経済産業省は「技術的に大変。処理システムのコストが高い」という一方的なイメージ先行だった我が国のCC(U)S(CO2の吸収・運搬・貯留)事業を払拭して、2030年までに国内外20ヵ所以上の実現を本格化させる。同時に、今後の脱炭素化対策の切り札とする方針だ。
西村康稔経済産業相は13日の閣議後会見でその第一弾として、国内外から「先進的CCS事業」の候補地に北海道・苫小牧地域など7案件(エネルギー・金属鉱物資源機構=JOGMECが同日発表)を選定したことを公表。30年までの事業開始に向け、事業環境の整備と支援を進める方針を明らかにした。当面はCCS事業法の新法制定などの関連法を早ければ次の臨時国会に提出、CCS長期ロードマップ(23年5月)策定後の「CCS行動計画」を今秋までに急ぐ方針だ。
貯留の場所は未定、地層等調査後に最終決定
CCS事業化の候補地として今回JOGMECが決定した7案件は23年度予算に計上されていた「先進的CCS事業の実施に係る調査:約35億円」の実施エリアを選定したもので、候補地の最終決定は今後の海底地質調査や地元調整などの結果により2〜3年後に決める。候補地となった調査5案件は国内全域のCO2多排出集積地を念頭に北海道苫小牧、日本海側は秋田県を中心に油田があった東新潟、茨城・千葉県を中心とした首都圏、瀬戸内・九州の排出源をカバーする九州北部沖〜西部沖の地域エリアが選定された(次頁)。
ただ、今回の選定地域は主要な排出源と地理的なイメージを示しているだけで貯留地の場所までは特定していない。今後JOGMECによる海底地質調査や安全性の確保、地元調整などを踏まえ、2年を目途に最終決定する方針だ。この間にCCS事業化法などの創設をはじめ10本余と目される関連制度の整備が行われる必要もある。
また今回の候補地選定ではマレーシアと大洋州の2ヵ所が海外分として選定された。いずれも衰退している海域の油ガス田を活用するものだが、経産省が別途推進中の「アジアCCUSネットワーク」(ASEAN10ヵ国+豪・米・日が加盟)の活用や、環境省が推進中の「JCM事業」(二国間クレジット)の対象に加えることを検討中だ。
いずれにしても、CCS調査事業の委託を受けているJOGMECは今後のモニタリング調査を踏まえて貯留地候補の試掘調査、海洋生物等への影響を集約して最終決定する方針。候補地の選定は24年度も実施する。
(以下については本誌2729をご参照ください)
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