今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード
[過去274〜289 回までの今月のキーワード]


COP7・マラケシュ会合と米国の一国主義どうなる
 ◇ 産業界は米国抜き批准強く反対するが、この機会を利用するのも一つの策 ◇
2001/10/27(Sat) 文:(水)[Home]

 今月29日から来月9日までモロッコ・マラケシュで開催される気候変動枠組み条約の第7回議定書締約国会議(COP7)は、米国での同時多発テロ→アフガニスタンへの報復攻撃による国際情勢の不安定さから、開催が危ぶまれていたが、どうやら予定通り開かれる見通しとなった。ただ、モロッコがイスラム文化圏であることや、アラブとイスラエルが再び緊迫した情況にある中東地域に比較的近いこともあり、偶発的な事件に巻き込まれる不安から、参加者はわが国をはじめとして従来よりも大きく減る見込みになっている。

 COP7が近づくにつれて、わが国産業界(特に経済団体連合会や日本商工会議所)による、「米国が議定書に不参加のままで、日本が京都議定書を批准するのは断固反対」という見解が強まり、小泉首相や自民党の山崎幹事長らへの働きかけを強めている。今の見通しでは、COP7の政府間協議では懸案の京都議定書運用ルールが最終的に合意されて正式に採択され、2002年を目標とした発効のための条件が米国不参加のままでも整うとの見方が強く、産業界はそうした流れに日本が安易に乗るべきではないと主張する。反対している理由は、世界のCO2排出量の1/4を占める米国が不参加のままでは、温暖化対策を国際的に進める実効性に乏しく、エネルギー効率ではトップクラスにあるわが国の経済競争力をかえって弱め、国益を損なうというものだ。

 産業界のこうした主張はもっともな部分もある。
 しかし、だからといってそうした論理を貫けば、日本は米国の京都議定書不参加をかくれみのに、国際社会による温暖化対策の実質的な第一歩をぶち壊したという強い批判を招きかねない。また、一方で産業界自らの主張を本来は米国政府や米国産業界にもぶつけなければおかしい。米国は、同時多発テロ事件がおきる直前までは京都議定書問題に限らず、WTOの「貿易と環境」や生物多様性条約、生物兵器防止、地雷除去など国際社会の新たな取り組みに背を向け、一国主義政策を強く押し進めてきた。そうした方針が先日のAPECの首脳会議に見られたように、国際協調路線に豹変したのである。

 今後の温暖化対策国際交渉においても、そうした前例からみれば突然米国が政策変更を打ち出す可能性も否定できない。わが国にとって大事なのは、米国が不参加という機会をうまく利用して、今後30〜50年以上は続くと見られる地球温暖化対策を呑み込んだ強靭な経済・社会構造を作り上げていくことではなかろうか。



がっぷり組み合った四つ相撲・小泉首相 vs 全霞ヶ関
 ◇ ――特殊法人・公団等の存廃めぐり全面衝突―― ◇
2001/09/06(Thu) 文:(水)[Home]

 2002年度予算の概算要求締切り(ITや環境など重点7分野は9月末の見通し)を踏まえて、特殊法人や公団等の組織見直し問題が本格的な攻防戦となってきた。政府における通常の政策や事業の遂行では、与党で構成する内閣の方針に反旗をひるがえすことはあり得ないはずだが、この不落の砦・霞ヶ関城のピラミッド的組織が崩壊の危機に立たされるとなれば、全く別だ。
 普段はあまり仲のよくない省庁も、その垣根や大小にかかわらず一致団結、71ある特殊法人の廃止・民営化にことごとく反対、小泉首相の方針に一歩も引かず、四つ相撲を展開している。野次馬的な国民から見れば、ドラマの迫力がいまいちとなってきた「わがまま田中真紀子外相 vs 世間知らずの誇り高き外務官僚」による体力戦よりも、よっぽど面白いかもしれない。

 ただ、意外だったのは、天下り役人の宝庫と言われた石油公団の廃止方針にあの経済産業省が徹底的に粘ることなく、平沼大臣をはじめ幹部が肯定的な対応にギアチェンジをしたことだ。逆に6つの公団・特殊法人を抱える国土交通省は、当初は鼻息も荒く“実力”で阻止する対応を見せていたが、小泉首相の地雷を踏んだ格好で攻撃を受け、いまや石油公団に変わって抵抗勢力の右代表選手と見られ、徹底的に非難を浴びる対象になってしまった。これでは、経産省のような高等戦術の「名を捨て実を取る」ことも危うくなってきた。

 とはいうものの、わが国経済活動のトータル量から見ると、公団や特殊法人をはじめとする官が何らかの形で関与する活動規模は3割から4割にも及ぶという説がある。一段の景気後退が見られるなか、特殊法人等改革は「進むも地獄引くも地獄」という様相すら漂う。しかし、例えば農水省所管の「緑資源公団」(旧森林開発公団)のような、組織名とは全く逆の山間部にコンクリート道路を通すため、ほとんど投資効果のない無駄な国営事業を30年以上続けているところもあり、改革の必要性は枚挙にいとまがない。
 まさに、きびしい時代に突入したが、雨の日が永遠に続くことはあり得ず、これからの日本経済に曇り日の薄日がさしてさらに天気晴朗なり、となることを期待して、前へ前へと進みたいものである。



試される小泉改革の環境自主外交
 ◇ COP6再開会合を踏まえ、「京都議定書問題」最終局面に ◇
2001/07/05(Thu) 文:(水)[Home]

