今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

「発電所」を「総合エネルギー供給所」に
 ◇ ※時報PV+24号の一考/再考を転載 ◇
2011/11/02(Wed) 文:(水)

 首相官邸のエネルギー・環境会議、原子力委員会による原子力政策新大綱づくり、さらには現行の原子力を主軸とした「エネルギー基本計画」の見直し作業が続けられている。年末までに、従来もっともコスト安といわれた原子力発電の経済性の再検討をはじめ各電源別のコスト試算が行われ、これに資源制約や地球温暖化対策からの要請を加味して、中長期的なわが国のエネルギー構成の方向性が示される。
 そこでは野田首相らがこれまでたびたび表明してきたように「脱原発依存」と電力等の需要構造改革、そして再生可能エネルギーの加速的な導入拡大が打ち出されるのは間違いないとみられる。既設原発54 基+若干の新増設が容認されたとしても、原発の中長期的な割合は大きく低下、仮に高経年化40 年以上の既設原発の運転継続が困難になると、2030 年には原発の割合が20%以下になるという試算もある。現在、ベース電力供給量の過半を占める原発の代役をどのエネルギーが果たすかという見通しも立っていない。
 そこで提案したい。今後のエネルギー供給拠点はこれまでのような電力・ガス・石油等といったエネルギー種別ではなく、電力・熱などを有機的に組み合わせた「総合エネルギー供給所」を検討してもらいたい。特に電力分野は、過去数十年にわたって原子力・火力・水力・再生可能エネなどのように全く別々の発電所として建設し運用してきた。そうしたやり方をこれからは「原子力+太陽光+風力」「火力+太陽光+風力+バイオマス」「水力+太陽光+風力」などのように立地条件に応じて様々な組み合わせがあっていい。既設地点をそうした形でスクラップ&ビルドすれば、従来の遊休地を最大限活用できるし(新規の土地手当ても不要?)、発電所に必要なインフラ関連設備も流用できる。
 特に原子力発電所は新増設地点も含めてトライしてみる価値がありそうだ。原発は大半が広大な敷地を持っているにも拘らず、今後は「脱原発」政策により土地遊休化やインフラ施設などの一部未利用化が進む可能性が高い。一方で、今後のメガソーラー等の拡大では土地取得の制約や経済性の確保がネックといわれており、それら隘路を打開する方策になるかもしれない。
上記方式を具体化する最大の障害は何十にも細かく規定された過重な安全・保安規制といわれる。原発構内に生えてきたワラビ1本抜くにも法的な許可が必要というがんじがらめの規制の緩和が必須条件だが、大きな視野からの検討を望みたい。




創刊にあたって
 ◇ 時代を映す鏡の役割に全力 ◇
2010/09/30(Thu) 文:(水)

 国民の多くの期待を担って民主党政権が発足しておよそ1年が過ぎ、9月17 日には菅直人首相の下で改造内閣がスタートしました。なんの因縁か、週刊「エネルギーと環境」の姉妹誌として、再生エネルギーの動向をくまなくウォッチする「時報PV+」も時を同じくして船出しました。
 創刊の動機の一つは、民主党政権の象徴ともいうべき日本が掲げた「温室効果ガス2020 年25%削減」の行く末を見届けることにあります。25%削減目標を実現すれば、もちろん国民の暮らしがそれだけでハッピーになるわけではありませんが、今の経済社会の姿が革命的に変化するのは間違いないでしょう。
 「PV+」がテーマとします太陽光・太陽熱・風力など再生可能エネルギーの導入・拡大はその25%削減方策の大黒柱であり、これから展開される政策と技術革新が失敗すれば世界から取り残されるでしょう。しかし、次期首相を決める先の民主党代表選では、政府と経済界で是非論が続く排出量取引制度や新エネルギーの買取制度などは、論争にもなりませんでした。国民に大きな負担を課すテーマにもかかわらずその説明をしようとしないのは、あまりに政治の無責任というほかありません。
 「PV+」は単に太陽・風・水などがもたらすエネルギーを電気と熱に変換する産業・技術・制度・市場の動向をキャッチ・報道することに留まるのではなく、もう一つの役割として時の政治・行政・経済・社会の変遷を公正に映し出す「鏡」の役割を果たしていきたいと思っております。同時に、そうしたプレーヤーの息遣いが聞こえてくるような誌面に致したく、関係者の皆様の叱咤激励とご支援をよろしくお願いいたします。
 
 「時報PV+」編集長 清水 文雄

参考リンク:http://www.enekan.net/image/kusakawa-giin-shukuji.pdf



年頭に際して、民主党政権運営への期待と課題を考える
 ◇ 2010年年頭所感 ◇
2010/01/06(Wed) 文:(水)

 2010年という節目の年。明けましておめでとうございます。
 「エネルギーと環境」は本年も公正中立、読みごたえのある専門情報誌として決意新たにスタートしますので、変わらぬご支援をお願いいたします。

 主要各紙の元旦一面トップ記事は、「財務省と組む『脱官僚』路線選択、ガバナンス国を動かす、第一部政と官(1)」(毎日)、「眠る力引き出す、ニッポン復活の10年(1)」(日経)、「動く世界と共に、地域の支えはアフガン医師、日本前へ(1)」(朝日)、「小沢氏から現金4億円、土地代の相談後」(読売)などで、企画記事あり特ネタ的な社会記事ありで、多様な紙面でした。元旦のトップ記事は新聞各社もことのほか力を入れるので、過去から未来への社会を映す鏡とも言われており、確かにそうした予兆を感じさせるに十分な切り口だったと思います。

