省エネ・新エネ普及Net エネルギージャーナル社
省エネ・新エネ普及推進協議会 関連情報

省エネ・新エネ普及ネット会報 第12号 2000年5月


エネルギー自給度高める木質バイオマス──燃料電池への利用も可能──

 地球温暖化を防ぐ切り札として、木屑などのバイオマスをエネルギー源として積極的に活用しようという動きは、スウェーデンだけでなく、最近、世界的に急速に広がってきた。
 米国のクリントン大統領は99年8月、「バイオマス燃料の比率を2010年までに3倍にする(現状は総エネルギー需要の3%)」という方針を大統領令として打ち出した。ブラウナー環境保護庁長官も「バイオマスは次世紀の石油」と位置付けた。EUでも温室効果ガスの排出を2010年までに8%削減する方策の中心に据えているのはやはりバイオマス。毎年7.6%ずつバイオマスによるエネルギー供給を増やし、95年レベルの約3倍まで引き上げる考えだ。風力も毎年20%アップをめざすが、供給量としてはバイオマスの9分の1にとどまる。EUには麦わらなど農業関連のバイオ燃料が豊富という。
 ところが、日本ではバイオマスは新エネルギーの範疇に明確に位置付けられていない。政府が"認知″していないのだ。資源基盤としてのバイオマスの可能性をみると、日本とスウェーデンとも森林面積はほぼ同じで約2400万haだが、日本の人口は15倍、国民1人当たりの森林面積は日本が0.2ha(スウェーデンは2.8ha)。このため、「スウェーデン並みのバイオ利用でも日本なら総エネルギー需要の2%にしかならず、議論の対象にならない」という意見もある。しかし、それは一面的な見方だ。
 日本は人口が多いため、年間の建築廃材は2000万立方m以上で、国内の木材生産量に匹敵する。製材業からの木屑は約1500万立方m。伐採の際、森林に捨てられる枝や葉は35%に上る。間伐も必要な山の半分しか施されず、しかも、間伐材の半分はそのまま森に捨てられている。このように潜在的な可能性は大きいと言える。
 こうしたバイオマス資源をいかにエネルギーに転換するかが問題になる。単純に燃やして蒸気タービンで発電することは熱変換効率が悪いため、さまざまな工夫、技術改良が各国で進められている。木屑からCOなどのガスを抽出し、それでガスタービンなどを回す方式は、小規模発電施設(数百kWから数千kW)でも45〜50%と高い効率(火力発電は35%)が得られ、5〜10年後には実用化されるという。これに排熱利用を併せれば、日本の地方都市での導入も可能だ。
 また、木屑ペレットも石油ストーブなどの代替として可能性がある。スイッチだけですべて自動式という便利なストーブも欧州で開発されている。ペレットは700気圧でおが屑を圧縮するだけで製造でき、燃焼時、タール分がほとんど出ないクリーンな燃料でもある。  しかし、将来的に見て、バイオマス燃料の最大の可能性は燃料電池にあるのかもしれない。木屑をガス化して得られる水素と酸素を反応させて発電させる仕組みだ。副産物は水だけ。
 燃料電池の技術革新はここ1〜2年で急速に進んでいる。昨年末、ダイムラー・クライスラー社が東京都内で開いたシンポジウムは衝撃的だった。同社は2004年にメタノールから水素を取り出す燃料電池車を市販すると宣言した。常温で液体のメタノールを38リットルのタンクに満タンにすると、400qの走行が可能という。従来は水素タンクを搭載する方式が主流だったが、メタノールから水素を取り出す改質器の著しい進歩でタンクが放逐された。排ガスはSOxゼロ、CO2はガソリン車より30%少ない。当面は天然ガスからのメタノールを視野に入れているようだが、「燃料電池は再生可能な代替燃料を利用できるのが利点」としており、バイオマスからのメタノールも考慮していることが分かる。
 このシンポで、芝浦工大の平田賢教授が天然ガスについて注目すべき発言をした。98年に米ヒューストンで開かれた世界エネルギー会議で、天然ガスは「95年レベルでの全世界消費量の511年分の埋蔵量があることを確認した」という。また、平田教授は家庭用燃料電池について、2万時間発電(約2年半)可能で、冷蔵庫並みの大きさの電池が2004年には発売されるという見通しも明らかにした。都市ガスと直結すれば直ちに利用可能で、しかも排熱を利用する給湯付きだ。
 また、天然ガスパイプライン網の構想も国際的に進行中で、大量に埋蔵しているサハリンからロシア、朝鮮民主主義人民共和国を経由して、韓国、日本までの敷設を米国企業が中心となって計画中だ。米朝協議、南北対話が進む背後には、こうした将来のエネルギー戦略の根幹に関わる大構想があるようだ。
 日本でバイオマスのエネルギー利用が本格化するには、やはり環境税の導入など政府の支援が必要であるが、いまのところその論議は本格化していない。それならば、発想の転換をして、膨大な公共事業費の一部を国土保全という名目で森林に投入し、山や森、農業の好きな人などを組織的に送り込み、全国の山で間伐を実施すれば、安価なバイオマス資源が大量に得られる。
 バイオマスの技術的研究についても支援次第で大きく進むが、現時点でも効率的に水素を取り出す方法が判明している。木屑をまず900度以上で空気を遮断して炭化し、それをさらに1300度でガス化すると、燃料電池に適した高濃度の水素が得られることも判明している。日本でのこうした研究も欠かせない。バイオマスの意義は温暖化を防ぎ、海外へ依存し過ぎたエネルギーの自給度を高めることにある。この点は天然ガスより根本的に優れている。  
                                      (ジャーナリスト・平野真佐志)



