[過去169〜184 回までの今月のキーワード]
水素エネルギー時代到来の前に
2015/11/13(Fri) 文:(水)
10月某日専門誌の懇親会で、ある石油・ガス系団体の幹部がいまフィーバーの様相を呈している水素エネルギー普及の見通しに触れ、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックが終わればこのブームは急速にしぼむのではないか」と語り、水素社会づくりへの対応が一過性に終わる可能性を示唆していた。その理由に挙げたのは、水素をつくるまでのプロセスが
多段階過ぎる、カネも膨大にかかり技術革新も容易ではない、持ち運びが不便で既存インフラも活用できない、などだ。
現在、水素タウンなどを目指す水素協議会の設置が全国30自治体超にまで広がっているが、契機は安倍首相が「水素をしっかりと活用していく。これは国策といってよい」との国会答弁(14年3月)が引き金で、それ以来政府の水素関連事業予算はゆうに年間1000億円を超えている。東京都も負けてはいない。舛添要一知事は朝日新聞主催環境フォーラムで、▽20年
までに燃料電池車(FCV)6000台の普及、水素ステーションを35ヵ所設置、同5億円かかる建設費用を都が補助し1億円ですむようにする、▽オリンピック選手村につくる6000戸を水素ニュータウンにしたい――など、並々ならぬ決意を示していた。
水素社会づくりのメリットは、@エネルギー供給源の多様化、A環境負荷の低減(特にCO2)、B関連産業の裾野が広く経済波及効果が高い、C災害などの非常時対応に有効――とされる。しかし、実現までの巨額な開発投資やインフラ整備、人口密集地域で使用される水素という危険物の安全性担保など、マイナス面が多いのも事実だ。かつて東京には「チンチ
ン電車」の愛称で親しまれた都電が区内を縦横に走り貴重な移動手段だったが1972年までに次々と廃止され、今は「荒川線」1系統を残すのみとなった。それ以前には架線を利用する「トロリーバス」も走っていた。いずれも電気をそのまま動力源として利用するコンパクトなものだ。水素をつくるライフサイクルで見れば、高度な技術の採用よりもナマの電気を利用す
る方がコストやCO2排出量もはるかに少ないだろう。
低炭素社会の実現は安直な技術革新に頼るだけでなく、かつての都電の復活や都内での自動車走行規制、自転車利用のための環境整備など、超高齢化社会の到来に呼応した人と環境に真に優しい街づくりも肝要ではないか。
再生エネで「究極のエコカー」
2015/10/29(Thu) 文:(滝)
深まる秋の一日、山梨県・韮崎までドライブ、今年のノーベル医学生理学賞受賞者、大村智さんが設立した「韮崎大村美術館」を訪れた。上村松園、小倉遊亀、片岡球子らそうそうたる女流画家の絵が展示され、2階の展望室からは八ヶ岳が雄大に見える。すぐ横の、やはり大村さんがつくった日帰り入浴施設「白山温泉」でドライブ疲れをいやす。近くにはワイ
ナリーやウィスキー工場、国蝶・オオムラサキセンターなどがあり一日楽しめる。
今乗っているのはホンダのハイブリッド車「フィットシャトル」。20代前半、中古の「N360」から始まってトヨタ、日産、マツダとメーカーは気にせず乗り換えてきた。今の車を選んだ理由の1つは、平均燃費が同時並行で表示されることだ。近くをちょこちょこ走っているとリッター16〜17km、高速を走ると19km 近くになり、平均すると18.5km 前後だ。カタロ
グ値は25km だから実燃費はその75%というところか。
前に乗っていた車の燃費は10km 弱だった(満タンから次に満タンにするまでの走行距離を給油量で割る)。9月に最初の車検を受けたが、3年間で約5万q乗った。この間のガソリン価格を135円と仮定すると、乗り換えで3年間に31万円も浮いたことになる。
地球温暖化対策の枠組みづくりを協議するCOP21が今月末から始まるが、その結果にかかわらずCO2等の排出削減に取り組むのは私たちの共通の責任だ。運輸部門のCO2排出はわが国全体の排出量のほぼ2割を占める。2001年をピークに減っている一因はエコカーの普及だという。ただ、電気自動車(EV)も燃料電池車(FCV)も走る時にCO2を出さなくても、電気や水素を製造したりするのにCO2が排出されている。ガソリン車が1km走るとCO2を147g排出するのに対し、EVは55g、FCVも天然ガスと水蒸気の反応で水素を取り出す方法だと78g排出する(日本自動車研究所2011年3月の報告書から。大震災後、火力発電依存
度が高い今はもっと多いとされる)。これが、太陽光発電や風力などの再生可能エネルギーを利用して電気や水素を取り出せば、EVは1g、FCVは14gと段違いに減る。
韮崎市を含む山梨県北部は日照時間日本一とも言われ、複数のメガソーラーが稼動している。太陽光発電で生み出した電気・水素を使う「究極のエコカー」の普及を願った。