 ○2002年に発効を目指した気候変動枠組み条約の京都議定書問題が、ドイツ・ボンで今月16日から開かれるCOP6再開会合を前に混沌としている。昨年11月のオランダ・ハーグ(COP6)で合意できなかった京都メカニズムの交渉で相当な積み残し問題があるほか、資金や技術協力を約束した先進国の履行に対する途上国の不満が強まっており、これに米国ブッシュ政権が3月に打ち出した京都議定書離脱方針の収拾問題も加わり、極めて複雑な政府間交渉になりそうだ。
 川口環境相は米国に翻意を促す努力を最優先に進めているが、再開会合の成否の見通しについては包括的な全面合意が難しく、「部分的合意」にとどまる可能性があることを示唆している。

 ○国内対策の検討では、先月末までにわが国のCO2等削減目標の6%を実現すべく、経済産業省の総合資源エネルギー調査会の各部会が今後のエネルギー政策や長期エネルギー需給見通しをまとめ、また環境省の中央環境審議会も新たな対策を集約しつつある。しかし、産業界には上のような京都議定書発効が不透明な情況下での対策まとめや、米国の離脱に拘らず推進する政府の方針に不満を強めている。対して、野党4党や環境NGOなどは日本政府の米国説得最優先方針に強い批判をぶつけている。

 ○ただ、内政問題に関する積年の悪弊に対しては積極果敢な改革を打ち出している小泉首相も、こと外交面特に日米関係のパートナーシップが絡むような問題については、別人のように慎重姿勢になってしまう傾向が強いようだ。だだっ子のように京都議定書には戻らないと主張している米国に対して、最後の最後まで付き合う理解を示す一方で、米国抜きでも発効を目指すというEUとの調整役も行うという。それはそれで大事な日本の姿勢とは思うが、この対処方針を続けるかぎり、日本がリーダーシップを発揮して取りまとめた国際的な「成果」である京都議定書自体が崩壊する危険性を持っている。いま、世界では「京都」の名前がとびかっているが、その「京都」が地球を救う一歩となるのか、挫折の代名詞になるのかの岐路に立っていると言えるのではないか。

 ○京都議定書を批准するかどうかは、独立国家としての日本の権限の問題である。「2002年京都議定書発効」を実現するには、COP6再開会合で米国が参加しなくても、日本は国際合意を指向し独自に批准することを決断すべき時期ではないだろうか。小泉首相は「言ったことは実行する」というのがまさに小泉流と標榜。昨今の事態は、先の国会の所信表明での「2002年の京都議定書発効に最大限努力する」と「米国の京都議定書への復帰」は両立しない状況になっている。
 小泉首相は、京都議定書をとるか、はたまた米国をとるかを明確にすべき時期を迎えている。



スタートした高支持率・小泉内閣の持続性は
 ◇ エネルギー・環境分野も構造改革推進か ◇
2001/05/17(Thu) 文:(水)[Home]

 組閣後の世論調査支持率80%という驚異的な数字をバネに、小泉内閣が連休後、本格的にスタートした。自民党の歴代首相から見ても異例とも言える、国民からの高い期待感が集まった。もちろん、森前首相に対しての不満うっ積と10%前後だった低支持率への反動や、ご祝儀相場という要素もあると思われる。
 ただ、これだけの高支持率を得ている要因にはそれなりの材料があるからで、例えば、国会答弁や記者会見などにおいて、持論も含めて常に官僚用語を極力排し、自分の言葉で分かりやすく説明しようとする努力が、一般の人に評価されているのではないだろうか。また、小泉首相による政治・行政を変革するとの姿勢は、単なる理念の提示だけではなく、閣僚人事での田中真紀子外相の起用や年功序列にとらわれない若手の抜擢などに現れている。
 特に、感心したのは、地味だったせいかあまり大きく取り上げられなかったが、閣僚の任期について、従来のようなせいぜい長くて1年というやりかたはとらない、と明言したことだ。それによって政治家自身の責任もより明確になるだろうし、官僚側の対応も大きく変わってくる可能性がある。

 小泉首相が都市部地域の選出である点、また施政方針演説や予算委員会の論議を見ても、前内閣からの引継ぎである経済・社会の構造改革や財政改革などを前倒しで、かつ従来とは異なる切り口で積極的に取り組むことが容易に想像されよう。それらの一環として、電力・ガス事業の自由化拡大論議や規制緩和、さらには民間活力の一層の導入などが、早いテンポで具体化してくる公算が大きい。
 すでに、公共事業の本格的見直しを視野に置いた道路財源の使途の見直しや、新たな分野での経済的需要の掘り起こしを狙った環境対策の産業化などの動きが、前面に出されつつある。土地取引の流動化とともに、循環型・リサイクル都市づくりに環境創造の視点を織り込み、「都市再生本部」を発足させたのも、一連の狙いをもったものと言えそうだ。

 高い支持率を維持するためには、次々と玉出しを行う一方で、一つづつその成果を示していかなければならない。そして、都市部の選挙区では、からきしだめと言われている政治勢力地図を少しでも挽回させることが、小泉内閣の持続にとっての必要条件となる。となると、高支持率に支えられた小泉首相が最初に迎える関所は、6月行われる東京都議選の結果であり、次の関所が7月の参議院選挙ということになる。
 果たして、ふたつの関所をうまい具合に通り過ぎることが出来るかどうかによって、この内閣の運命も見えてこよう。 (水)



