今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

年頭に際して、民主党政権運営への期待と課題を考える
 ◇ 2010年年頭所感 ◇
2010/01/06(Wed) 文:(水)

 2010年という節目の年。明けましておめでとうございます。
 「エネルギーと環境」は本年も公正中立、読みごたえのある専門情報誌として決意新たにスタートしますので、変わらぬご支援をお願いいたします。

 主要各紙の元旦一面トップ記事は、「財務省と組む『脱官僚』路線選択、ガバナンス国を動かす、第一部政と官(1)」(毎日)、「眠る力引き出す、ニッポン復活の10年(1)」(日経)、「動く世界と共に、地域の支えはアフガン医師、日本前へ(1)」(朝日)、「小沢氏から現金4億円、土地代の相談後」(読売)などで、企画記事あり特ネタ的な社会記事ありで、多様な紙面でした。元旦のトップ記事は新聞各社もことのほか力を入れるので、過去から未来への社会を映す鏡とも言われており、確かにそうした予兆を感じさせるに十分な切り口だったと思います。

 さて、連立民主党政権はハネムーン期間といわれた100日間が過ぎ、新しい年の出発とともに、まさにその真価がきびしく問われることになりそうです。そこで政権運営の中で極めて重視され、かつ弊誌も主要テーマの「環境政策」の展開を中心にこれまでの政権運営の課題と問題点を指摘しておきたい。

 (1)政権前の公約と政権後の公約実現の違いを明確にすべき
年末の予算編成や税制改正作業では、公約実現と現実の財政危機のはざまで右往左往する姿が垣間見られた。選挙前のいわば人気取りと支持拡大を目的に策定したマニフェストと、現実に政権内の様々なしがらみを踏まえた公約実現とは全く性格が異なるのは当たり前の話し。そのことは、昨年の主要紙による世論調査結果を見ても明白で国民の方がよく理解しており、むしろ民主党の対応の仕方がお粗末だったと言えよう。まずはその違いを丁寧に国民に説明すべきであり、公約実現の優先順位と工程表の整理が先決。

 (2)政策決定のプロセスを充分に明らかにすべき
 鳩山政権が昨年世界を引っ張るとして打ち出した温室効果ガス25%削減の中期目標は、COP15が最低限の政治合意にとどまったことで、日本の意欲的な世界トップレベル目標も空振り気味だ。民主党の環境問題第一人者である福山哲郎議員(現外務副大臣)とジャーナリスト仲間との内輪の勉強会があった昨年12月、この25%削減目標の根拠と理由を問われた際に、「選挙公約として明確に掲げたから」「IPCC報告の科学的知見として提示されている」という見解が示された。しかし、それ以上の具体的な根拠等の説明はなく、鳩山政権の25%削減方針も推して知るべしで、十分な国民的議論とそのメリット・デメリットを踏まえた合意形成がなされておらず、政策決定のプロセスもまだ明らかにされていない。
 この環境問題に限らず、これまでの政権運営では政策決定プロセスがどんな認識と物差しで決められたのか不透明そのものであり、積極的な情報公開もない。政策決定ではその前に必ず案件が政務三役会議にかけられ、そこでの議論を経て方針が決まるが、これもブラックボックスの世界となっている。 
 そもそも政務三役が全プロセスを熟知した上ですべてを取り仕切り、マスコミ対応までこなすという役割自体に物理的・能力的限界があるわけで、まずそこから改める必要がある。このままでは、審議会方式(業界の利益代表らの議論という側面が強すぎたが)や官僚への役割分担、与党の独自性を認めていた自民党政権の方が、政策決定プロセスの透明度がましだったということになりかねない。

 (3)短慮な発想の官僚組織への切り込み
 民主党政権の一部では事務次官の廃止をはじめ官僚の人事機構の見直しを検討中という。しかし、これも現行の官僚機構は「悪しきもの」という偏見ありきの中で生まれてきた短慮としか思えない。そういう面が全くないとはいわないが、これまでの政治のだらしなさに比べれば、まだここには日本を支えうる組織力と人的資源が存在する。
 特に、事務次官の廃止という考え方は、ある意味で自己犠牲も強いる官僚のピラミッド型世界の否定であり、それを失うことの混乱と再構築するエネルギーを考えれば、官僚との協働と新たな発想による活用に腐心すべきではないか。省内の人事権を一手に握る事務次官を新政権の政策展開のためにどう充分に活用するかにこそ知恵を出すべきだろう。

