領とそれ以降のアラスカ関連の動きを簡単に右記のように整理してみた。
 トランプ大統領が大方針としている化石燃料復活の実践版―アラスカLNG開発・輸出の具体化方策で特徴的なのは、米国側の積極攻勢に対して日本側が受け身的な対応に終始している点だ。その背景には、現在最も焦点となっているノーススロープ開発の場合、開発投資総額が約6.25兆円と指摘され、高い買い物を押し付けられるというエネルギー業界の警戒感がある。直近ではややそのトーンが軟化してきているが、日本ガス協会の内田高史会長や林欣吾電気事業連合会長らは「基本的なプロジェクトの全容が示されておらず評価は困難」とする認識が支配的だ。
経済産業省にも同様の認識が強いが、一方で自動車などへの高率な相互関税適用となれば我が国経済活動への影響が多大であり、トランプ氏のこだわるアラスカLNG開発にディールとして前向きに対応すべしという考え方もある。

◇アラスカLNG開発の全貌について
 〇ノーススロープの油田随伴ガス36〜40tcf及び北極海に膨大なガス埋蔵量70〜100tcf、ブルクスレーンジから北の内陸部〜深部ガス50〜100tcf、ケナイ半島とクックインレット15〜20tcfに分布、合計約200〜300tcfの埋蔵量と推定
 〇ノーススロープの開発は1960年代から検討されてきたが、米国政府の輸出規制があって進まず。規制解除後は州政府を中心にYukon Pacificなどが東アジアへの輸出を計画したが、メジャー系企業による検討棚上げもあって実現せず、今日に至る
 〇現在検討中のアラスカLNGプロジェクトはノーススロープT:1000万t/年以上で800マイルのパイプラインを敷設し南部のケナイ又はバルデーツで液化して輸出。ノーススロープU:300〜500万t/年、液化基地をノーススロープに設置して砕氷船で輸出。ポートマーケンジ:150〜300万t/年、ケナイとクツックインレットのガスを液化して輸出。ケナイのコノコ・フィリップス:80〜100万t/年:既存のプラントを改修して生産・輸出(地図参照)






(以下については本誌2821をご参照ください)



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…国内の温室効果ガス排出・吸収量確報値、13年度比で27.1%減の10.17億t 

23年度CO2等排出量過去最低に・景気後退が影響か


 環境省は4月25日、「我が国における2023年度温室効果ガス排出量・吸収量」の確報値を公表した。23年度は前年度比4%減の10億1700万tとなり、1990年度以来の最低値を2年連続で更新した。その要因として、再生可能エネルギーと原子力発電量の割合が3割に増えた一方で、製造業等の国内生産活動の減少等を指摘した。
 
■CO2減少要因、脱炭素電源増と景気後退
 環境省が示したCO2等排出量の2050年ネットゼロに向けた進捗状況は下図の通り。浅尾慶一郎環境相は同日の閣議後会見で、「直線的な経路で削減が進んでいるが、まだまだ道半ば。35年、40年の目標実現は決して容易でない」と語った。
 23年度の部門別排出量では、前年度に比べて「家庭部門」の減少率が6.8%と最も大きく、次いで「業務その他部門」が6.2%、「産業部門」が4.0%、「エネ転換」が3.8%となった(右記資料)。減少要因としては、再エネ・原子力の脱炭素電源による供給拡大に伴う電力CO2原単位の改善を指摘。加えて、製造業における生産の停滞などによる国内経済活動の減少など景気後退の影響を指摘している。 運輸部門は0.7%削減となった。燃費改善と
あわせて旅客利用・貨物輸送量の減少が指摘された。22年のロシアによるウクライナ侵攻を契機とした燃料費高騰の影響も、他部門も含めて少なからずあるとみられる。

◇エネルギー起源CO2部門別排出量と増減、要因等
[編注;左から、部門…23年度排出量(22年度比増減、
13年度比増減):22年度からの減少要因]
 @産業部門(工場等)…3億4000万t(1400万t減・△4.0%、1億2380万t減・△26.7%):電力CO2排出原単位の改善、製造業の国内生産活動の減少
 A運輸部門(自動車等)…1億9000万t(△140万t減・△0.7%、3410万t減・△15.2%):旅客輸送のエネ消費効率向上、旅客車利用と貨物輸送量の減少等
 B業務その他部門(商業・事業所等)…1億6500万t(1090万t減・△6.2%、6960万t減・△29.7%):エネ消費原単位や電力CO2排出原単位の改善等
 C家庭部門…1億4700万t(1080万t減・△6.8%、6220万t減・△29.7%):冬季が暖かくエネ消費量が減少、電力CO2排出原単位の改善等。
 Dエネルギー転換部門(発電所・製油所等)…8100万t(320万t減・△3.8%、2520万t減・△23.7%):石炭製品製造における排出量の減少等









(以下については本誌2821をご参照ください)


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