米国流「環境新大国主義」にどう対処すべきか
 ◇ 地球温暖化対策の京都議定書不支持表明の波紋 ◇
2001/04/11(Wed) 文:(水)[Home]

 やっぱりというべきか、残念というべきか、けしからぬというべきか。3月中旬以降、米国ブッシュ新政権は国内の政治・経済・財政全般のレビューにおいて、地球温暖化対策の国際的な協議で最終局面を迎えつつあった「京都議定書」に対して支持しない方針を打ち出した。
 これまで4月上旬までに明らかになった主要な経過は次の通りだ。
 ○3月13日 ブッシュ大統領からヘーゲル上院議員宛の書簡で京都議定書を支持しないこと、発電所へのCO2排出規制を導入しない方針を示した。
 ○3月28日 米国ホワイトハウスと国務省報道官から、京都議定書が途上国を除外しており、米国経済に悪影響を与える可能性があるため支持しない旨の発言。
 ○3月29日 米独首脳会談後の記者会見で、上記と同じ見解がブッシュ大統領から示されたとの報道。また、大統領は友好国と協議を行う意向があること、京都議定書を実行するために莫大な量の天然ガスを獲得することは意味をなさない、などの発言を行った。
 ○3月15日〜4月8日 わが国は川口環境大臣が米ホイットマン環境保護長官宛に書簡、森首相がブッシュ大統領に書簡、河野外務大臣がパウエル国務長官と電話会談を行い、米国の再考を促すとともに京都議定書への積極的参加を要請。また、4月4日から8日までの日程で政府代表団および与党代表団が訪米し、関係者と会談するとともに不支持表明の再検討を要請。

 ブッシュ政権の不支持方針に対しては、わが国やEUグループなど世界各国が強く反発しているが、今のところ米国政府は既定方針を一歩も譲らない方針を明確にしている。こうした米国の新しい対応については、国際協議中の京都議定書で一層の米国有利の条件を獲得するための戦略という見方がある一方で、米国経済の落ち込みとカリフォルニア州からさらに拡大傾向のあるエネルギー危機への悪影響回避のため、という解釈もある。
 しかし、いずれにしろ米国がこのまま突っ走れば、この7月に予定されているCOP6再開会合での国際的合意は不可能となり、同時にわが国はじめ主要先進国が目指していた2002年に議定書批准・発効も絶望的となる。そうなればこの10年辛苦を重ねてきた地球的取り組みの温暖化対策もおそらく10年は遅れることになるだろう。
 それもいいかもしれない。兆候がすでに地球上に見られている温暖化影響による自然現象の異変を、対策をサボタージュする米国だけが免れるわけではないし、思いあがった米国流大国主義がこぞって世界の指弾を受けて孤立するのも自業自得だし、環境を取り残した経済戦略が長続きせず、結局は国際市場競争において「負け組」になる可能性が大きいからだ。

 ただ、一つだけ強調しておきたいことがある。これまで、わが国は議定書交渉において米国と同じアンブレラグループの一員として、消極的な米国に常に配慮して連携してきた経緯がある。京都やハーグでのCOP6会合の際も、目立ちたがりやのEUと米国の間を必死に取り持ってきたし、途上国もわが国のそうした役回りを評価していたからこそここまで交渉も進んできた面がある。
 戦争にたとえるならば、わが国は極めて大事な米国の「同盟国」ではなかったか。そうした同盟国に事前に一言の相談もなく、自分の国の都合だけで米国流大国主義を振りまわし、いわば裏切り者同然のやり方に対して、友人としてわが国は強く直言すべきであるし、政府として何らかの具体的な措置をとるべきと考える。
 一方で、わが国がアングレラグループとして米国を信用して対外的に対処してきた責任もあるはずだ。ところが、わが国の政府の対応はありきたりの書簡外交やお願いベースのみにとどまっている。極めて残念な現実と言うしかない。



景気低迷を打破する発想の転換・経済に環境の取り込みを
 ◇ 中央省庁再編スタート後も縦割り主義変わらず ◇
2001/03/22(Thu) 文:(水)

米国ブッシュ政権体制の本格スタートをにらんで小康状態だった気候変動枠組み条約の議定書国際交渉は、3月上旬にようやくCOP6の再開会合が今年7月16〜27日までドイツのボンで開催されることが決まり、わが国など主要先進国が目指している2002年に京都議定書の発効という方針にギリギリ望みをつないだ格好となった。しかし、CO2最大の排出国の米国・ブッシュ政権は環境問題よりもエネルギー政策の優位性をベースにした対応を展開するのではないかと見られており、この先も国際交渉が難航するのが必至と思われる。
 訪米した森首相は、今月20日にいち早くブッシュ大統領と首脳会談に臨み日米の同時株安を踏まえた経済危機問題などで厳しい注文を受けたようだが、わが国が米国よりもはるかに国際的責務を果たしているはずのCO2削減問題については、最後まで米国側をただすような発言はしなかったという。関係筋によると、訪米に際しての事前の政府部内調整では地球温暖化問題での意見交換もひとつのテーマ候補にあがっていたが、最終的に落ちたようだ。
 こうした結果になったのは、おそらく首相を取り巻く旧来の発想法となんら変わっていない主要官庁の意向が反映されたものと思われるが、中央省庁の再編スタートを契機に、世界から「日本は経済だけではなく環境問題にも意欲的」と評価される絶好の機会だったのに残念なことである。