"異端児”の初入閣で注目される安倍政権運営
2015/10/16(Fri) 文:(水)
7日に発足した第3次安倍改造内閣で来夏の参議院選を意識した国民的人気のある小泉進次郎議員の入閣はなかったが、歯に衣着せぬ言動と自民党の方針に平然と異を唱える河野太郎議員(衆・神奈川15区、52歳)が初入閣を果たし、霞が関を震撼させた。ポストは国家公安委員長・行政改革と防災担当を兼務、特に行政改革事務はこれまで3年以上にわたって
実施してきた規制緩和計画の仕上げに入り、多くの省庁が二重行政の廃止や権限委譲などに迫られる。それだけではなく、15年以上も経った今の政府体制を見直す中央省庁再編を言い出すかもしれないからだ。
大臣就任前は党の行政改革推進本部長としてたびたび政府の方針にクレームをつけ、最近では高速増殖炉・もんじゅ開発の延命予算案を中止させたほか、エネルギー基本計画策定を前提にした原発再稼働にも批判的な言動を繰り返していた。超党派の議員で組織する「原発ゼロの会」のメンバーでもある。その一方で自民党調査会の再生エネルギー普及拡大委員会
にほぼ毎回出席、電力会社が消極的な太陽光発電等の設置に伴う系統連系への接続対応や増強工事に要する工事費負担問題などでは舌鋒鋭く経産省の弱腰と大手電力をなじっていた。
そうした“異端児”を敢えて入閣させた安倍晋三首相が懐の大きさを見せうまく当人の長所を生かすのか、はたまた河野大臣が就任前の信念を貫いた結果として閣外に去る事態を招来させるのか、しばし改造内閣の焦点になりそうだ。いずれの結果になるにしろ、マンネリ気味の行政改革分野には体制肥大化による非効率行政や岩盤規制による企業等活動へのマイ
ナス影響がまだまだ多い。例えば環境アセスメント制度の所管は未だに事業ごとに省庁に分かれ、環境省や経産省等がほとんど同じ手続きで時間がかかっており、早く所管を一本化すべきだ。再生エネ分野もバイオマス事業に関わるのが6省庁という縦割り行政の典型で、事業者からは早く集約化してほしいとの声があがっている。
新政権が抱えた暴れ馬はこれまでの持論を封印して角をおさめ手堅い実績を残すのに集中するのか、政治家としての信念を押し通し次代を担うリーダーとしての評価を勝ち取るのか、新政権への期待とともに注視していきたい。
「ないものはない」島と活性化
2015/10/02(Fri) 文:(滝)
移住者らによる地域おこしで知られる隠岐諸島・海あま士町の玄関口・菱浦港に着くと、島のキャッチフレーズ「ないものはない」のポスターが迎えてくれた。隠岐諸島は隠岐の島(島後)と島前の3島に分かれており、海士町はその1つの小さな島。全国的に知られているのは、人口2353人中、Iターン・Uターン者が約240人と1割を占め、島の特産品のブランド化に
活躍していることだ。年間1000人以上の視察者が訪れるという。
コンビニが1軒もない島内を歩くと、放牧の黒毛牛がゆったりと草をはみ、刈られた稲ははさがけで自然乾燥されていた。2002年に初当選した山内道雄町長は、当時全国を覆った「平成の大合併」は離島にはメリットが少ないとして、自立の道を選択。自身の報酬を50%カット、町議や職員も給与の大幅カットで協力、その分で魚介類の鮮度を保ったまま冷凍できる最新技術を第三セクターに導入、特産のイワガキやシロイカを都会の消費者に直接売り込んだ。「役場は住民総合サービス株式会社」が町長の信条だ。また、それまで子牛で出荷、松阪牛や神戸牛とされていたのを、「島生まれ・島育ちの隠岐牛」としてブランド化に成功した。
そこで大きな力を発揮したのが“よそ者・若者・ばか者”だという。移住者(よそ者)の多くは20〜40代(若者)で、1000万円を超える年収や大企業の肩書を捨てて飛び込んだ(ばか者)たち。彼らは「都会の生活に疲れて…」ではなく、島で食い扶持を稼ぐ意欲を持って移住、離島と都会を結びつけるのに大きな役割を果たしている。「株式会社巡の環」が出版した「僕たちは島で、未来を見ることにした」(木楽舎刊)は、真摯に全力で地域に溶け込む彼らの姿勢と、閉鎖的な島の中でもそれを受け入れる“触媒”となったおっちゃん・オバちゃんとの交流が生き生きと描かれている。
いま島の再生可能エネルギーは、公共施設での太陽光発電など20kW程度だが、2000kWの風力発電が来年度に稼動するほか、養殖した海藻から水素を取り出して燃料電池に使う研究も進められている。「ないものはない」には2通りの意味があると聞いた。ないものを欲しがっても仕方がないという、ある意味での開き直り。もう1つは「地域の人たちとのつながり、
島の豊かな自然…暮らしていくのに必要なものはすべてある」という意味。再生エネの普及がそれを後押しするに違いない。
電力全面自由化と再生エネの地産地消
2015/09/16(Wed) 文:(水)