 さて、連立民主党政権はハネムーン期間といわれた100日間が過ぎ、新しい年の出発とともに、まさにその真価がきびしく問われることになりそうです。そこで政権運営の中で極めて重視され、かつ弊誌も主要テーマの「環境政策」の展開を中心にこれまでの政権運営の課題と問題点を指摘しておきたい。

 (1)政権前の公約と政権後の公約実現の違いを明確にすべき
年末の予算編成や税制改正作業では、公約実現と現実の財政危機のはざまで右往左往する姿が垣間見られた。選挙前のいわば人気取りと支持拡大を目的に策定したマニフェストと、現実に政権内の様々なしがらみを踏まえた公約実現とは全く性格が異なるのは当たり前の話し。そのことは、昨年の主要紙による世論調査結果を見ても明白で国民の方がよく理解しており、むしろ民主党の対応の仕方がお粗末だったと言えよう。まずはその違いを丁寧に国民に説明すべきであり、公約実現の優先順位と工程表の整理が先決。

 (2)政策決定のプロセスを充分に明らかにすべき
 鳩山政権が昨年世界を引っ張るとして打ち出した温室効果ガス25%削減の中期目標は、COP15が最低限の政治合意にとどまったことで、日本の意欲的な世界トップレベル目標も空振り気味だ。民主党の環境問題第一人者である福山哲郎議員(現外務副大臣)とジャーナリスト仲間との内輪の勉強会があった昨年12月、この25%削減目標の根拠と理由を問われた際に、「選挙公約として明確に掲げたから」「IPCC報告の科学的知見として提示されている」という見解が示された。しかし、それ以上の具体的な根拠等の説明はなく、鳩山政権の25%削減方針も推して知るべしで、十分な国民的議論とそのメリット・デメリットを踏まえた合意形成がなされておらず、政策決定のプロセスもまだ明らかにされていない。
 この環境問題に限らず、これまでの政権運営では政策決定プロセスがどんな認識と物差しで決められたのか不透明そのものであり、積極的な情報公開もない。政策決定ではその前に必ず案件が政務三役会議にかけられ、そこでの議論を経て方針が決まるが、これもブラックボックスの世界となっている。 
 そもそも政務三役が全プロセスを熟知した上ですべてを取り仕切り、マスコミ対応までこなすという役割自体に物理的・能力的限界があるわけで、まずそこから改める必要がある。このままでは、審議会方式(業界の利益代表らの議論という側面が強すぎたが)や官僚への役割分担、与党の独自性を認めていた自民党政権の方が、政策決定プロセスの透明度がましだったということになりかねない。

 (3)短慮な発想の官僚組織への切り込み
 民主党政権の一部では事務次官の廃止をはじめ官僚の人事機構の見直しを検討中という。しかし、これも現行の官僚機構は「悪しきもの」という偏見ありきの中で生まれてきた短慮としか思えない。そういう面が全くないとはいわないが、これまでの政治のだらしなさに比べれば、まだここには日本を支えうる組織力と人的資源が存在する。
 特に、事務次官の廃止という考え方は、ある意味で自己犠牲も強いる官僚のピラミッド型世界の否定であり、それを失うことの混乱と再構築するエネルギーを考えれば、官僚との協働と新たな発想による活用に腐心すべきではないか。省内の人事権を一手に握る事務次官を新政権の政策展開のためにどう充分に活用するかにこそ知恵を出すべきだろう。

 (4)極めて不十分な説明責任とマスコミへの対応
 昨年末の予算編成作業と税制改正では、道路財源の暫定税率廃止や温暖化対策税導入などの最終決定で漂流を続け、最後は小沢一郎幹事長による裁断でことがようやく決まり、年内編成が間に合った。しかし、この幹事長裁断のペーパーはA4三枚で問答無用を思わせる結論しか書いていないものだった。しかもその中には、当初方針が大きく変わったものも多いが、その変わった経緯や理由などまったく説明されなかった。となると、何日間も議論された政府税制調査会などの審議はいったい何だったのか。これでは必死の努力をしてきた利害関係者も浮かばれないし、組織にどんな説明をしたらと路頭に迷う。とても民主主義の政治とは思えない。これら事例だけではなく、おしなべて新政権はショー的な事業仕分けのようなやり方には熱心だが、政権運営の全体的な透明性は極めて低い。
 また、マスコミへの対応や説明も不十分そのものだ。大臣や政務三役が超多忙ということもあるが、予定時間を30分遅れて会見時間が10分15分という例もざらにあり、その説明も厚みのあるものではなく、旧政権時代のマスコミ対応の方がレベルは高かった。これでは、マスコミを単なる「情報の運び屋」としか見ていないのではないか。

    ◇          ◇         ◇
 いろいろ民主党政権運営の問題点を書いてきたが、要は国民の利益と共通認識醸成に繋がる政治と行政を心がけて欲しいということである。そのためには現在ある日本の組織、人的資源、経済の仕組み、財政力などを最大限に活用できる体制と仕組みを1日も早く構築すべきであろう。
国民が民主党政権を選択したのは、民主党という政党組織のさらなる拡大を望んだからではなく、少しでもましな国にして欲しいと期待したからではないのか。

                                                    2010年1月  編集発行人   清水 文雄



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