 その京都議定書の発効を前提においた政府の新たなCO2等削減方策の枠組み作りも、従来とまったく同じ省庁の縦割り主義と個別分野ごとの施策検討というやり方ですすめられている。その検討状況を見ると、経済産業省と環境省がほとんど同じテーマを審議していたり、経済省ではわざわざ別の審議会別に議論したりという形だ。それらを全部一緒に審議した方がよほど効率的で総合性も出るはずなのにお構いなしであり、審議会委員もそれが当たり前と認識しているお粗末ぶりである。
 しかも、これら審議会で現在検討中の施策作りはいわば「作文作り」の世界であり、その調整に膨大なエネルギーと時間が費やされているものの、CO2等が実際に作文されたとおりに削減されるかどうかは別問題だ。過去の実績を見てもその施策効果があがっていない場合が多い。例えば、政府は約10年前に「地球温暖化防止行動計画」において、「国民一人当たりのCO2排出量を2000年以降1990年レベル以下に抑える」と決定しているが、その実績はまったく逆のトレンドとなっている。この時の政府部内調整も、「作文」の世界ながら連日夜を徹するほどのものすごい作業だったと当時の関係者は証言している。

 いくら夜を徹する調整作業を繰り返しても(当事者のご苦労には敬意を表するが)、しょせんはまだペーパーの世界であり、実業の分野にはほとんど寄与しない。これだけ景気が低迷し新たな投資需要が見当たらず金余り現象が続いているのだから、作文の世界は時間を限定させてむしろ市場の実需の世界に結び付く「地球温暖化対応のための社会・産業構造転換戦略」のようなものを閣議決定したらどうだろう。そして新たな環境産業を興し、そのための大量の運用資金を市中にまわせるようにすれば新しい10年単位の経済需要が発生することはまちがいない。わが国が進むべき方向を担う水先案内人であるはずの主要な政治家も、世界的にすでに経済の方向が変わり国民の生活意識が大きく転換してきている、という実態にほとんど気がついていないのだから嘆かわしい次第である。
政治家や為政者による発想の転換を「将来に向けた地球と国民全体の共通の利益」という観点から今こそ強く望みたい。
    (今月のキーワード更新が遅れましたことをお詫びします)




地に足をつけた再生エネルギー導入論議が必要では
 ◇ 雪エネルギーの利活用に官民の英知の結集を ◇
2001/02/14(Wed) 文:(水)

 今年の冬は地球温暖化の進行が懸念されているにもかかわらず、気温が例年よりも低めに推移し、東京も積雪が数年ぶりに多かったほか、東北地方や上信越地方などの積雪ぶりは10数年ぶりという記録的な状況のようです。山形県などの代表的な雪国地域では、ここ数年暖冬が続き雪に対する警戒心がやや薄くなっていたこともあって、雪下ろしに関した人身事故や交通事故、家屋の被害、さらには表流水の流量が減って水不足の危機(降雪量が多く寒さがきびしいためなかなか雪が溶けない)まで指摘されているようです。

 また、何よりも大変なのは、地方で進む核家族化や高齢化とともに過疎化の影響からお年寄り夫婦の一軒家が多くなっており、こうした家では雪下ろしもままならず、専門の業者に頼むとたった2日間で10万円以上の費用がかかり、文字通りの四苦八苦が続き正常な地域社会の営みそのものの危機と指摘されています。山形県の調査によると、今冬による記録的な積雪量により道路などの除雪費用がかさみ、県下44市町村でこれまでに要した除排雪費はゆうに130億円は超え、さらにこれでも足りなくなり次々と補正予算を組む必要に追われているようです。

 しかし、一方でこうした厄介者だった「雪」を逆手にとり、資源やエネルギーとしてこれを利活用する様々な取り組みもこの約10年着実に関係者の真摯な努力により多くの成果をあげつつあります。山形県舟形町の氷室の設置や米穀の貯蔵に雪の活用、新潟県の安塚町での様々な雪をベースにした地域的取り組み、北海道の沼田町や美唄市で実際に建設されている米の大規模貯蔵と雪を冷熱に活用しマンションの夏の冷房に応用した事例など、自力で関連技術やソフト面のレベルアップを図っているケースが見られます。つい先日、岩手県の豪雪地帯にある沢内村では、廃止になった県道トンネル(全長220m)に雪を運び込み、冷温貯蔵庫に仕立て上げ農産物の出荷調整や保存用に使うという公共物のリユース的な試みも読売新聞(2月5日付)で紹介されていました。

 現在、国レベルでは地球温暖化対策の具体化の必要性が指摘され、環境省の委員会や経済産業省の資源エネルギー調査会新エネルギー部会で新たな対策の議論が行われております。風力発電やバイオマスなどの自然エネルギーの導入促進策にはスポットがあたっているものの、ところがこと「雪の利活用」については学識者委員やNGOサイドすらからも、それを指摘する意見がほとんど出ていません。おそらく、その原因は風力やバイオマスなどは日本よりも欧米で導入拡大が先行し、わが国は「後進国」だから急いで追いつく必要があるとの共通認識が背景にあるからでしょう。どうもわが国の有識者には、欧米がやっていることは極めて進歩的であり、それが理解できない人は時代遅れという固定観念が潜在的に強いようです。昨年から米国カリフォルニア州で大きな問題になっている電力危機でも、実は州の供給力には20%近い風力発電などのその他エネルギー供給がカウントされていたのですが、結果的には今回の電力供給危機においてほとんど戦力にならなかったという問題もあったようです。