マスメディアにはほとんど取り上げられなかったが、自民党の資源・エネルギー戦略調査会( 会長; 山本拓議員) が8月21日「再生可能エネルギーによる地方創生戦略」をまとめ、首相官邸をはじめ関係省庁に提言の実現を要望した。提言の狙いには来年4 月から始まる電力の小売全面自由化に併せ、地方におけるエネルギー「地産地消」などを促進させる政策措
置を強化したいとの思いがある。
提言内容は全体に共通する事項として、環境負荷に関する情報・電源構成開示の義務化など21項目、送電系統強化に伴う工事費負担問題など太陽光発電関連4項目、風力・バイオマス・水力・地熱・再生可能エネ熱に関する意見・要望など実に多岐にわたる。ただ、自民党内の他の調査会や部会等との調整を経て出されたわけではないため、政府がどこまで具体的
な施策に反映させるかは未知数だが、相当の影響力をおよぼすのは間違いない。
この提言の背景には、電力の全面自由化により家庭用電気も全国どの電力会社からも購入が可能となり、年間で約18兆円といわれる市場が開放されることから、これを地産地消の戦略により地方と地域の経済に組み込んで還流させ、現在のような大都市収奪型のエネ需給市場を変革させたいとする意図がある。その流れをつくるためには、地方の再生エネ資源を自
ら開発・事業化し、自らそれを最大限利用する仕組みを構築する必要がある。自然エネ・環境NGOの会議に出席した山本調査会長も、「皆さんは政策への不満を示すだけではなく、来年4月からは地域の再生エネ電気をどんどん購入して欲しい。そうすればFITに頼らずとも導入が拡大され地域の経済も活性化する」と、消費者主導によるエネ転換を促していた。
ただ「地産地消エネルギー」を根付かせるためにはそのための条件整備など課題も多い。
1つは販売される電気の電源開示(CO2等環境負荷含む)ルールが未定なこと。2つは省エネや再生エネなどを導入・使用した際の経済的な統一価値( CO2クレジット価格) が未だにあいまいなこと。3つは地産地消のエリアが都道府県なのか市町村なのか、それ以外かまだ明確でないことで、あまりに狭いエリアに固執すると地産地消が成り立たなくなるという問題が出てくる。かけ声だけではなく、こうした条件整備にも引き続き政治の主導性を発揮して欲しいものである。
敬老の日と地域・世代をつなぐ再生エネ
2015/09/02(Wed) 文:(滝)
今年の敬老の日は第3月曜日の21日。週末の19日から23日の秋分の日まで豪華5連休の「シルバーウイーク」になるが、それぞれ歴史がある祝日を連休を増やすために変更した安易さはいまだに納得できない。敬老の日の始まりは兵庫県野間谷村(現・多可町)の村長らが1947年、「年寄りの知恵を借りて村づくりをしよう」と農作業が一段落するこの時期に「とし
よりの日」を決めたこと。これが口伝えで全国に広がり、65年に国民の祝日となった。10月10日だった体育の日は東京オリンピック開会式にちなんだもので、この日の晴れわたった青空を覚えている人も多いだろう。いまは第2月曜日の成人の日は、かつて元服の儀が小正月(1月15日)に行われていたことに由来するという。
市主催の敬老の集いのお知らせが先日ポストに入っていたが、なんか煙ったい。リタイアした友人たちと話していると、老人福祉とはお年寄りを大事にするだけでなく「あなたが必要なのです」という社会ではないかと、と思うようになった。岡山県真庭市の木材バイオマスを利用した循環型社会づくりの仕掛け人でNPO法人共存の森ネットワーク理事長、澁澤寿一さん(62)が東京都内に持つ会社はユニークだ。働いている人は全員70歳以上で、最高齢は95歳だ。仕事は近くの会社から請け負った清掃作業などで週休5日。月給は3万円程度だが、年金受給者にはちょっとした小遣いになる。日本人の平均寿命は女性86.8歳、男性80.5歳まで延びた。毎週出勤して、給料日にはきちんとお金が振り込まれる。「何もしなくていいから」より、「お仕事お疲れさま、来月もよろしく」と言われた方がうれしいに決まっている。
余談だが、この会社のすごいのは毎年1回、社員に“利益還元”していることだ。社員の家族も含めて銀座の料亭を借り切り、きれいどころを集めてドンちゃん騒ぎをやらかす。さすが明治の財界大御所・澁澤栄一の曾孫だけある、と変に納得した。
国内外の農山村を歩き、「ハウステンボス」には企画段階から携わった澁澤さんの再生可能エネルギーへの取り組みもこうした思いが根底にあるようだ。真庭のバイオマス視察を有料化したところ、企業や行政関係者、一般市民らが4年間で延べ1万8000人も参加した。「バイオマスは人と人、人と自然、世代と世代をつなぐ。文化や伝統も含め地域の人たちが同じ目標(夢)を目指す環境づくりこそが地域活性化だと思っている」と目を輝かす。
石炭火力の新増設とバイオマス利用
2015/08/18(Tue) 文:(水)