 (4)極めて不十分な説明責任とマスコミへの対応
 昨年末の予算編成作業と税制改正では、道路財源の暫定税率廃止や温暖化対策税導入などの最終決定で漂流を続け、最後は小沢一郎幹事長による裁断でことがようやく決まり、年内編成が間に合った。しかし、この幹事長裁断のペーパーはA4三枚で問答無用を思わせる結論しか書いていないものだった。しかもその中には、当初方針が大きく変わったものも多いが、その変わった経緯や理由などまったく説明されなかった。となると、何日間も議論された政府税制調査会などの審議はいったい何だったのか。これでは必死の努力をしてきた利害関係者も浮かばれないし、組織にどんな説明をしたらと路頭に迷う。とても民主主義の政治とは思えない。これら事例だけではなく、おしなべて新政権はショー的な事業仕分けのようなやり方には熱心だが、政権運営の全体的な透明性は極めて低い。
 また、マスコミへの対応や説明も不十分そのものだ。大臣や政務三役が超多忙ということもあるが、予定時間を30分遅れて会見時間が10分15分という例もざらにあり、その説明も厚みのあるものではなく、旧政権時代のマスコミ対応の方がレベルは高かった。これでは、マスコミを単なる「情報の運び屋」としか見ていないのではないか。

    ◇          ◇         ◇
 いろいろ民主党政権運営の問題点を書いてきたが、要は国民の利益と共通認識醸成に繋がる政治と行政を心がけて欲しいということである。そのためには現在ある日本の組織、人的資源、経済の仕組み、財政力などを最大限に活用できる体制と仕組みを1日も早く構築すべきであろう。
国民が民主党政権を選択したのは、民主党という政党組織のさらなる拡大を望んだからではなく、少しでもましな国にして欲しいと期待したからではないのか。

                                                    2010年1月  編集発行人   清水 文雄




温暖化対策アセスメントの必要性と米国への対応
 ◇ ポスト京都中期目標の策定で必要な日本の独自性は ◇
2009/04/30(Thu) 文:(水)

今年12月に決定する予定の温暖化対策次期国際枠組みに関して、最大の争点になっている各国の温室効果ガス(CO2等)の中期削減目標(2020年頃)策定内容が注目されている。日本は首相官邸に設置された「地球温暖化問題に関する懇談会」(座長;奥田碩トヨタ自動車取締役相談役)が六つの削減目標案をまとめ、パブリックコメントを実施中で、国民意見を踏まえて麻生太郎首相が6月までに決定する。

六つの案は、1990年の日本のCO2等総排出量に対して2020年に「+4%、+1〜−5%、−7%、−8〜−17%、−15%、−25%」削減というもので、きびしい数値を採用するほど経済成長に打撃を与え、国民負担も大きくなりその「覚悟」のほどを問うている。削減を裏付ける対策も省エネ型の電化製品や自動車への大幅な転換と買い換え、省エネ住宅普及、太陽光発電など新エネの加速的拡大などだ。しかし、これら大量の耐久消費財等の新規導入や買換えによるCO2等の排出バランスや使用されるエネルギー、資源利用の効率性には一切触れられていない。

かつて日本は経済成長一辺倒が作り出した「大量生産、大量消費、大量廃棄」が廃棄物の不法投棄や最終処分の問題を引き起こし、資源の非効率的利用が蔓延し物が巷に溢れかえるという時代を経験したことがある。「省エネ型製品」への買換えやリサイクルの徹底とはいうものの、今後10年という短期間に物のストックとフローを劇的に転換するやり方が「低炭素社会づくり」に適っているのか、廃棄物の最終処分場の寿命があと5〜6年といわれている問題も含めて、是非とも「戦略(計画)アセスメント」を実施して欲しい。戦略アセスの必要性は政府が数年前から自らその必要性を提起し、検討中であればなおさらのことであろう。


温暖化対策の中期目標設定を巡る国際交渉で、もう一つ提起したい問題は、腫れ物に触るような対応に終始している米国への対応である。承知のように米国は現行の京都議定書を途中で離脱、今回の中期目標交渉でも離脱後に排出量が大幅に増加している実態もあって2020年に90年比横ばいというあまい目標を提示している。

本来ならば、世界一の排出量でありながら勝手に離脱して排出削減を果たさなかった米国に対しては相応のペナルティ論があって当然のはず。しかし、日本をはじめ先進諸国は、米国のご機嫌を損ねて次期枠組みに不参加となっては困るという思いが強く、きびしい要求を示していない。特に日本の政府や産業界は、乾いた雑巾を絞るような省エネ対策の実行と海外に1兆円以上にものぼるCDMクレジット費用を支払う状況にありながら、米国に対する主張を遠慮している。