 今の自然エネルギー導入拡大路線にことさら異を唱えるつもりはありませんが、もっと地に足をつけた再生エネルギー論議をして欲しいものです。前述のように、山形県ではひと冬にみすみす130億円も除排雪で消えてしまっている現実、それでもなお地域社会の営みが困難を極めている事例、雪の利活用にはほとんど国による制度的な支援が行われていない実態を見るとき、どこか歯車が狂っているとしか思えません。ある大学教授の長年の研究によると、雪の利活用は充分に経済性が成り立ち、しかもわが国の962市町村に積雪地域が及び、かつ年間積雪量の0.8%を利用してエネルギー転換に活用すると100万kWの発電所15基分に相当するという試算があるくらいで、雪を利活用すればCO2削減対策にも大きく貢献する確固たる「地域エネルギー資源」であることは間違いないようです。いまこそ官民あげた雪利活用と除融雪の効率的な仕組みづくりに取り組むべきと思うのですが、いかがでしょうか。



エネルギー・環境政策の市場経済化は万能か
 ◇ 経済性と効率性重視の後遺症を危惧する ◇
2001/01/11(Thu) 文:(水)

 21世紀という新たな時代の幕開けとともに、わが国は中央省庁再編の1府12省庁体制を6日にスタートさせました。うたい文句は「効率化・スリム化した行政」「政治主導型の確立」などとなっていますが、各省庁にいきなり2〜4人の国会議員を配したからといって30年や40年続いた省庁の対応パターンが大きく変わるとはとうてい思えません。政治家が日本の優秀なる官僚と本当に伍していくには、従来のような平均任期が半年〜1年程度という慣行こそまず改め、政策評価・判断能力のボトムアップをはかり、国の将来を憂う姿を身をもって示すことが先決ではないでしょうか。

 再編スタートに際して、「経済産業省」は仕掛かり中の経済構造改革に一層のスピードアップ、「環境省」は総合環境政策局に「環境経済課」を創設して環境政策の今後の展開に経済的措置を具体化する構えを見せ、それぞれの認識や必要性は別として、欧米流の市場経済主義をさらに強く進める方針を明らかにしました。確かに、わが国の環境政策はこれまで技術的な裏づけのある規制的手法がその中心であり、地球温暖化問題や廃棄物処理・処分のテーマのような原因者とそれによる環境影響が特定しにくいケースについては、環境コストの内部化も含めてどんどん具体化すべきでしょう。しかし、環境行政の基本線である国民の「健康保護」と「自然環境の保全」などはそもそも市場経済とは相いれない領域を持つ施策であるはずで、そうした点が経済合理性の考え方により軽視されないか危惧されるところです。

 エネルギー面から見ても環境と同様の危惧があります。昨年12月に閣議決定した経済構造計画の新行動計画では、電力やガス事業を中心に一層の規制緩和による市場競争化の促進、現行料金コストの引き下げによる国際水準並み価格の実現を追求するとしています。しかし、エネルギーは元来、貴重な資源としての役割を持ち地政学的に見ても「特殊な商品」であり、地球温暖化問題との関連からいえば価格を安くするよりもむしろ他の商品より相対的に高めにして消費の抑制を図ることが正解のはずです。長年の垢がたまったエネルギー産業自体を活性化して既得権を見直すことに異論を唱えるわけではありませんが、そのことイコール「低廉なエネルギー価格の実現」という図式にはどうしても納得がいきません。大口の需要家や経済産業省が主張するような割安なエネルギー価格が実現したからといって、本当にわが国の産業競争力が強くなり国民にハッピーをもたらすのでしょうか。

 たしかに、米国流の市場競争万能主義をベースにした欧米での電力・ガス事業の見直し政策はわが国よりも数段進展しているようです。そうした流れにわが国が取り残されないため、米国などが要求するエネルギー市場の開放に対応するためという側面のあることは理解できないわけではありませんが、自由競争の促進は一方で今もカリフォルニア州で続いている電力価格の暴騰(kWh当たりの価格が一挙に約6倍に跳ね上がる)や輪番停電、電力会社の経営危機などの異常事態が生起される可能性もあり、またその延長戦上には低所得者等は必要なエネルギーを購入できないという「弱肉強食」「弱者切り捨て」の世界が出現することも事実です。わが国でも同じような事例がありました。かつての国鉄が民営化されて採算性の悪いローカル線が次々と廃止され地方の過疎化に拍車がかかったことや、航空路線の自由化に伴いレジャー用に若者が割安で利用できるドル箱路線は便数が増えたものの、経済活動や生活に不可欠なローカル路線は採算性を理由に次々と減便・廃止されている実態など、経済原則の偏重が人々の生活を否応無しに圧迫していく様があります。

 本来、「経済」とは人々の生活を豊かにするための手段のひとつであるはずです。それがいつのまにか市場競争の推進という錦の御旗の下に目的化されてしまっています。我々は「エネルギーと環境」というテーマを通して市場経済化、効率化のスピードをわが国の歴史、文化、独自性を踏まえつつ、もう一度中長期的な視点から考えてみる必要性がありそうです。



政治主導という国政改革に期待できるか
 ◇ COP6・内閣改造・新省庁人事に共通するもの ◇
2000/12/09(Sat) 文:(水)