来年4月実施の全面自由化に伴う小売事業者の届出が今月から始まったが、小売事業者に電気を供給する発電事業者の電源開発を巡って環境省と経済産業省の対立が深まっている。従来の10電力会社の供給エリアを越境する自由化競争で新たな顧客を獲得するためには、安い電源コストの電力を調達することが不可欠で、その代表格が石炭火力発電だ。大手電力に加えて新電力も続々と石炭火力新増設を具体化、環境アセスメントの手続きに入っている。
環境省によれば、大手電力の石炭火力新増設計画は現在約1300万kW、環境NGOなどの調査では中小規模も含め約2000万kWに達し、先ごろ経済産業省が決めたエネルギーミックス30年目標の石炭火力発電割合を大きく上回り、わが国が年末の気候変動次期枠組み交渉向けに提案した国際約束のCO2等削減目標達成に著しい支障を及ぼすという。発電量当たりのCO2排出量が圧倒的多い石炭火力計画に対しては両省が約2年前に関係局長間で合意、電力業界全体によるCO2削減のための自主的取組みの枠組みをつくるとしていた。先日、大手電力と新電力が合意したその枠組みが公表されたが、環境省は中身に実効性がなく不適切、経産省は最低条件を具備しており今後さらに肉付けしていけばよい、との認識だ。両省の評価は大きく異なっており、このままでは個別案件として手続きされている環境アセスのクリアが事実上ストップ、計画中止という事態も予想される。
それにしても不可解なのは、石炭火力の導入拡大計画においてバイオマス混焼など排出CO2を一定程度減らせる有力方策の議論が一向に出ていないことだ。いま出ているのは最先端の発電技術である超々臨界圧や石炭ガス化発電などの採用や燃焼効率の改善による技術的な対応ばかりである。石炭とガスの混焼や一定の再生エネ電源の採用義務化、あるいはバイオマスエネルギーとの混焼など、この際開発中技術の採用だけではなく多様な方策を検討したらどうか。石炭火力のバイオマス混焼にしても、既設では3〜5%程度が設備面から限界とされたが、技術的な工夫が可能な新設では2〜3割の混焼が本当に不可能なのか。
これが可能となれば、政府が「バイオマスニッポン」を閣議決定したのに関係省庁の縄張りから10年経ってもあまり成果のみられないバイオマス利用が抜本的に拡大され、安倍政権が力を入れる地域再生や地産地消にもつながると思うが、どうだろうか。
火山国の恵み、もっと活用を
2015/07/15(Wed) 文:(滝)
JR東日本が年に数回売り出す「大人の休日倶楽部パス」は、中高年用の「青春18きっぷ」といったところか。18きっぷは普通列車限定だが、休日倶楽部パスは福沢諭吉と樋口一葉(つまり1万5000円)で、管内なら新幹線も4日間乗り放題だ。使わない手はない!
梅雨空の今月初め、盛岡駅からレンタカーで国立公園・八幡平に向かった。山肌に残雪が残る緑深い道をくねくね登っていくと、巨大な電気スタンドの笠のような建造物が現れた。
1966年10月に運転開始した商業用では日本で最初の、世界でも4番目という松川地熱発電所の冷却塔だ。地中1000〜1600mまで10本の蒸気井戸を掘り、約5万世帯分にあたる電気を生み出している(出力2万3500kW)。発電に使われた高温の蒸気は復水器で温水になり、高さ45mの冷却塔から自然落下して冷やされる。
構内のあちこちから白い蒸気が噴き出し、シューシューと音がする。付属の資料館では、ビデオ映像やパネルで地熱発電の仕組みなどを紹介。中でも井戸掘削の苦労がしのばれる当時の記録映像が興味深かった。戦後間もなく松尾村(現・八幡平市)が温泉を掘ろうとしたところ、温泉の代わりに高圧・高温の蒸気が噴出したことが建設のきっかけという。運転開
始の66年といえば、ビートルズが来日して武道館でコンサートを開いた年。それから半世紀近くも地下のエネルギーを利用して発電を続けている。
また、発電所の温水は八幡平市を通じ、パイプラインで地元の農業組合や温泉旅館、保養所、別荘などに供給されている。12km離れたハウス団地では温水がチューブで野菜・花きのビニールハウス内を流れ、冬期は周囲の融雪にも使われるという。
200近い火山がある日本。昨年の御嶽山噴火で多くの犠牲者を出し、今年も口永良部島では島民全員が避難、箱根でも観光に悪影響を及ぼしている。だけど日本列島から逃げ出すわけにはいかない。禍わざわい
は最小限に切り抜け、恵みを最大限に生かしたい。日本の地熱発電の資
源量は世界3位、しかし実際に発電しているのはその50分の1程度にすぎない。見えない地中深くの熱利用、開発は長期になり技術的トラブルもあると聞くが、地元住民・環境と共生した地熱開発をもっともっと進めてほしい。
販売する電気に“色”をつけられるか
2015/07/01(Wed) 文:(水)
