官邸主導で今年6月に策定を目指す「クリーンエネルギー戦略」には、ロシアが引き起こしたウクライナ戦争によるエネルギー安全保障問題や国内の電力需給逼迫など、直近の激動するエネルギー情勢への対応を組み込む方針だ。戦略策定の中心となる経済産業省は、中長期の脱炭素に向けた移行と同時に、短期間で脱ロシア依存を実現する戦略を早急に検討する。
■石油ショック時以来の大胆な構造転換必要と
経産省は4月14日、クリーンエネルギー戦略検討合同会合(座長;白石隆・熊本県立大理事長)を開いた。会合ではエネルギー安全保障、安定供給確保に向けた政策の方向性を整理した。
事務局はウクライナ危機の長期化を見据え、エネルギー安全保障の確保が諸外国でも改めて重要課題に浮上していると説明。欧州は短期的にロシア依存を急速に低減させ、ガス供給先の多角化、原子力の有効活用などを進める方針という。国際的な資源・エネルギー価格高騰と円安進行によるエネルギーコストの負担増が当面は継続するとの認識の下、我が国においても石油ショック時以来の大胆な構造転換を進める必要があると指摘した。
なかでも日本と欧州連合(EU)は、資源保有国である米国、カナダや安定した一次エネルギー自給率を確保できている英国とは異なり、状況が深刻との危機感を示した(次頁表)。日本とEUは脱ロシア依存を早急に進める必要があり、これまで以上にエネルギーコストの上昇を前提にせざるを得ない。ただ会合では、コスト上昇をできる限り抑制する政策の総動員が必要との共通認識も示された。
■保坂長官、直近のエネルギー国際情勢を分析
保坂伸資源エネルギー庁長官は同日の会合で、「今回のウクライナ危機は炭素税もそうだが、平時は価格に出てこないエネ安全保障リスクが突然発生、化石燃料の価格へ反映されていると理解してほしい」と強調した。
また、「石油、石炭、天然ガスの中で、世界的に供給体制で一番ゆとりある化石燃料は石油だ。世界的に供給は足りているが、WTIなどの原油市場価格が1バレル当たり100ドルを超えているのは金利・株価の上昇が重い上に投機資金が原油市場へ流れ込んでいるから。100ドルを挟みその前後5%で揺さぶられながら投機筋が儲け続けている状況だ。原油価格を下げるには増産余力のある中東諸国の協力が必要だが、産油諸国は市場への影響を維持するため、OPECにロシアなども加えたOPECプラスの枠組みを優先していることから、なかなか増産には応じない」との認識を示した。
一方で保坂長官は、石炭価格の高止まりは脱段素の影響が大きいとも指摘。豪州やインドネシアなどの資源国は石炭増産の余裕があるものの、世界的なESG金融の影響で供給体制強化へのファイナンスがつかない。そうした状況下で、ドイツは国内のCO2を増やしてまで石炭回帰を進めている。しかし、脱石炭を進めてきていることもあって、短期に国内の石炭供給体制を回復させるのは相当困難だという見方を示した。
(以下については本誌No.2672をご参照ください) |