今世紀最後の合意の機会だった地球温暖化対策具体化のための国際的な共通ルールづくり(COP6会議)は先月25日会議を1日延長したにもかかわらず、結局「物別れ」に終わり、あらためてCOP6.5の会議として各国が仕切り直しをすることになりました。「物別れ=COP6の中断」直接的な原因は2010年頃に設定されているCO2等の削減数値にカウントする森林等吸収分と京都メカニズムに適用する上限措置を巡りEUと米国の話合いが最後までつかず、結局時間切れ。最後の閣僚どうしの膝詰め交渉で、日本は2010年要削減量△6%のうちの3.5%、米国は同じく△7%のうちの3%程度まで認められそうになったようですが、今回はこうした案が途上国との間で実質的に討議されておらず、来年5月頃に想定されているCOP6.5閣僚会議でも再交渉の起点がどこになるのか見通しが立っていません。
COP6を取材した側から見れば、CO2等削減による自国の経済的マイナスを少しでも小さいものにしようとする戦術を先進各国とも最大限駆使していたものの、そこから1歩距離をおいて、より大きな人類共通の利益である地球温暖化防止対策を前に進めるという高い見地からの共有された戦略が見られなかったのは残念でした。
端的に言うなら各国の利害という国益の前に地球を守るという「地球益」がすっかりほんろうされてしまっており、そうした意味においては今回出席した先進各国の政治家の責任は重大なものがあったと言えるでしょう。

政治家の責任といえば第2次森内閣の組閣劇も相も変らぬ派閥次元のやりとりに終始したようです。大臣任命に際しては国としての政策において今何が重大なのか、その課題にどう迫っていくのか、そのためにはこうした人材がトップになるべきではないか、という当たり前の議論がまだまだ日本の政治ではなされていません。いまだにどこかの村の世話役を決めるようなやり方が通用している永田町の実態を見ると、日本という国は本当に落ちるところまで落ちてしまう気がします。これでは、今まで通り実のところ霞ヶ関になめられっぱなしという実態は変わらないでしょう。

その霞ヶ関も来年6日から新省庁体制となります。今月は新省庁体制に関連した予算編成や税制改正の人事などが相次いで決定しますが、今のところ新省庁体制のスタートに際して、例えば旧来の公共事業のあり方や政策決定システム、縦割り行政の弊害などの1つでも大きく変革される兆しはないようです。加えて、新省庁の幹部人事も一緒になる省庁のタスキがけ人事や、国会決議を無視した形の巨大官庁から小官庁(国土交通省から環境省に幹部クラスを出向させる)への植民地的人事が平然と行われています。いったい新しいこの国の"かたち"を創るとした政治主導による高まいな理念はどこに行ってしまったのでしょうか。



地球温暖化対策ルールを決めるハーグ会議の行方
 ◇ ―COP6のあとを日本はどうすべきか― ◇
2000/11/08(Wed) 文:(水)

 オランダのハーグで13日から2週間開かれる気候変動枠組み条約第6回締約国会議(COP6)において、京都議定書(1997年12月採択)の運用ルール策定に国際的合意が成立するかどうかは五分五分と見られています。きびしい交渉になると見られている理由は、温暖化対策としての炭酸ガス(CO2)の削減が、今後2010年頃までの先進各国間の経済競争を左右する一方で、政府の貿易ルールなどにも影響を与え、さらには国民生活のありようにも変更を迫る可能性があるからです。

 一方、圧倒的多数の参加国となる途上国側は「地球温暖化の原因の大半は先進国による経済活動」との共通認識の下、従来以上の追加的支資金や技術協力等を要求するとともに、先進国によるCO2削減ルールの具体化にきびしい注文をつけています。
 つまりCOP6の対立構造は先進国VS先進国、先進国VS途上国というもつれた糸のようなものです。かつて地球温暖化問題の重要性を見抜いていた故竹下登元首相は「世界各国がチエを出し合って地球の使用料のようなものが必要になる」と語ったことがありましたが、そこまで各国が共通認識を持つまでにはまだ相当時間がかかると思われます。

 このCOP6で決まるであろうCO2削減のためのルールが国内のエネルギー政策や環境政策、農林業政策、都市政策などに大きなインパクトを与えるとにらんで、通産省や環境庁などは新たな政策措置の検討を急いでおり、関係する審議会や委員会は関係省庁でも10をゆうに越えるほど存在します。これら審議会等はCOP6が終わると次々の国民や企業に対して、ああすべきこうすべきという対策メニューを示すことになります。

 ところが、COP6まで1年以上にも及ぶ国際交渉をしながら関連事項の情報提供や情報公開は極めておそまつです。これまでの国際交渉用の議長テキスト等は、合計すればおよそ200ページ以上にのぼると見られますが、日本語をして公表されているのはせいぜい1/20以下に過ぎません。英文では国際機関が随時公表しているといいますが、いったいどれだけの人がこれにアクセスできてそれをきちっと理解できるというのでしょうか。

 地球温暖化問題には、やたらと英語や略語が以前から使われることが多い。例えば「CDM」。これを略した日本語が「クリーン開発メカニズム」とされているがこれでもわかりにくい。極めて限られた学者や専門家は理解できても、一般の人がそれを咀嚼するのはとうてい不可能と思います。最近は報道機関向けの記者会見でもナマの英文資料が出され、理解できないのはお前たちが悪いといわんばかりです。ちょっと待ってくれ、私は欧米人ではなくレッキとした日本人なのだと歯ぎしりをする場面が多いのです。 お役人が不自由しない英語をマスターしたのも我々の税金ではないかとブツブツいいたくもなります。