電力・ガスシステム制度改革の総仕上げとなる電気事業法等改正案が6月17日の参院本会議で可決されて成立、来年4月から家庭用等の電力販売が全面自由化され、エネルギー大競争時代に突入する(ガスは17年度実施)。法律改正では20年に現在の大手電力会社を小売・発電・送配電部門に法的分離、22年に大手ガス3会社も導管事業部門が分離・独立する。
こうした制度改革により今の電力・ガスの企業名も変わるほか、電力会社や一定規模以上の再生可能エネルギー事業者も小売と発電のライセンスを改めてとりビジネスを展開することになる。当然ながら、自由化競争では顧客のニーズを踏まえた目線に立ち、満足度を常に満たすサービスが必要となる。そうしたなか、国際環境NGOとして名高いグリーンピース・ジャパンが資源エネルギー庁と消費者庁に対して、小売会社を消費者が選ぶ判断材料として、販売する電気の「電源構成」「二酸化炭素排出量」「放射性廃棄物量」の提示を義務化するよう求めた。同団体が5月から集めた1万1556筆の賛同署名つきだ。
3つの情報提供は技術的にはそう難しいことではない。ただ電気という商品は品質の違いで色分けできるものではなく、自分が使う電気がどんな電源によって生み出され、送電系統の中でどうミックスされ、どんな品質になっているかを正確に特定することは相当困難だ。どうしても一定の割り切りが必要となる。かつて東京都が再生エネ導入施策として、
青森県の風力発電からの電気を使用した事業者を優遇するような措置をとったことがあるが、それも電気に判別できる色がついているわけではなく、あくまでクリーン電気を使ったという「みなし規定」によるものだった。
こうした事前情報の開示義務はすでに電力改革の制度を検討してきた経産省の審議会でも議論されており、委員になっている消費者団体などの代表は「分かりやすい商品を判断するのに不可欠な情報」の提供を要望していた。今後の審議で、経産省がこうした要望を認容するかどうかだが、仮にグリーンピースの主張を入れると原発やCO2の排出量が圧倒的に多い石炭火力から電気の供給を受けた電力販売会社は圧倒的に不利になりかねない。
かといって、この時代に「品質表示」のない商品販売は許されない。
電気にどのようなみなしの「色」をつけるのか見ものだ。
痛快“啖呵”2連発
2015/06/17(Wed) 文:(滝)
青、紫、赤錆色…アジサイが梅雨空に揺らぐ季節になった。
今月1日開かれた経済産業省の「長期エネルギー需給見通し小委員会」。「原発比率20〜22%」とする2030年のエネルギーミックス(電源構成)が事実上決まる大詰め会合とあって、多くの報道陣がつめかけた。
役所が人選することで、役所の意見を公正に見せるための“隠れ蓑
みの”とも批判される審議会。会合では積極的賛成や「不満だけど…」が続いた中で、橘川武郎委員(東京理科大教授)ただ一人が「反対です」と明言した。「原発依存度低減と(より安全な)最新炉へのリプレースをセットにすべき。原発比率は15%程度とすべき」との意見には説得力があった。本誌冒頭の100号記念座談会にも出席いただいているので、ぜひ読んでいただきたい。
その翌日は自民党本部で「原子力規制に関するPT」があり、旧原子力安全委員会委員長や原子力国民会議代表理事らはヒアリングで、「原子力規制委員会の審査に時間がかかりすぎている」「40年原則廃炉ルールは廃止すべき」などと話した。
河野太郎議員が立ち上がって発言を求めた。「ちゃんとした有識者を呼んでほしい。原子力の世界は有識者もどきのような人がたくさんいて、俗に原子力村といわれるところで利権をむさぼる末席につながった人間がたくさんいる。またぞろそういう輩やからがはいだしているのが現実。そういう原子力村の人間を有識者と呼ぶのは誤りだ。3.11の反省に基づいて
原子力規制委員会をつくったのであって、しっかりと支えていくことが大事」「どの世論調査をみても国民の7割はどこかの時点で脱原発してほしいと願っている。自民党も東京電力福島第一原発事故のあと、責任を感じて特命委員会を立ち上げて30回以上議論してきた。そこでとりまとめたものが今の政権でないがしろにされている。喉元過ぎれば熱さを忘れる、でいいのか」原子力規制委による再稼動に向けた新規制基準適合審査、さらに審査書決定後、運転までの安全チェックに予想以上に時間がかかっているのは事実。これは、3.11以前はいかに規制当局と電力会社が“まあまあ”でやってきたかということの裏返しではないか。
アジサイの花言葉は移り気、高慢など。原発政策に関してのどこかの政党のようだ。
両立するか、エネミックス実現と全面自由化
2015/06/03(Wed) 文:(水)
2030年度のわが国におけるあるべきエネルギーの需給構成と温暖化ガスの削減目標達成を裏付ける「エネルギーミックス」(電源構成)が近く決定する。
