国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が条約事務局のあるカナダ・モントリオールで12月5〜17日に開かれている。我われが日常的に使っているパーム油が原因となって、インドネシアのカリマンタン島の生物多様性が失われている深刻な現実がある一方で、30by30の目標設定に合意できるかなどが焦点だ。
パーム油利用で指摘、持続可能性への課題
ISTA(International Seed Testing Association)Mielke社「Oil World」2020/21年報によれば、この1年間で日本ではアブラヤシの果肉から得られるパーム油と種子から得られるパーム核油合わせて81万9,000トンが消費され、その約8割がインスタント麺やスナック菓子をはじめとした食品向け、残りの約2割が石鹸や洗剤などの非食品向け、さらに近年(バイオマス)発電向けに使われ始めている。世界のパーム油の8割以上はインドネシアとマレーシアで生産されている。
パーム油利用には持続可能性に関わるいくつかの課題が指摘されてきた。アブラヤシ農園の開発は必然的に熱帯雨林の伐採を伴い、農園や工場には児童労働を含む労働・人権問題があるといわれる。企業がこれらの問題を確認せずにパーム油を利用することは、SDGsの達成に逆行する恐れもある。そのため関連企業には、インドネシアやマレーシアにある農園、搾油・精製・加工工場、そして製品につながるサプライチェーンの全体をみて、生産現場での課題を把握し、改善する努力が求められている。
一方で、パーム油サプライチェーンの把握は困難を極める。最終製品から原料までサプライチェーンをさかのぼっていくと、マーガリンやクッキーなど製品の加工工場、パーム油の精製工場、パームの実から油を搾る搾油工場まではなんとかたどり着ける。が、搾油工場からさらに先の農園は、多数の小規模農家を含む場合が多く、追跡するのは至難の業だ。パーム農園を含むサプライチェーン上の生産現場で実際に起こっている事実と、責任をもってパーム油を使う必要性に迫られる企業が知り得る事柄の間には大きなギャップが存在する。
(以下については本誌2704をご参照ください)
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