東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生から12年を迎えた3月11日、福島市で開かれた「東日本大震災追悼復興祈念式」(福島県主催)に出席した岸田文雄首相は、追悼の辞で「引き続き福島の本格的な復興・再生、東北の復興に全力を尽くす」と改めて復興への決意を述べた。
■大熊・双葉町一部避難解除、海洋放出明示せず
祈念式典では、岸田首相が原発事故による帰還困難区域で葛尾村、大熊町、双葉町で特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除され今春には浪江町、富岡町、飯館村で解除が見込まれることや、4月1日に福島国際研究教育機構(F―REI)を設立することなどを成果として表明。今後の課題として、▽復興拠点外の帰還困難区域に関して法改正して引き続き対処、▽国が前面に立った福島第一原発の安全かつ着実な廃炉と帰還に向けた生活環境の整備や産業再生支援――などを挙げた。
ただ同原発で発生しているALPS処理水の海洋放出に関しては触れず、同日行われた記者会見で言及。岸田首相は「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないとの方針は順守する」と話す一方で、処理水の海洋放出は「決して先送りができない課題」とも指摘。「政府が海洋放出を見込む今春から夏頃に向けて、IAEAとも連携して情報発信を行い、漁業者など地元の懸念に耳を傾け、丁寧な説明と意見交換を重ねていく」と語った。その段取りや判断のあり方については、明言を避けた。
■計5日間の複合災害強調、改正法軸に先行除染
また内堀福島県知事は13日に会見を開き、福島県の被災は3月11日だけではなく最後の水素爆発が起きた15日までの計5日間の複合災害であることを強調。政府に対し復興・再生への取組強化を改めて求めた。県がその柱に据えるのが、下記の7課題だ。2月25日に開かれた福島復興再生協議会で内堀県知事がこれら課題の実現を強く求めた。
@は、「特定帰還居住区域」の創設が福島復興再生特措法の改正案に盛り込まれたことを「帰還困難区域全体の解除に向けた大切な一歩」と評価する一方、帰還意向のない人々の土地・家屋等の取り扱いなど依然として様々な課題が山積していることを指摘、全ての避難指示解除に向けて、国が最後まで責任を持って取り組むよう強く求めた。
この改正法案は指定解除が進む復興拠点外の避難指示解除を実現する制度として復興庁が2月に国会提出したもので(2712既報)、復興庁はこれに先駆けて大熊町と双葉町の住民を対象に帰還意向確認調査を実施。新たに避難指示解除を目指す「特定帰還居住区域」の候補地を近く固め、24年度からの本格実施に先駆けて、23年度から一部除染等に乗り出す予定だ。浪江町、富岡町でも意向確認調査を終えており、随時対応していく。
(以下については本誌2716をご参照ください)
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