EU、2005年までに「排出量取引」整備
──国連大学会議で環境庁表明──

 国連大学高等研究所主催(OECD共催、環境庁後援)の第3回国際会議「地球システムの持続可能な将来」が、5月24、25日の両日、東京・渋谷の国連大学本部で開催された。この国際会議は2002年の"リオプラス10"に向け、工業化、都市化、経済成長、人口増加などを背景とした最近の地球環境の状況を検証し、その政策課題などを分析することが目的。今回の会議では、11月に開催されるCOP6の課題や、途上国の貧困問題と持続可能な開発、気候変動予測シミュレーションモデルなどもテーマに取り上げられた。
 24日は「地球環境の状況とトレンド」(議長・ケネス・ラフィン国連持続可能開発課)、「地球温暖化とCOP6の主要課題」(同広中和歌子参議院議員)、「地球モデルと将来シナリオ」(同森田恒幸国立環境研究所環境経済研究室長)の3テーマで討論が行われた。25日は「京都議定書と代替案」(同黒田昌裕慶應大学商学部教授)、「21世紀における水問題」(同鈴木基之国連大学副学長)、「持続可能な開発と途上国〜インドにおける持続可能な開発の枠組み」(同タルシシオ・デラセンタ国連大学高等研究所所長)、「持続可能な開発と途上国〜インドネシアにおける持続可能な開発の枠組み」(同羅副全国連大学高等研究所客員教授)、「地球の持続可能な未来と途上国」(同羅副全教授、モハン・ムナシンゲコロンボ大学客員教授)の5テーマでそれぞれセッションが行われた。
 このうち、「地球温暖化とCOP6の主要課題」では、パネリストとして環境庁の浜中裕徳地球環境部長、ディン・イー・フイ中国気象庁気候センター所長、モハン・ムナシンゲコロンボ大学客員教授、ワーウィック・マッキビンオーストラリア国立大学経済学部教授が発言。浜中部長は、国内の関係機関でCDM(クリーンディベロップメカニズム)に関するFS(フィジビリティスタディ)や、国内・国際的な排出量取引き制度の検討を行っていること、地球温暖化問題に関する途上国との国際会議を開催し、対話に努めていることなど、特に京都メカニズムに対する日本の対応状況を中心に紹介した。
 同部長はまた、EUが2005年までに域内の排出量取引き制度を整備する方針であることを明かにした。会議参加者から、日本がCDMにODAを活用することを検討していることに対する疑問が出されたが、同部長は「議定書規定上特に問題はない」としながらも、「検証のあり方を検討することも重要」と答えた。
 一方、マッキビン教授は、「"政治的な合意"で作成された京都議定書で問題に対応していては温暖化は防げない。(気候変動枠組条約や京都議定書の)枠外で対策を考えるべき」と発言した。


 