今回の長期エネ需給目標は、過去10回以上改定・見直ししてきた計画とは明らかに異なる事業環境が前提となる。目標の達成にはそこに向かう具体的な施策の展開とそれを担うプレーヤーが不可欠となるが、まだ見えていない。これまで供給に要するコストが総括原価方式によって保証され、参入等規制に守られて事業展開してきた大手の電力会社は、16年度から、ガス会社は17年度から小売り事業分野が完全自由化となって市場競争に突入、20年度からは免許制等による発送電分離、22年度からは大手ガス会社の導管部門分離が実施され、現在の事業形態が一変する見通しだ。
事業環境の構造変化によってエネルギーミックスの実現が困難となる要素としては、第一に実効性ある具体的な施策の展開が可能かどうか、第二に業界に強い影響力を持つ主役プレーヤーが不在となる状況がある。前者については、従来は電力会社が10年間の電力供給計画( 需要見通しと電源構成) を策定して経済産業省に届出、その際に国の政策方針との整合性がチェックされていたが、制度見直しによってその担保措置が極めて弱くなった。
後者については、この4月に火力建設・燃料調達新会社として誕生した東京電力と中部電力による共同出資の「ジェラ」を見るまでもなく、原子力部門を含めて業界の統合・再編成が進む見通しで、主役プレーヤー不在という状況も十分予想される。主役不在となれば、国の政策を実現する牽引力が著しく弱くなってしまう。
国のエネルギー環境政策とは整合しない企業行動はすでに顕在化している。例えば相次いでいる大手電力や新電力による石炭火力計画の急増だ。コストの安い石炭火力立地を先行させて自由化競争で有利に立とうとするものだが、企業論理からすれば至極当然の対応ということになる。しかし、政策当局者からすれば、少なくとも30年以上にわたって稼働
する石炭火力は今回決める30年度のCO2削減目標26%(13年度排出量比) 達成の足を引っ張り、また環境アセスメント逃れの中小計画が20件以上あり、発電効率や環境保全面から危惧がある。果たして、エネミックスの実現と全面自由化は両立するだろうか。
「さよなら原発」と言い続けたい
2015/05/13(Wed) 文:(滝)
5月の連休中に2冊の本を読んだ。
1冊は「ご当地電力はじめました」(岩波ジュニア新書)。著者の高橋真樹さん(41)とは昨年暮れ、市民ファンドで太陽光発電(PV)に取り組む会津電力(福島県)の現地見学会で知り合った。電話すると誠実そうな声が返ってきた。
高橋さんは3年かけて国内外の再生可能エネルギーの現場を歩いたという。著書では、神奈川県小田原市の「ほうとくエネルギー」(行政と市民が手を結んでのPV事業)、過疎地で「小学校を残そう」と進める小水力発電(岐阜県・石徹白「いとしろ」集落)、一軒の屋根から始まっ
たPV事業「相乗りくん」(長野県上田市)――など多くの事例を紹介。「大企業が地方の遊休地にメガソーラーを作っても、その地域は変わらない。そこに住む人たちが自分たちのこととしてエネルギーを考えることで変わっていく」と高橋さん。「人も地域もそれぞれ違う“色”が感じられた。ただ、そうした地域に共通して住民同士の絆があった」と振りかえる。
もう1冊は、27人のメッセージと写真からなる「NO Nukes ヒロシマ ナガサキフクシマ」(講談社刊)。広島と長崎に原爆が落とされた66 年後に福島原発事故が発生、ヒロシマ、ナガサキに続いて福島がフクシマになった。27人は、「8月のあの日」を忘れられない被ばく者、福島で有機農業に取り組む農家、物理学者、詩人、俳優、大学生たち。生い立ちも職業も年齢も違うが、核兵器と原発をなくしたいとの思いは共通している。
坂本龍一さんは訴える。「人類は、兵器としてであれ発電としてであれ、核とは共存できないことを全世界に訴えることが、三度も大きく被ばくした唯一の国としての、国際社会に対する貢献であり、責任だと思います」。
渡辺謙さんは書いている。「『原子力』という人間が最後までコントロールできない物質に頼って生きていく恐怖を味わった今、再生可能エネルギーに大きく舵を切らなければ、子どもたちに未来を手渡すことはかなわないと感じます」。
吉永小百合さんは記している。「原子力発電の恐ろしさがほんとうに分かったのは、福島第一原発の事故があってからのことです。それまでは、たとえば核のゴミということについてもよく知らずに暮らしていました。私は、そのことへの反省の気持ちも込めて、『さよなら原発』と言い続けたい」
地域創生にエネルギー収支見直しを生かせ
2015/04/23(Thu) 文:(水)
自立的な地産地消を目指して再生可能エネルギー導入に取り組んでいる徳島県佐那河内村という農村地域がある。徳島市に隣接、人口2700人・933 世帯の小さな村だが過疎化が進行、村経済は崩壊の危機にあるという。そこで「村風車」と呼ぶ、風力発電事業(1300kW×15基)による村おこしに奔走したのが、花屋さんと自治体職員OBと徳島再生可能エネルギー協議会の豊岡和美理事だった。花屋さんは商売でのノウハウを生かした先行投資のリスク分析、OB職員氏はかつてこなした補助金事務、これに地元金融機関も全面的に協力、年間20億円の経済効果をもたらす事業に発展させた。「佐那河内みつばちソーラー発電所」(計100kW)と名付けた地域還元型PVも昨年3月に発電を開始、30軒分の電気を創り、年間8500万円の経済効果と約50tのCO2削減に貢献するという。
