[過去289〜304 回までの今月のキーワード]
環境税制論議と企業等の自主的取り組み
◇ ――対策の科学的な費用対効果分析こそ重要では ◇
2000/05/11(Thu) 文:
水[
Home]
既存の自動車関係諸税に環境負荷の度合いを織り込もうという
グリーン税制導入論を皮切りに、大蔵省、自治省、建設省、通産
省、環境庁などそれぞれの省庁の思惑がぶつかる形で環境税論議
が展開されはじめた。裁きの土俵は当面政府の税制調査会になる
見通しだが、地方自治体側は産業廃棄物処理対策などを念頭に自
治体側の独自財源確保の一環として、国による一元的な仕組みに
構築強く抵抗する構えだ。一方、通産省は着手したエネルギー政
策再の観点から、CO2排出抑制と炭素税のあり方も重要テーマと
位置づけている。
また、COP6で詳細が決まる見通しの気候変動枠組み条約京
議定書のCO2削減メカニズムをにらんで、環境庁・中央環境審
都議会は検討チームにより税制を含む経済的措置の導入、規制的
措置、自主的取り組みなどの国内対策を検討中だ。このうち自主
的取り組みの強化には産業界が入り口論で強く反対しているが、
所管している通産省への“気がね”という側面も否定できない。
問題は税制導入にしろ規制や自主的取り組みにしろどれだけの
費用対効果が期待できるのかなのに、各方策に関して科学的な裏
づけのある総合的な調査・分析がなされていない。相変わらず自
分の田にいかに有利に水を引くかにとどまっているように見える
のだがどうだろう。
循環型社会への制度づくりと改めて問われるわが国のエネルギー政策
◇ 省益やシガラミを超えた独自性のあるポリシー必要 ◇
2000/03/01(Wed) 文:
水[
Home]
ドイツの循環経済法制定が先進国をアッと言わせてからようや
く3年以上経って、わが国も今国会で「循環型社会基本法案」の
枠組法をはじめ、個別法として「再生資源利用促進法」「廃棄物
処理法」の改正や「建設工事資材再資源化等」の新規立法化を図
る。
衆議院の解散風は2000年度一般会計予算の成立を見越して
ますます高まりつつあるが、新たな制度化論議も省益やこれまで
のシガラミを排した、せめて10年先くらいを見越した日本発
“循環経済社会法”になって欲しいと思うが…。すでに1992
年に開かれた地球サミットのアジェンダ21では「環境と経済の
完全統合化」が世界共通の行動理念・計画として採択された経緯
もある。
一方、約37年にわたって地元で推進・反対の抗争が続いた中
部電力の芦浜原子力新規立地が白紙撤回となり、日の丸原油の確
保として自主開発原油確保の象徴だったアラビア石油の権益延長
もノーの結論となった。
そして3月21日には戦後の9電力体制を今日まで支えた独占
的電気事業が一部自由化され、市場競争化の世界に入る。米国を
筆頭とする経済のグローバリズムをまともに受けたとみられるが、
本当に食糧と並んでエネルギーの安全保障は大丈夫か、CO2を
はじめとする地球環境問題に対応していけるのか不透明な材料が
多い。自然エネルギーの導入加速化のための対応も関係機関の利
害調整に時間がかかりそうだ。
自然エネルギーと原子力、そして公害と環境問題
◇ 多くの問題に対する優先順位の確立を ◇
国会は荒れ模様だが、解散前には正常化すると思われる。この国
会には今後の環境問題やエネルギー政策のあり方を左右する法案
提出が予定されており、政治の空白には気がもめる。
超党派国会議員約260人による自然エネルギー促進議員連盟の活
動が活発になる一方で、原子力の新円卓会議や長期計画策定会議
では、「脱原発シナリオ」づくりの議論もでている(おそらく脱
原発の非現実性シナリオになる公算大だが)。
一方で、尼崎公害裁判の“画期的”な判決によって、未だに解決
していない大気汚染公害(ひいては自動車排ガス問題→ディーゼ
ル車の是非論)も賑やかになりそうだ。足元の公害問題に加えて
地球温暖化対策でのCO2排出権論議も盛んになっているが、そ
れらの問題をいっペンに解決するのはどだい無理な話しであり、
タイムスケジュールの伴った優先順位づくりこそ今必要ではなか
ろうか。
新世紀に向けた助走の年、環境・資源エネルギー・コンピュータ社会
◇ ――環境問題をより広く・深く・多面的に捉えてみたい ◇
2000年という節目に存在する同時代の皆さん、新年おめでとう。
今年も「エネ環net」をよろしくお願いします。
その節目の年の第一報は「雪」に注目しました。偶然ですが、毎
日新聞元旦の山形県内版トップ記事も雪の利活用特集でした。
やっかいものだった雪を冷暖房や米などの備蓄のためのエネルギ
ーに活用しようという発想です。
雪の冷熱利用は当然ながらCO2を出さず地球環境にやさしいわ
けですが、それにとどまらず、エネルギー確保を従来のような大規
模拠点集中供給型から文字通り地域分散型方式に転換しようという
ものです。
同時に、こうした対処は今までの地域社会における生活スタイル
や経済構造をも変える可能性を持っています。環境問題への対応が
きたるべき21世紀の世の中を変えると指摘されていますが、より広
く、深く、多面的に捉える試みが地方の片隅ですでに始まっていま
す。
「循環型社会元年」というキャッチフレーズも、予算措置の多寡
だけではなく、政策目標や哲学を大きく広げて欲しいものだと思い
ます。
参考リンク:http://www.enekan.net/cgi/closeup.htm
21世紀に向けてジャンプするか循環型社会づくり
◇ 自民・公明・自由3党の新法調整、石原知事の張り切りぶり、モントリオール議定書締約国会合 ◇