 地球温暖化問題の重要性が指摘されて約10年経つが、国民一般の関心はむしろ後退気味と言われる。その原因は「京都メカニズム」などに関する専門的な技術論に国際交渉が陥り過ぎているという側面もありますが、もう一つはひと握りの専門家のみにしか通用しない情報提供と節目節目の交渉状況をわかりやすく翻訳・加工して情報開示を行う努力を環境庁がサボっているという単純なことにありそうな気がするのだが、読者諸兄姉はどう思われるでしょうか
                     (今回は長文になって失礼)



新省庁スタート目前に、問われる行政の自己改革
 ◇ 組織体制、人事など進行中。分野横断的テーマに成果を ◇
2000/10/10(Tue) 文:(水)

 来年1月6日からスタートする国土交通、経済産業、環境など1府12省庁の再編を目前に、先月頃から既存官庁の引っ越し準備、組織体制、人事などが急ピッチで進められています。先進各国の中でも指折りといわれる優秀な官僚集団が新しい革袋にふさわしい発想と政策展開、すなわち自己改革によって沈みかけている日本の「かたち」を再興してもらいたい、そんな期待感が多くの国民の普通の気持ちでしょう。

 ところが、長年シミついた官僚集団の習性はそう一朝一夕には変わらないようです。厚生省と労働省は新しく「厚生労働省」となりますが、この省の事務次官室をどのフロアに置くかでもめ、結局双方の省がどちらに吸収合併されたとの印象を避けるため、いまあるそれぞれの事務次官室を壊して双方の顔が立つように両省が入ることになるフロアの真ん中に新しい部屋を置くことで合意したといいます。

 目くじらをたてるほどの話しではないといわれればそれまでですが、一般国民からみればいまある部屋を改装して活用すればそれで済むのに、となるわけです。しかし、こうした実態を見ると中央省庁再編の原点がすでに置き忘れられているという気がします。また、新省庁の人事も水面下で進められており、現在は事務次官クラスがほぼ終わり局長クラスの配置の折衝になっているようですが、ここでも大官庁による既得権益の確保や他省への送り込みが様々に画策されているようです。

 エネルギーと環境問題はいうまでもなく省庁横断的なテーマであり、例えば道路財源となっている自動車諸税や石油関係税一つをみても、旧態依然の使い道をどう変えていくかという視点からの自己改革が早急に求められているはずで、そうした対応にこそ省庁再編の意義を示して欲しいものです。



グリーン税制と公共事業の見直し
 ◇ 本格的な環境税制導入の先がけとなるか ◇
2000/09/07(Thu) 文:[Home]

 来年1月からスタートする1府12省庁体制を前提にした2001年度予算の概算要求が先月末大蔵省に提出され、関係省庁によるエネルギーや環境関連施策がこれまで以上に重点化された。その背景には、先の通常国会で成立した循環型社会関連6法を具体的に展開する必要性や、今年11月に開催される気候変動枠組み条約の締約国会合を踏まえ国内対策の加速化が迫られるという認識があるようだ。
 概算要求とともに提出された来年度の税制改正要望では、自動車に関するいわゆるグリーン税制導入が注目される。昨年は運輸省、環境庁、通産省の思惑が一致せず結局実現しなかった。しかし、今年は石原都知事による例のディーゼル車追放宣言→税制措置含む国を上回る規制の実施方針という強力な援軍に恵まれ、3省庁が足並みを揃え現行自動車税について排出される汚染物質の多少に応じて重課または軽課するという仕組みを一致して要望している。これが実現すると、わが国でもようやく環境対策の度合いに応じて経済的負担を課すという環境税制導入の先がけとなる。
 一方で、自民党は政治課題にもなっている公共事業の取捨選択を予算措置とともに年内までに決着させる作業を進めているが、その基準では「時間軸」を重視しているだけで環境保全面からのモノサシは何も用意されていないという時代遅れ認識がまかり通っている。しかも、これら公共事業を支える財源は石油関係税などこれから環境税制を検討する際に避けて通れない見直し問題を抱えているのにである。
 わが国には「省あって国なし」という“病”がまたぞろ見られそうだ。



夏本番でエネ政策再構築も本格審議へ
 ◇ 気になるのは全体の調整機能 ◇
2000/08/02(Wed) 文:清水

一部の学者が指摘するように地球温暖化による兆候が現れているのか、今年の夏はことのほか暑い。夏らしくなることは、経済活動にはプラス効果をもたらすようだが、それにしても暑い。この暑さを多少でも緩和するために、社会の慣行として是非実現して欲しいことの一つに「ノー背広」「ノーネクタイ」(せめて6〜8月)がある。通産省は省エネルックを推奨しているが、それよりも企業活動や役所間でこうした略式を早く当たり前にして欲しいものである。極めて悪評の高い「公務員倫理法」よりも、21世紀の環境とエネルギー制約を考えるならば、社会的な意味合いがよほど高いと思われるのだが…。そうした省エネルギー対策のあり方も含めたエネルギー政策構築のための本格審議が総合エネルギー調査会の総合部会・エネルギー政策WGを中心に8月から始まった。関係する委員会等は石油開発部会、原子力部会、需給部会、省エネルギー部会、新エネルギー部会など5つ以上にものぼる。ところが、これらの事務局は、それぞれ通産省資源エネルギー庁の関係する原課が担うことになっている。本来であれば、同庁の「企画調査課」が総合調整機能を果たすと思うのだが、その組織名の如く「企画調整」の機能は認められていない。総合的な調整がもっとも必要と思われる今回の検討におりて、その役割を果たす組織がないというのも不思議な話しである。



