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No.2716.3.16




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…県外最終処分は25年度以降に本格調査検討・調整開始、福島県は全域避難指示解除再要請…


岸田首相「福島復興再生に全力」、福島県は財源確保要請


 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生から12年を迎えた3月11日、福島市で開かれた「東日本大震災追悼復興祈念式」(福島県主催)に出席した岸田文雄首相は、追悼の辞で「引き続き福島の本格的な復興・再生、東北の復興に全力を尽くす」と改めて復興への決意を述べた。

■大熊・双葉町一部避難解除、海洋放出明示せず
祈念式典では、岸田首相が原発事故による帰還困難区域で葛尾村、大熊町、双葉町で特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除され今春には浪江町、富岡町、飯館村で解除が見込まれることや、4月1日に福島国際研究教育機構(F―REI)を設立することなどを成果として表明。今後の課題として、▽復興拠点外の帰還困難区域に関して法改正して引き続き対処、▽国が前面に立った福島第一原発の安全かつ着実な廃炉と帰還に向けた生活環境の整備や産業再生支援――などを挙げた。
 ただ同原発で発生しているALPS処理水の海洋放出に関しては触れず、同日行われた記者会見で言及。岸田首相は「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないとの方針は順守する」と話す一方で、処理水の海洋放出は「決して先送りができない課題」とも指摘。「政府が海洋放出を見込む今春から夏頃に向けて、IAEAとも連携して情報発信を行い、漁業者など地元の懸念に耳を傾け、丁寧な説明と意見交換を重ねていく」と語った。その段取りや判断のあり方については、明言を避けた。

■計5日間の複合災害強調、改正法軸に先行除染
 また内堀福島県知事は13日に会見を開き、福島県の被災は3月11日だけではなく最後の水素爆発が起きた15日までの計5日間の複合災害であることを強調。政府に対し復興・再生への取組強化を改めて求めた。県がその柱に据えるのが、下記の7課題だ。2月25日に開かれた福島復興再生協議会で内堀県知事がこれら課題の実現を強く求めた。
 @は、「特定帰還居住区域」の創設が福島復興再生特措法の改正案に盛り込まれたことを「帰還困難区域全体の解除に向けた大切な一歩」と評価する一方、帰還意向のない人々の土地・家屋等の取り扱いなど依然として様々な課題が山積していることを指摘、全ての避難指示解除に向けて、国が最後まで責任を持って取り組むよう強く求めた。
 この改正法案は指定解除が進む復興拠点外の避難指示解除を実現する制度として復興庁が2月に国会提出したもので(2712既報)、復興庁はこれに先駆けて大熊町と双葉町の住民を対象に帰還意向確認調査を実施。新たに避難指示解除を目指す「特定帰還居住区域」の候補地を近く固め、24年度からの本格実施に先駆けて、23年度から一部除染等に乗り出す予定だ。浪江町、富岡町でも意向確認調査を終えており、随時対応していく。


(以下については本誌2716をご参照ください)



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CCS(Carbon capture and Storage)は本物か?


 今でも、CCSは評価が分かれる脱炭素技術だ。1970年代に石油採掘で使われ始めたCCSは、地球温暖化で話題になったが注目される技術ではなかった。だが、パリ協定が流れを変えた。低炭素ではなく脱炭素が求められ、CCSも脱炭素技術の選択肢となった。いくつかのシナリオ分析では、CCSが2050年カーボンニュートラル実現のための重要な技術となっている。脱炭素により化石燃料利用を制約された火力発電も、高効率からゼロエミッション化へと目指すゴールが変わり、水素やアンモニアとともにCCSの実用化に期待を寄せている。
 それでも、CCSに疑問を持つ人は少なくない。CCSが本物の技術か、地中貯留の適地、安全性、経済性の三つの疑問を通じて考えてみたい。

日本にCCSの地中貯留適地はあるのか?
 かつて、日本周辺にCCSの適地は少ないと言われていた。地球物理学や地球化学的に不明な点も多く、地中の探査技術も十分でない中での評価であった。その後、多くの貯留適地調査が行われ、総合資源エネルギー調査会のCCS長期ロードマップ検討会最終とりまとめ(2023年3月)には、日本周辺に11地点160億トンの貯留容量があると記載されている。2050年の日本国内の想定年間CO2排出量1.2〜2.4億トンの60〜130年分に相当する。CCSを再エネ主体のエネルギーシステムへの架け橋と考えれば、適地は十分にある。

CCSは安全性か?
 地中貯留が地震を誘発しないのか、CO2が地表に漏れ出さないのか、安全性に係るこの2点は、CCSの社会実装に向けて大きな問題となる。
 地中貯留と地震の関係については、CCSの地点選定に際して十分なリスク評価が行われることを前提に、地中貯留が断層の再活動を引き起こさないことをIEAの「CO2 storage resources and their development 2022」を含む多くの検討結果が示している。
 地表への漏れはどうだろうか。特殊な技術を用いて採掘するシェールガスなどの天然ガス資源は、何もしなければ地表面に漏れ出ることなない。分子構造上極性を持つCO2は、天然ガス以上に岩石の内部や地下水によってトラップされやすい。地中に注入されたCO2はシール層下の貯留層岩石の隙間に封じ込まれ、物理的にトラップされる。さらに、時間とともに地下水に溶け込み、数万時間の経過によって周辺の岩石のミネラル分と反応し、炭酸塩鉱物となって安定化する。地中に注入されたCO2は物理的に漏れ出さないし、化学的にも安定化することから環境への影響はなく、あっても限定的だ。

CCSの経済性は?
 CCSに限らず、脱炭素技術に経済性はない。太陽光発電や風力発電も、すべて需要を賄うには余剰電力と出力変動を補う蓄電池が必要となり、電力価格を押し上げる。脱炭素の電力システムでは、多様な技術を組み合わせて経済的に最適化することが求められる。RITEが2021年の総合資源エネルギー調査会に提出した「2050年カーボンニュートラルのシナリオ分析(中間報告)」では、CCSを有力な選択肢としている。CCSがエネルギーロスや多様な設備費・運営費などコストがかかることは確かだが、他の選択肢も決して経済的ではない。非経済は、CCSだけを排除する理由にはならない。

一般社団法人火力原子力発電技術協会
           技術アドバイザー 船橋信之





(以下については本誌2716をご参照ください)


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