きたるべき21世紀は真に環境の時代という学者もいる。政府与党もそれを意識してか「循環型社会形成法」なる法律制定を急ぎはじめた。一方で、石原知事の我が道を行く式の「ディーゼル車NO作戦」も、どこまで本気か疑っていた自動車業界を慌てさせはじめた。循環型社会づくりからいえば、自動車が必然的にもたらしている環境汚染や交通事故、地域社会へのマイナス影響は見逃さられるはずもなく、石原知事はむしろ国より一歩先んじて張り切っているのかもしれない。
また、オゾン層の修復に50年以上はかかるといわれながらも、今回のモントリオール議定書会議では代替フロンの生産全廃までは決定できなかった。このフロンの世界はまだ循環型スタイルにはなっていない。一方、資源の循環的な利用にもっともふさわしい新エネルギーに関して、通産省がその導入普及を一段と加速させるため、初めて部会を設置した(ショートWeekly 欄)。
参考リンク:http://www.enekan.net/cgi/closeup.htm
エネルギーの大競合時代と環境問題
◇ 電力もガスも石油も垣根なしの時代に突入するが・・・ ◇
現在の電気需要の約30%を来年3月から自由化するという電気事業の部分自由化ルールが最終的に決まり、制度に必要な関係省令、ガイドラインが告示された。従来は電力会社に対等な競争相手がいなかったが、今後は自分で顧客を見つければ一定使用規模以上の電気供給は誰が行ってもよいことになる。
もちろん、国内のガス事業や石油会社、鉄鋼会社さらには商社と組む米系企業もその市場参入を担っている。第3レポートにもあるように、一方で間近に迫った燃料電池の商用化によるエネルギー・自動車業界などの流動化も予想されている。すなわち、わが国もエネルギーの大競合時代を迎えることに。しかし、他方で第一レポートにもあるように「循環社会法」の制定が地球環境など環境問題の解決に不可欠という認識も強まりだした。この新しい制度では、エネルギーという貴重資源や環境的資源の利用のあり方まで踏み込んでいないようだが、環境問題の改善にとって明らかにマイナス要因となる、エネルギー競合化時代の到来→価格引き下げ圧力という二律背反現象をどう解釈するかの問題にいずれぶつかることになりそうだ。
参考リンク:http://www.enekan.net/cgi/closeup.htm
原子力と自然エネルギーの共存
◇ どうすれば“戦力”になるか共存の道を探る時期 ◇
茨城県東海村での臨界事故により日本のエネルギー政策の中核としてきた原子力推進路線に暗雲が立ちこめている。東海村の臨界事故と原子力発電の安全性には異質なものがあるのは事実だが、原発立地市町村をはじめとして潜在的な“原子力アレルギー”の強い一般国民にはそれを理解してもらうのが簡単ではない。
一方、国会では東海村事故を踏まえた「原子力防災対策特別措置法案」と「原子炉等規制法の一部改正案」が衆院を通過するとともに、超党派の議員約220人が「自然エネルギー促進議員連盟」を正式に立ち上げ、今後自然エネルギーの導入促進法や電力会社による買い取り義務づけ問題などをテーマに、活発な活動を行うことを打ち出した。今週号の特別レポートでも、神戸大の阿部教授が関連するテーマについて問題提起されている。
通産省や電力会社も自然エネルギーのマイナス面にのみ目を向けるのではなく、どういう活用の仕方であれば立派な“戦力”になるか、そのためのコスト分担方法は?などなどそろそろ一緒になって共存の道を築く時期にきている。多くの人は、自ら使っている電気の約40%も原子力に依存していることはなんとなく知っており、それを東海村事故があったから止めるべきとはおそらく思っていないのだから。その方が社会全体としての様々なリスクも軽減されるはずである。政府・与党は他方で「循環社会法」という法律の制定準備も進めているし・・・・・・。
参考リンク:http://www.enekan.net/cgi/closeup.htm
臨界事故と環境問題
◇ どうして原子力だけが特別なの? ◇
わが国では「起こるハズがない」といわれた原子力の臨界事故。政府はこのほど、エネルギー政策の根幹に関わる事態との認識の下で、事故発生の際の対処とは別人のような迅速さで、「原子力災害対策特別措置法案」や「原子炉等規制法の一部改正案」の国会提出、さらに原子力発電所などの立地する地域に「緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)」などを整備するための予算約1,300億円を2次補正予算案に計上した。
地震や台風被害などこれまでも多くの災害・事故はあったがこの種の対策としては異例の“特別扱い”である。しかし、JCOのある茨城県東海村の住民にはまだまだ健康不安や商売の不振、いわれなき中傷が続いており、事態の収拾にはまだほど遠いのが現状だ。
法制化を決めた原子力災害対策法は、かつての「絶対安全神話」を根本に転換したものだが、その法体系は依然として環境関係の法制度傘下には入らないという“特別扱い”を踏襲している。つまり、東海村事故であれだけ放射線被曝被害など地域の環境問題として注目されたにもかかわらず、環境関係の法律や所管とは別の世界で今後も対処されることになる。一方で、原子力発電の推進は、CO2削減など地球温暖化対策にとって絶対不可欠な方策と位置づけられ、環境問題への大きな寄与が強調されているのに、なぜ環境関係の法律が及ばないという特別扱いが今後も続くのか、どうしても理解ができないのだが…。
【今月のキーワード 最新版】