「環境税は消費税型が現実的」──IGES温暖化対策フォーラムで茅教授──


 (財)地球環境戦略研究機関(IGES)の第4回地球温暖化対策オープンフォーラムが5月10日に開かれた。今回は技術的な側面からみた国内制度に関して提案と討論が行われ、茅陽一・慶大大学院教授、西堤徹・トヨタ自動車環境企画グループ担当部長、飯田哲也・日本総合研究所主任研究員の3氏がそれぞれの立場から提案を行った。
 茅教授は「温暖化現象には気象学者の間で懐疑論もかなりある」と前置きしたうえで、「不確定要素が多い問題で多数の人を納得させる対策を導入することは難しい」と指摘、そのための合意形成に腐心することの重要性を強調した。また、自然エネルギーの導入に関して、「どこまで環境上の利点を考慮するのか、まず、温暖化防止のコストを決め、そのコスト構成を考える必要がある。現在準備中の自然エネルギー発電促進法案にもその点を盛り込むべきだ」と述べた。さらに、環境税については、「消費税のような低率の末端徴収型が現実的。消費者へのアナウンスメント効果も期待できる」という見解を示した。
 トヨタ自動車の西堤部長は自動車産業の温暖化対策に関して報告。生産工程におけるCO2排出量は減少傾向にあることを強調したが、ガソリン車とハイブリット車を比較した場合、材料製造や車両製造段階ではハイブリット車の方がガソリン車よりエネルギー消費量が多いというシミュレーション結果を示した。一方、走行段階で運輸部門のCO2排出量が増加していることに関連して、97年度から98年度にかけて乗用車の平均燃費が向上していることを示したものの、運輸部門のCO2排出量がなぜ増加しているのかという疑問には明確な回答がなかった。
 日本総研の飯田研究員は自然エネルギー発電促進法の必要性を強調、その後は熱政策の展開に取り組むべきだと提案した。しかし、指名討論者らからは同氏に対し、「なぜ風力発電にのみ特化するのか」という発言も目立った。


自転車活用に踏み込んだ提言──自家用車に依存しない都市交通 運政審小委 6月に報告──

 運輸省の運輸政策審議会は4月25日、総合部会企画小委員会を開き、6月にまとめる小委報告に盛り込む基本的な考え方を集約した。この中で21世紀の交通戦略として、公共交通機関、徒歩・自転車を重視した交通体系・都市構造の再構築をあげ、安全・快適な歩行空間を整備し、徒歩や自転車利用を促進するよう求めている。運輸省が自転車利用に関してここまで踏み込んで提言するのは初めてで、注目される。
 小委員会では今後の都市交通のあり方について、(1)全ての人にとって安心して移動できる安全・快適な都市交通の実現(2)環境負荷の小さい都市交通の実現――をめざすとともに、(3)自家用車に過度に依存しない都市交通の実現を目標に据えるべき、との提言を行っている。
 その対策として、まず公共交通機関の利便性の向上を求めるとともに、歩道や自転車道を重点的に整備して徒歩、自転車利用を促進するよう提言。さらに、ロードプライシングの導入などTDM(交通需要マネジメント)を積極的に推進する一方、徒歩・自転車・公共交通機関重視の街づくりを推進するよう訴えている。
 今回の集約ではモータリゼーションの急速な進展による弊害を早急に是正するため、徒歩、自転車利用の拡大に積極的に踏み込んでおり、自動車行政に携わる運輸省がこうした姿勢を打ち出したことは、東京都など自治体の動きと相まって、大きな転換点を示したことになる。