政府は今回の中期目標の設定で、国民に経済的負担などの「覚悟」を問うならば、米国のような“ゴネ得”に対する強い姿勢と、削減対策をまじめに実行してきた日本のような「正直者が馬鹿をみる」ことのないように、毅然とした対処方針を示す責任があるのではなかろうか。日本政府の主張する「各国間の公平性確保」という面からも重要なはずである。




新年の雑感
 ◇ 激動の流れを社会変革のチャンスに ◇
2009/01/07(Wed) 文:(水)

明けましておめでとうございます。今年こそ良い年でありますように、と願わずにはいられない幕開けです。

○昨年このコーナーは開店休業中のようにサボっておりましたが、今年は心を入れ替えてホットな話題や水面下の動き、時には建設的な主張もしていきたいと考えております。従来は「今月のキーワード」として、エネルギーと環境問題に関する新たな動向などを取り上げてきましたが,今後はあまり構えないで片意地を張らないソフトな読者諸兄姉との交流の場にしたいと考えております。

○昨年の7月31日、「エネルギーと環境」は2000号を突破、この新年号は2021号となっています。読売や朝日などの日刊大手紙はすでに30000号を突破している例も多いのですが、週刊専門誌の場合はその時代の経済社会情勢に影響されて意外と廃休刊が多く、長続きが困難です。

創刊は1968年(昭和43年)でその時のテーマが「具体化してきたSO2の環境基準値」。今年の新年号記事は地球温暖化問題や太陽光発電、省エネルギーの規制強化に関する記事となっており、40年という時の流れを感じます。

2000号突破記念のパーティを昨年12月、東京麹町で行い、国会議員・中央官庁・自治体関係者、企業や大学、NGOやマスコミ関係者などが全国から駆けつけてくれました。一番嬉しかったのは、大分県佐賀の関から来てくれて、「エネルギージャーナル社の報道支援もあって石油コンビナート立地のための埋立て計画が中止となって自然の海岸線が残り、今ではその沿岸に海亀が来るようになった」と、挨拶してくれたことでした。右であろうと左であろうと、社会的な存在の意義を認めてもらえることは嬉しい限りです。

○今年は文字通り「激動の1年」となります。2008年度第二次補正や2009年度本予算、そして不可欠な関連予算法の攻防でほぼ間違いなく総選挙になだれ込み、与野党勢力の逆転現象も十分現実化する可能性があります。すでに霞ヶ関はそうした事態を予測して、民主党とのバイプを太くするための"対応"に腐心しています。むしろ、遅れているのは経済界や産業界の方でしょう。

どうやら今年のキーワードは「環境経済社会への変革と構築」となりそうです。未曾有の経済危機となっている今の状況を「環境ビジネス」や「資源循環を行う静脈産業」、そして新エネルギーや蓄電池技術などを導入して内需拡大しようというもので、環境省や経済産業省がすでに動き出しています。

○今月20日に民主党を与党として正式発足する米国オバマ新政権が「グリーンニューディール構想」を打ち出し、百万人にのぼる新規雇用や環境産業による需要拡大を政策の柱にしようとしています。今年12月にはコペンハーゲンでCOP15が開催され、先進国において一人削減義務を果たしていない米国がその軌道修正を行うための前触れとも見えますが、米国はダイナミックな新経済政策を指向し始めています。

日本もこれに刺激され、上述の対応となっていますが、この機会に米国の猿真似ではない独自の社会経済構造改革を具体化すべきです。例えば、昨年あれだけ大騒ぎして法律改正や使途に関する閣議決定までした道路特定財源の廃止も結局はほとんど何も変わらず、依然として道路整備に向けられます。これをすでに始まっている少子高齢化社会の礎となるような地域の新しい公共交通システムの整備や自動車依存型(高齢者は車に乗れなくなるし、地域社会の荒廃が進行中)からの脱却など、やるべきことは五万とあります。

環境行政は国民に耳障りのよい「なんとかエコ」に精出すだけではなく、こうした社会の構造改革に本腰を入れて欲しいものです。 (編集長 清水文雄)

(なお、年頭挨拶のところで恐縮ですが、昨年12月に弊社で「バイオマス読本2008〜2009」を刊行しました。世にもてはやされているバイオマスですが、その本当の実力と温暖化対策などが今後どうなるかを考える、よき"相棒"となると思いますので、是非そばに置いてください。)

参考リンク:http://www.enekan.net/image/biomass2008-2009.pdf


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