週刊「エネルギーと環境」 毎週木曜日発行

今週の注目記事


No.2830.07.10




第1レポート次の記事

…頑張る人だけが取り組むというモデル事業的対応の脱却が必要

環境省新幹部、脱炭素・資源循環・自然再興を一体推進(上)



 7月1日付で人事異動が発令された上田康治事務次官ら環境省幹部の共同会見が4日、行われた。上田氏のほか秦康之大臣官房長、白石隆夫総合環境政策統括官、関谷毅史地球環境局長、大森恵子水・大気環境局長、堀上勝自然環境局長、角倉一郎環境再生・資源循環局長、小田原雄一環境再生・資源循環局次長が脱炭素化とGX、自然再興、資源循環など重要課題への対応を語った。なお、経済産業省は幹部就任会見を実施していない。(略歴は2829既報)

上田次官:分かりやすいメッセージの継続発信
事務次官に就任した上田康治氏は「現在の施策の柱は持続可能な社会づくりと人の命と環境を守るという二つの柱であり、そうした路線をしっかりと堅持し、さらに一歩進めるように頑張っていきたい」と基本姿勢を指摘した。前者については、「頑張る人だけが取り組むというモデル事業的なものではなく、次の段階に進展し普遍化していかないといけない。今まで関心のなかった多くの人にも参加してもらうような行動変容を起こすことでカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブを必ず実現できる」と語った。
施策を普遍化させるためには、環境省が何をやろうとしているかの明確なメッセージを国民に発信していく必要があると強調。環境省は多くの審議会で報告書をまとめている。その報告書や答申のポイントはどこで具体的にどうしていきたいかを短い言葉でわかりやすく伝えることで、多くの国民や事業者の協力を得られるはずという。
例えば脱炭素先行地域制度を挙げる。まず先行地域を100ヵ所つくり、それを拠点にして全国に脱炭素ドミノ現象を起こすのを目的としている。そろそろその脱炭素ドミノとは何かを分かりやすく示す時期と指摘。そうすることで参加企業のビジネスチャンスや自治体として進むべき姿が明確に見えてくる。あらゆる関係者がいろいろ創意工夫して環境省が思っている以上の効果を出すことができるとの期待感を示した。ちょうど100ヵ所選定というゴールが見えてきた今の段階で、関係者によるさらなる創意工夫された脱炭素ドミノを示すことにつながり、26年度概算要求に向けそうした新たな予算獲得に連動させたいという。
 一方で、米国トランプ政権による相次ぐ化石燃料利用推進や気候変動対策の大幅後退にも言及。「これにも分かりやすい我が国からのメッセージが大事。日本はこれまでの方針を堅持して進めていくという揺るがない基本方針を国内外に継続して発信していく」と強調した。
新次官の指摘する「分かりやすいメッセージ」はその通りだが、最近環境省の重要な発信もので特に目立つのがカタカナ語や英語表記の乱発だ。分かりやすさの出発点は何よりも言葉の意味の理解が先だろう。カタカナ語の不得意な高齢化社会の下で一見かっこうよい英語的表記の乱発は一日も早く是正して欲しいものである。


(以下については本誌2830をご参照ください)



特別寄稿 次の記事 前の記事

〜スペインの電力システムの課題

イベリア半島大規模停電の要因と対策を見る
    [JERA Global Institute 中村 博子]


 2025年4月28日(CEST)、スペインとポルトガルがあるイベリア半島全土で半日以上にわたる大規模停電が発生した。6月17日に公表された政府の調査報告書によると、欧州本土から伝わった系統動揺(周波数の乱れ)と、その直後に起きたスペイン南西部の太陽光発電所(PV)に起因する動揺によって系統内の電圧が急上昇したことが引き金となって、PVを中心に2.2GWの電源が停止した。その後、上昇し続ける電圧を制御できず、出力が5秒間で15GW急落し、系統内の周波数が急降下したため、イベリア半島全域にわたる大停電に至った(次頁図1)。
 今回の大停電は、スペインの系統運用上の課題が露呈される形となった。

需要100%を再エネで充足、系統運用に課題
スペインでは、停電日の前週にも需要の100%を水力、風力、太陽光の再エネで満たしており、このような需給バランスは珍しくない。停電後の世論調査でも、回答者の44%以上が停電防止のためには系統の強靭化が必要であると答えているが、再エネの導入拡大に否定的な声はあまり聞かれなかった。前週の4月22日には、レプソル社のカルタヘナ製油所での電力供給遮断に伴う生産停止やマドリッド近郊での電力供給遮断による鉄道の運転見合わせなどが報道されており、系統の不安定さは既に顕在化していたようだ。
今回の事故調査の結果、系統運用事業者のREEが停電前日に電圧調整電源として稼働要請したガス火力から対応不可の回答を受けていたにも関わらず補充せず、当日はPVが集中する南西部で電圧変動の制御が可能な電源が不足していたことが判明しており、このような需給運用が常態化していた可能性がある。また、電圧上昇時に稼働要請した電源もスタンバイしておらず対応が間に合わなかったことや、多くの同期発電機が電圧調整可能なモードで運転していなかったこともわかってきた。
 事故を受けて、6月に政府の市場競争委員会(CNMC)がグリッドコードを改正し、これまでは運用上対象外となっていた再エネ電源にも周波数や電圧の調整を義務付けたほか、待機の義務化や稼働要請に応じなかった時のペナルティが導入されるなど、制度が見直されている。
 さらに、多くの電源が系統運用事業者から可視化されていない状態だった反省から、経年電源のデジタル機能更新のためにリパワリングを促進する制度が、6月24日に発効した政令(デクレ7/2025)に盛り込まれた。



(以下については本誌2830をご参照ください)


ジャンル別週間情報
前の記事

CO2等排出量取引の詳細設計開始、年内まとめ

GX産業集積でコンビ再生型・DC集積地域公募へ

環境省、PFOS等を水道水質基準対象に追加

千代化、工場設備活用し需給調整市場で取引開始

東北電力・新仙台火力のハヤブサひなが巣立ち




戻る
【TOP】 【今月のキーワード】 【エネ環ダイジェスト】
【書籍紹介】 【最新号見出速報】 【今週の注目記事】 【記事データベース】
【こぼれ話】 【省エネ・新エネ】 【出版物案内】 【本誌紹介】 【会社概要】 【リンク集】
ML> m">【リンク集】 ML> ML>