第二森内閣フラフラ発足――首相は環境オンチ?
 ◇ 川口氏の環境庁長官就任 ◇
2000/07/06(Thu) 文:[Home]

 総選挙結果を受けて自民、公明、保守3党による第二次森内閣が
スタートした。衆院選では大敗した自民党が誰も責任をとらない姿
でわが国の新しい内閣が生まれるという国際社会から見ても不思議
な構造がまかり通った。平成における新無責任時代の始まりかもし
れない。
 今回の組閣でもう1つ不思議な現象が通産省OB(退職時は環境
立局担当審議官)の川口順子氏が環境庁長官に就任したこと。
 ほとんどのマスコミは「森独自カラー発揮の民間人登用」ともて
はやし気味だが、ご本人を本当に「民間人有識者」と認識する人が
どれだけいるだろうか。確かに退職して7年経ち大手企業に在籍し
ていたのは事実だが、それ以前の経歴を見ればレッキとした「官僚
のOB」であることは衆目の一致するところと思う。この人事に森
首相がどんな意図を持っていたのかしらないが、典型的な経済産業
官庁のOBが政策展開としては対局にあるべき環境行政のトップに
座るというのは国際的にも極めて異例だ(本人の評価は別として)。
現実の行政を見ても、循環型社会づくり、環境税制問題、地球温暖
化問題への対応など多くの競合する政策課題が山積しており、それ
ぞれの立場と役割からの掘り下げた国民的議論が必要な時に、経済
産業官庁による「囲い込み」と映るような森首相の今回の任命はう
なづけない。
 11月に予定されている「COP6も川口長官が仕切ることにな
るわけだが、森首相はどうも環境政策の重要性がわかっていない"
環境オンチ"ではなかろうか。



これも問われる――景気対策重視か環境保全優先か
 ◇ 総選挙公約に登場した循環型社会と環境税、景気回復の矛盾 ◇
2000/06/08(Thu) 文:[Home]

  3年半ぶりの衆院解散により6月25日投票が決定。与野党とも
 選挙公約を揚げこの先数年間に展開する国政への「民意」を汲み
 上げるべく激しい議論を展開している。
  今回の総選挙では景気対策と財政再建、介護保険など福祉対策
 などが重要な争点となっているが、国の安全保障や経済社会活動
 に直結するエネルギー問題や危機的様相と指摘される地球環境問
 題とて例外ではあり得ない。
  特に両テーマに共通する政策として環境税制の導入が主要政党
 により打ち出されており、選挙後においては大蔵省等が指向して
 いる消費税率のアップとともに、その是非を巡って一大政策論争
 が展開されるであろうことは必至の情勢だ。
  関連して道路関係税に対するグリーン税制や石油などエネルギ
 ー関連税の見直し論議も避けられない。
  しかし、先の国会では中長期的な循環資源型社会づくりに欠か
 せない新しい制度として関連6法が成立して国をあげて環境保全
 施策の強化に取り組むことになった。
  クールに考えると、景気対策とCO2排出抑制のための環境対
 策は明らかに二律背反の関係にある。景気回復のための経済・財
 政措置はほとんどの場合、結果としてCO2排出増をもたらすこ
 とにつながるからだ。わが国の場合、これまでこうした基本的な
 二律背反の事態にどう対処していくべきかという「民意」を真剣
 に問うてきたことがなっかた経緯がある。
  望むらくはそろそろそうした問いかけと論争を真剣に展開して
 もらいたい。



環境税制論議と企業等の自主的取り組み
 ◇ ――対策の科学的な費用対効果分析こそ重要では ◇
2000/05/11(Thu) 文:[Home]

     既存の自動車関係諸税に環境負荷の度合いを織り込もうという
    グリーン税制導入論を皮切りに、大蔵省、自治省、建設省、通産
    省、環境庁などそれぞれの省庁の思惑がぶつかる形で環境税論議
    が展開されはじめた。裁きの土俵は当面政府の税制調査会になる
    見通しだが、地方自治体側は産業廃棄物処理対策などを念頭に自
    治体側の独自財源確保の一環として、国による一元的な仕組みに
    構築強く抵抗する構えだ。一方、通産省は着手したエネルギー政
    策再の観点から、CO2排出抑制と炭素税のあり方も重要テーマと
    位置づけている。

     また、COP6で詳細が決まる見通しの気候変動枠組み条約京
    議定書のCO2削減メカニズムをにらんで、環境庁・中央環境審
    都議会は検討チームにより税制を含む経済的措置の導入、規制的
    措置、自主的取り組みなどの国内対策を検討中だ。このうち自主
    的取り組みの強化には産業界が入り口論で強く反対しているが、
    所管している通産省への“気がね”という側面も否定できない。

     問題は税制導入にしろ規制や自主的取り組みにしろどれだけの
    費用対効果が期待できるのかなのに、各方策に関して科学的な裏
    づけのある総合的な調査・分析がなされていない。相変わらず自
    分の田にいかに有利に水を引くかにとどまっているように見える
    のだがどうだろう。



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