「環境首都水俣創造事業」を2012年から進める熊本県水俣市は市内におけるひと・もの・カネの流れを通して地域の経済循環を分析、電気やガソリン代等で年間約86億円が市外流出していることを突き止めた。そこで、これら費用を市内に還流させるべく住民参加によるバイオマス発電所やPVを設置、地域の雇用創出と産業クラスター形成によるエネルギー
収支改善に挑戦中だ。環境省が発表した地域エネルギー収支評価=「経済の健康診断」(全国1800自治体を対象にした地域経済循環分析) に発展した。もう一つ、東北経済産業局がPV設置による地域経済への波及効果を調査したところ、事業総額の80%相当が東京などに本社のある大手企業・メーカー関連に流れ、域内経済に還流したのはたったの20%程度しかなかったという。同局の関係者は今後の再生エネ事業展開には、国の認定業務に地元優先枠の設定や地元企業出資の条件付けなど、何らかの制度見直しが必要と指摘する。
現在のFITには一般の人や企業が薄く広く負担した賦課金を大企業やメーカーなどに配分、長期間にわたって利益を保証するという一方通行の構図がある。これでは地方は大資本に利用されるだけで、地域経済活性化のためにひと・もの・カネはうまく還流せず、本当の意味での地産地消にはなりえない。上に見たように、地域自ら是正しようとする動きが始まっているが、それを一過性に終わらせることなく、全国大にしていくことは地方創生を進める国の大きな責務でもあろう。
お彼岸に手向けられた花…福島で考えたこと
2015/04/01(Wed) 文:(滝)
除染を終えて3月1日に全線開通したばかりの常磐自動車道を仙台まで車で走った。福島県の常磐富岡―浪江IC間14.3km 中、大熊・双葉町内の帰還困難区域9kmを通過する。
沿道には汚染土壌などが入れられた黒い袋が整然と積まれ、点々とつらなる。また、空間線量率の表示板が数キロおきに立てられ、最大値は5.4 マイクロシーベルト(μSv/h)だった。パーキングの掲示説明によると、「広野〜南相馬IC(約49km)を時速70kmで走ると0.37μSvの被ばくを受ける」計算で、これは胸部のレントゲン撮影の約160分の1レベルだという。放射能に対しては“正しく恐れる”ことは必要だが、過剰な反応は戒めるべきだ。
高速を降りて6号線を走ると、立ち入り禁止の柵が並び、入れる道では警官がチェックしている。お彼岸の墓地に並ぶ墓石の1つだけに白い花が手向けられていた。理不尽にも住まいを追われ、今も帰れない人たちのことを考えると胸が痛んだ。
一方、県内の汚染土壌などの中間貯蔵施設への搬入が13日から始まった。両町内に運び込まれる汚染廃棄物は2200万m3、東京ドーム18杯分にもなる。それを30年後には県外搬出すると法律でも明記した。しかし、県外のどこに持っていくのか。「取りあえずなんとか言いくるめよう。努力はするけど、30年後のことは知らないよ」という政治の無責任さが聞こえてくるのだが…。現実的に考えてこの地を最終処分場にするしかないし、誠意を込めて地権者に粘り強く説明し、十二分な補償を行うべきだろう。宮城、栃木など5県の最終処分場建設問題も難航しているし、候補地の反対住民を「地域エゴ」とは言えないだろう。福島の「中間貯蔵施設」に運び込むのが一番すっきりすると思ってしまう。
老朽原発5基の廃炉が決まった。原発が危険なのはいったん事故が起きるとその被害は広範囲で数世代にもわたることだ。使用済み核燃料など「核のごみ」処分地選定も全く見通しがたっていない現状からも、原発の再稼動は最小限にとどめるべきではないか。
温暖化問題を考えると、その分を埋めていくのは火力よりも再生可能エネルギーだろう。
しかし、再生エネの比率が3割前後と高いEU諸国に比べ、まだまだ低い日本で「変動型の太陽光や風力はお天気次第、不安定で当てにならない。接続制限しなければ停電を引き起こすこともありうる」との批判がなされてきた。最近は「15年度の賦課金は標準家庭で月額474円、前年度の2倍になった」との批判も加わった。考えようによっては500円玉1個、脱原発のためなら安いものではないか。原発と再生エネを対立させて考えるのではなく、将来世代を考えた現実的で理念のあるエネルギー政策を期待したい。
所沢・エアコン住民投票で問われたもの
2015/03/18(Wed) 文:(水)
