週刊「エネルギーと環境」 毎週木曜日発行

今週の注目記事


No.2824.05.29




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…トランプLNG輸送船規制に米業界反発、韓国は早くも協力体制構築へ

矛盾はらむ米国LNG船規制、日本造船業復活の機会?



 米トランプ大統領は米国内の造船業を復興させるべく、米国からの輸出に使用する船舶に関する新規制を打ち出したが、直近の自動車や鉄鋼業への相互関税をめぐる日米交渉でも一つの焦点となっている。米国通商代表部(USTR)は4月17日に「中国の海洋、物流および造船部門支配力強化に対するUSTR301条措置」を発表していた。中国で建造された船を輸出用に使う事を締め出す意図がある。またLNG輸出事業者に対しては2028年4月以降、輸出船の1%を米国製船舶による輸送を規定。さらに2047年4月以降は米国製LNG輸送船の使用を15%にまで増加させると義務付けた。ただこうした規制に対しては、トランプ大統領の岩盤支持層であるエネルギー業界から反発が出ている。
 一方で、トランプ関税の撤廃を交渉中の日本政府は、米国造船業への支援を交渉カードの有力材料としている。当面は艦船の日本での修理と砕氷船の技術協力が話題となっており、LNG船については言及されていないものの、日本はかつてLNG船で世界シェアのトップを占めたことがあり、しかも砕氷型のLNG船建造でも協力可能など、我が国での造船復活にもつながるか注目されている。

LNG輸出船規制に除外要請、自己矛盾の指摘
 USTRによるLNG輸出船規制に対して、米国石油・ガス業界団体の米国石油協会(API)はこの規制からLNG船を除外するよう要請している。その理由は28年4月までにLNG輸送船の1%を米国で建造することが実質的に不可能というもの。仏海運コンサルタント会社AXS Marineによると、現在世界では792隻のLNG船が運航しており、このうち韓国と日本のLNG船が合計703隻、中国が58で米国製はわずか5隻のみという。しかも米国製の建造はいずれも1970年代と古く、現在は使用されていない。つまり米国でのLNG船建造サプライチェーンは完全に途絶えており、LNG船の建造に使えるドックも米国内に二つしかないとされる。
 USTRの規制要件を満たすには今後10年間で米国製LNG船が最大5隻必要となるが、1隻のLNG船を建造するには最低5年はかかるという。そのため今回の規制に対応するのは事実上不可能というのが関連業界の見立てだ。
 また建造されたとしても、米国でのLNG輸送船の機器や資材供給網が途絶えていることから、海外からの調達が必須となるが、そこに今回のトランプ関税が大きな壁となって高コスト化が必至とみられ、LNG輸出拡大策とは矛盾することになる。






(以下については本誌2824をご参照ください)



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…環境省の手引き、草の根活動で里海からブルーカーボン創出促す

ブルーカーボン、日本に適したネガティブエミッション技術


 海草や海藻などがCO2を吸収・貯留するブルーカーボン活用への関心が高まっている。その活用は、海の豊かな生態系を育成するだけでなく、大気中のCO2を捕捉・吸収することで、最終的にCO2排出が正味マイナスとなる「ネガティブエミッション技術」の一つとなる。
 日本がCO2排出削減目標の2050年カーボンニュートラル(CN)を達成するには約2割のCO2残余排出があると想定されている。この残余排出をゼロにするには、ネガティブエミッション技術が必要となり、日本の地理的条件や風土的にブルーカーボンが適しているとされる。政府は2035年度にブルーカーボンによるCO2吸収量を100万t、40年度に200万tの目標を掲げている。

環境省が手引書策定、クレジット化して売買
 IPCCによると、世界の海域でのCO2吸収量は森林などによる陸域吸収量(約23億t-CO2/年)とほぼ同程度の約24億t-CO2/年と試算されている。日本は世界第6位の海岸線延長約3万5000kmを持ち、世界的にも主要なブルーカーボン貯蔵国となる可能性が高いという。
 環境省は今年4月、「ブルーカーボンを活用! 令和の里海づくりに向けた藻場・干潟の保全・再生の評価の手引き」(前頁写真)を公表した。同省は従来から沿岸域の豊かな自然の保全と人の暮らしが共存する「里海」の考え方を取り入れ、藻場・干潟の保全・再生・創出と地域資源の利活用の好循環に向けた取り組みとして「里海づくり」を推進している。この里海づくりは生物多様性保全かつブルーカーボン創出の重要なステップでもある。










(以下については本誌2824 をご参照ください)


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