雪サミット 35市町村参加へ──7月6日〜7日、山形・舟形町で一般参加者募集中──

 山形県舟形町で開く第3回全国明るい雪自治体会議(雪サミット2000)の開催要項が決まった。日程は7月6日、7日の両日で、参加自治体は7道県から35市町村の予定。
 6日に参加自治体によるサミットが開かれ、7日にはエコ産業プロジェクト研究会(舟形町)、雪室利用調査促進委員会(山形県飯豊町)、神崎雪室研究会(同村山市)など5団体による事例発表が行われる。引き続き、「環境と農業」(第1分科会、コーディネーター・嘉田良平京大教授)、「環境とエネルギー」(第2分科会、同媚山政良室蘭工大助教授)と題したパネルディスカッションが開かれる。
 また、「地球環境と人間の生き方」と題する原田憲一山形大教授による記念講演も。このあと参加自治体連名の「舟形宣言」を採択する予定。
 このほか、6日には舟形町、村山市、新庄市内の利雪施設見学会、8日にはオプションツアー「舟形明るい雪国めぐり」が組み込まれている。ツアーを除き参加費(資料代、昼食代、交流会費を含む)は8000円。
 雪サミットは日本列島に年間500トン以上降るといわれる雪を雪冷房システム、農産物低温貯蔵システムなどに活用するとともに、食糧の長期備蓄、地球温暖化防止などに結びつけて、地域の活性化をめざす会合。北海道沼田町、新潟県安塚町に続き、今年で3回目。
 舟形町では約500人の参加を見込んでいるが、一般の申し込み、問い合わせは舟形町企画課(TEL0233−32−2111、FAX0233−32−2117)まで。申し込み締切は6月10日。




「温暖化防止へ自販機シンポ 環境文明21

 環境文明21(加藤三郎代表理事)が6月4日、東京・渋谷の国連大学で「飲料自動販売機から見える環境問題」と題したシンポジウムを開く。日本には260万台もの飲料自販機が設置されているといわれ、そのエネルギー消費量は原発一基分に相当するという。こうした自販機の存在に関して、地球温暖化防止と街並みの景観保全の観点から考え直そうというシンポ。加藤代表理事が話題提供するほか、行政担当者、区議会議員、弁護士らがパネリストとして参加する。参加費 1000円。申し込みは環境文明21(TEL:044-411-8455,FAX:044-411-8977,E-mail:kanbun@neting.or.jp)まで。




「省エネ・新エネ全国記事情報(3月分)」発行

 省エネルギー、新エネルギーに関連する全国の新聞記事を1カ月ごとに整理・編集した「省エネ・新エネ全国記事情報(3月分)」ができました。国、自治体、企業、NGOなどの動向を網羅したもので、今後、1カ月ごとに整理・編集して発行しますが、それぞれのお立場でお役に立つと確信しております。当協議会の会員の方には無料でご送付します。非会員の方には1部1000円(郵送料込み)にて、申し受けます。ご希望の方は住所、氏名等を明記のうえ、FAX(03-3341-3030)にてお申し込み下さい。現物と振り込み用紙をお送りします。
 

 

 <文献紹介>

清水直子
      編著 『闘う首長』
新島 洋

 東北のある市長と会食した際、彼は「オレの任期は4年(1期)だけだが、彼ら(職員)は一生」とぼやくのを聞いたことがある。市役所の職員は定年まで安泰だが、市長は4年ごとに選挙の洗礼を受けなければならない。職員は次の市長、またその次まで想定して、現市長とは一定の距離を保ち、かならずしも現市長の政策に積極的にコミットしない――というのがこの市長の嘆きだ。
 この本には20自治体の首長が登場するが、介護保険制度で厚生省を強く批判する一方、日の出廃棄物処分場管理者として矢面に立たされている土屋正忠・武蔵野市長(東京)は言う。「私には闘う相手が三つある」と。その第1が国、次いで身内の官僚、そして時には市民。首長は四面楚歌というのはまぎれもない事実だ。
 しかし、そんな状況の中でも強いリーダーシップを発揮して、住民の付託に住民参加を柱として応えようとしている姿が紹介されている。職員採用の面接官に一般町民を充てる(片山舜平・岡山県加茂川町長)、「経済が上向いた、下向いたからって大騒ぎしないで平静心をもてる人が何人いるかが勝負じゃないでしょうか」(三木邦之・神奈川県真鶴町長)、市職員に1人2役を求める(清水聖義・群馬県太田市長)、「行政は闘いではなく創造です」(笹口孝明・新潟県巻町長)……。
 首長の党派は「本籍自民党」から共産党までさまざまだが、自治体が置かれた状況がいかに苦悩に満ちたものか、その中から自治体の新たな可能性をどのように模索していくのか、地域のあり方を考えるにあたり多角的な問題提起が結果的になされている。ただ、取材部分と、本人の手記、インタビューが並列的に置かれ、ややバランスを欠いたことは残念。  (教育史料出版会、本体1700円)



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