埼玉県の所沢市で先月、小中学校の教室にエアコン設置を認めるべきかどうかの住民投票が実施され、設置に賛成票が有効投票数の64.8%を占めた。市議会が議決した住民投票条例には「結果の重みを斟酌しなければならない」との規定があるが、その前提の有効投票数が投票資格者の1/3という条件に満たなかったため(投票率は31.54%)、藤本正人市長は今後の方針をまだ示していない。終戦前後生まれの昭和世代には窓を閉め切った冷暖
房付き教室なんかとても思い浮かばない光景だが、時代が変わったと言うことか。
この住民投票では3つのことを考えさせられた。1つは、便利さと省エネルギー( 減エネ)のバランスをどうとるかという問題だ。29校のエアコン導入に待ったをかけた藤本市長の「東日本大震災を経験し、快適さと便利さを求める生活習慣を見直すべきだ」とする主張も同調できる。おそらく、市長は3.11後の不安定な電力供給と福島原発事故による多数の被
害者に思いをはせ、電力大消費地はより多く節電・省エネを実行すべきと考えたのだろう。
対して、エアコン導入派の市民グループは近くにある航空自衛隊入間基地の騒音問題を念頭に、「エアコンがないと騒音で勉強に集中できない」と住民投票に持ち込み、市民多数の賛成を獲得した。確かに、入間に限らず横田など駐留米軍基地も含めて、戦闘機の往来や訓練などによる基地騒音は今も尋常ではない。その地域に行くと分かるが、手の届くような高さを黒っぽい巨大戦闘機が爆音とどろかせながら何機も飛んでいき、その周辺では日常的な会話すらできない。2つ目だが、わが国の基地騒音問題は沖縄県内での深刻さを見るまでもなく、この10年来行政的な対応が遅々として進んでいない。
3つ目の思いは、経済産業省が検討中の中長期的なエネルギー構成のあり方で、省・減エネルギー社会の再構築を是非とも今後の施策の柱にしてもらいたい。従来の省エネ施策は「我慢を強要せず、快適な環境を維持して実践」を基本方針としていたが、そうしたやり方でよいのかどうか。3.11発生から4年目になったが、未だに22万人余の避難生活者や行方不明者2584人もいる。そうした犠牲者に報いるため、そしてさらなる深掘りを目指す意味からも“快適な省エネ実践”はもう一度考え直してみるべきではないか。
環境大臣殿、再生エネ普及の熱意が疑われます
2015/03/04(Wed) 文:(滝)
「自分でつくった電気を使うのはわくわくする。節電はしても我慢はしていません」。2月中旬のある日、横浜市内で開かれたオフグリッド住宅の見学会に参加した。
JR東海道線戸塚駅からとことこ歩いて、田畑が見え始めたあたりにSさん夫妻の木造2階建て住宅が建っていた。昨年9月に完成した住宅の屋根には太陽光発電(PV)パネル8枚が取り付けられているが、送電線には接続されていない。「お天気が悪い日が続いたら停電するのでは?」と聞いたら、家の裏にある物置を見せてくれた。大きな鉛蓄電池が24本、「全てフォークリフトで使われていた中古品で合計27kWh蓄えられる。わが家の4日分です」「リチウム電池の新品なら数百万円するけど、中古の鉛電池なので約55万円。パネルや工事費など電気の完全自給費用はひっくるめて220 万円ほど」。
30代前半の2人、きっかけはやはり東京電力福島第一原発事故だという。「原発や(CO2を出す)石油・石炭で発電された電気を使うことに後ろめたさがあった。でも、電気は暮らしに便利。自給することでそうした思いから開放されて使える」と話す。室内にはエアコンも冷蔵庫も洗濯機もある、それでも便座ヒーターは切っておくなど節電に努めている。
本誌で好評連載中の「足元からeco!」でも感じるが、「電気は電力会社から買うもの」との“常識”から「自分でもつくってみる」にしたら視野が違って見えるのだろう。
エネルギーミックスの議論が経済産業省の審議会で始まった。再生エネも原発もそれぞれの特徴を生かして“共存”が図れると思うのだが、審議会を傍聴していて委員の構成や事務局資料など原発推進派に有利な“さじ加減”で進められているように感じてしまう。
そうした中、納得できない出来ごとが報道された。環境省が昨年12月に開いた再生エネの普及可能性検証検討会に提出した内部資料では、20年のPVの設備量は5283万kW(経産省は2369万kW)、30年の風力は2280万〜 3250万kWで経産省の620万〜1250万kWの数倍となっている。環境省が電力の広域運用を前提にして原発も昨年5月までに再稼動申請をした分で計算しているのに対し、経産省は3.11前と同じ前提で計算していることなどが原
因という。どっちの数字がより信憑性があるのか、堂々と議論を戦わせればいい。だが、国会で質問された望月義夫環境相は「数字が一人歩きすると他の省庁となぜ違うのかとなる」として資料を明らかにしなかった。国民の再生エネへの期待より、他省庁から批判されるのが怖いのだろうか。情けない話だ。
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